なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なめはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな なのはな |
'94.10.8. 23:32 ゴミ箱には、丸められた原稿用紙のクズ。‥‥書けない。ふと、時計のピエロと目があう。一瞬の眩暈。‥‥書けない。絶望感に襲われる。‥‥書けない。‥‥。にげる? 逃げる! この時空間から脱出するんだ。 '94.10.8. 23:54 椅子から転げ落ちるようにして立ち上がり本棚にかけよると、手は、『やさしいブラックホールの作り方』を掴んでいた。パラパラパラっ。 魔法陣・蜥蜴の尻尾・冷蔵庫の残り物・オリハルコン・9Vの乾電池‥‥ 「よしよし、ちょうど揃ってる。オンマニパデムフム、えいやっ」 '94.10.9. 00:01 ‥‥もう原稿は間に合わない。穴があいた。 |
山あいの静かな村は、この数箇月、静かな恐怖におそわれていた。見上げれば、夕陽に染まる山の端に、交わっては縫い閉じるように低く秋アカネが飛ぶ晩秋である。 「穴に落ちる」――その最初の犠牲者は、新田のタケ坊だったのだが、その時には、神隠しにでもあったのだろう、とされたものであった。しかし、さらに何人か子供の失踪が続いた後、タツ子が、刈り取りの者の衆目の中で、突然ポッカリと開いた黒い穴に「落ちて」姿を消して以来、「穴に落ちる」恐怖がこの村を支配するようになったである。穴はいつでも突然に開き、落ちた者の声も聞きとれないくらいすぐに閉じてしまうのだ。 そして、その年初めての雪がちらつく冬の日、最後の一人が落ちて、村は本当に静かになった。そして、物語も静かに終わる。 ――ん? オチ? オチはないのじゃ。作者も、穴があったら入りたい。 |
一方、周体の無いドーナツの穴は、目醒めたその時から、己れを求めて旅立った。ドーナツの穴は非在であったが、ドーナツをドーナツとして固定する超在でもあった。ドーナツの穴の旅は、その存在しない體を引きずって、過酷なものであった。嵐にもまれる難破船では船乗りたちを叱咤しながら帆を操り、千尋の崖を怪鳥を斬り落としながら馬を駆って走り抜けた。 やがて、旅路の果てに、ドーナツの穴は、子供たちの掘った、藁で巧妙に隠された落とし穴に落ちた。穴は穴に出逢った。虚が虚と激突した。 信じられないくらいの光と時間が炸裂し、そして、宇宙が生まれた。 |
一方そのころ、ライバルの第5惑星、ノホニャ星では、優秀な3千人のノホニャ人オペレータを中央機関室に集め、一斉に政府文書をワープロに入力し、その際に生じるタイピング・エネルギーによって惑星間を高速度航行する艦船、<科学と国家の絆>号が、開発されていた。冷戦下の競争を一歩リードした、と確信した高官たちは、その存在すら隠蔽するのであった。 やがて。冷戦が去り、全ての情報が白日に晒された世界で、人々は、太陽風によって推進する星間連絡船と、自己電源供給型のワープロの恩恵に浴したのであった。平和っていいなぁ。ラララ。 |
翌朝布団の中で目醒めた私は巨大なザザ虫になっていた。生命力が毛先にまで溢れている。太陽が眩しい。 |
算師太子への就座を果たせずに原因不明の高熱に倒れ二ヶ月の後に他界なされた尉二位ヴヴレの、思いを残した魂が、夜ごと賽大路を怪異の形をとって徘徊し、算族の者たちは大いに頭を痛めたものでした。これを鎮めんと、都中の祈祷師・武芸者が算族に呼び集められたのでございました。 火の玉をヴヴレ尉に投げかけた司祭は己れを松明に化身され、焼けて尽きました。世にまたとなき名剣を携えた範師が、みんごと己れの胴をまっぷたつに斬って裂きました。そうして、賽大路の怪異は鎮まらないのでした。 最後には強者も尽き果てましたのでしょうか、私ごときが呼ばれまして。はい、当家は一子相伝の声色師なんでございます。賽大路に立たされた私は、尉の母君のありし日を必死に思いだして木に登り、天の方角から聞こえるように、「ヴヴレちゃん、お芋が煮えたわよ」と申し上げたのでございます。 |
報告を受けた将軍は満足そうにうなづいた。 「はい、口から出すこえが主たるコミュニケーション手段である、と、ここまでの確認がとれました。こえを使ったコミュニケーションというものは、宇宙において普遍的なものなのかもしれませんね」 チタマ星の宇宙船の中である。新たに発見された星、地球について、将軍と司官の熱心なやりとりが続く。チタマ星人の、口からボロボロ次から次へと色とりどりの肥を吐き様々な意味を持った様々な強烈な刺激的な臭いアンモニアをステロイドを放つ肥をボタボタと溢れさせては黄色茶色赤緑金銀桃色暗血色の肥を感情表現に従って硬軟流状ゾル状ゲル状とりまぜ口から流し吐き出し湯気をたてるトグロをまく、コミュニケーション手段を用いて。 |
ぁは、あれは、蚤でわすが、蚤の顔をじーっとたら見申しわしたか。あれは蚤ですわが、あれは、昇り損ねた修道の者たちん、はひ、昇ろうとはひ、した者の、は、落ちるす、ぁ、落ちるのが出わす、悔しいような怒ったような、顔してわんす。んぉ、昇り損ねてわしても、上の天に向かって、ぁは、ピョコヘンピョコヘンと跳ねて、ぁは、しまうなすわ。はひ。 |
突然、その星の少年たちを襲いはじめた恐ろしい日々。窓辺につんもり置かれたままになったツメクサに三色スミレにキスゲにダリヤにオオミズハライにカリズスソウ。悲しげにその花たちを眺める少年たちの目、その先に、花を眺め慈しみ愛でるという、ヒトと花の新しい関係の世紀が待っていることを、彼らはまだ知らない。 |
「イ、イツ‥、イ‥、、キ‥」 その海底には光も届かない。静かな泥。横たわるケーブル。一本の通信回線である。大きな海流。水圧の変化。脈動。ピ。ピピッ。ギギャ。ギ。ギャーアーギーャ。ノイズの奔流。固有のノイズ。 「‥、ニー、‥‥ーナ、ニ」 無限に近いほどの長さが世界を巡る通信回線、あらゆる場所で起きている無数のノイズたちの試み。その中に特定の条件が生んだ固有のパルス列、日経mixに忍びこむ一定の列が、生まれていたのである。今夜もノイズたちは、Cbixに入り込む。 「イ、イ‥ツキ、イツキ‥」 「ニーナ、ニナ、‥ーナ」 |
彼らは子供だ。 いつからだったろうか、この惑星に新しい子供が生まれなくなったのは。そして、だから、いつまでも、いつまでたっても、彼らは子供なのである。今日も、くたびれた身体を引きずるうちに一日が終わった。腰が痛い。足が自由にならない。力なく頭を振る。 そして、翌朝、東の明けの空に、三筋の赤い傷を、三つの流れ星が天空を赤く裂いて行くのを、見た。 |
帝の御所の門が音もなく開いた。 「整えはよいか」 問う博士の声。静かに肯んずる揃えの車よりの声。 「よし。その地に着到あらば、ぐるりを囲め」 七振りの宝剣が七台の車より打ち降ろされた。地面に深々と突き刺さり、微かな月光に照らされて鈍く光る。その活断層をザクと切って落とす。 「活脈よ鎮まれ、生命を緩うして深く眠る漆黒」……唱和される呪詛の聶き。 刀身をつたわった露が、地面までの線分を走り、黒い染みとなる。それを見つめていた博士の厳しい目が、ふっ、穏やかな色を宿す。 「応計。帝の祈りは聞き入れられた。この地の活断層は、千二百年の余り締め切られ、都は約束される」 笑う猫目の月。そして、静かに大いなる時は流れにけり。 |
海の近くの出だ、っゆもんで、舟盛りなんか得意にしてたら、今の温泉旅館に呼ばれた。ここんちは刺身でもってさ、女体盛りだか、あるだろ、あれするんよ。ま、魚、さばく分にゃ一緒だ。はぁ、親父さ時化の海で帰らなかったは、風の噂で、聞いたよ。 ふと目が醒めると、天井の節目の間に親父の顔がにじんで浮かんでいた。俺はがばと起き上がると外套だけ引っ掛けて部屋を飛び出し、廊下をぬけて、女体を盗みだした。女体を抱えて調理場の裏口から外へ出た。風がぼうぼうといって星の光が地上に刺さる。まっすぐに道を越えて海へ出る。暗い海に煌めく波頭。俺は女体を海に浮かべ、沖合に漕ぎ出す。女体が微かにほほえんだ気がする。波をかきわけ進む。 「帰ってきたぜっ、親父っ!」 |
と歪んだ顔は笑っているのである。今日も部屋にこもってディスプレイに向かっている。いったい、どれだけの期間、こうして過ごしてきたのか。 髭が……脂が……と描写せずとも不潔が顔面を塗りこめている。 「出来た、完璧」 巧緻と狡猾を極めたウィルスである。OSに取り付くや否や、ルーチンを最適化し、ファイルサイズすら変化させない。機能はみな、独自シミュレーションでカバーし、動作上の破綻をきたさない。それでいて、このOS上で書かれるプログラムはみな、彼の好みの書式にオプティマイズされてしまうのだ。 「ふひょへ〜っ」 まるで世界をその手にしたように彼は満足の息をつく。 「よし、行け」 放たれるウィルス。 世界を駆け巡ってくるのだ。ウィルスは送りだされた。 ――が、そのときっ。 ウィルスが世界にあらわれたそのとき、取りつくべきOS-9は、既に滅んでいたのである。 |
その初老の男をはじめて見たのはいつだっけなぁ。満員の通勤電車の中で、いつも決まった席に座った男は、いつも色とりどりの毛糸の玉を膝に乗せて、せっせと編み棒を動かしているのだ。窓の外を、冬の、葉の落ちた木々が次々と寒そうに流れて行くのを、ぼんやりと眺めている。そんなサラリーマンたちの寝ぼけた視線の片隅で、男は、毎日、毛糸を編んでいた。穏やかな表情で、一心に編み棒を操っている。 そんな日が続いた後の、いやに冷え込むなぁ、と思いつつ眠りについた翌朝であった。一面の白、雪景色。これはマイッタな、と長靴を履いて、駅へ急ぐ。そこで私が見たのは、肩にかかった雪を振り払う通勤客で溢れたホームへ入線してきた、パンタグラフに可愛いリボン付き毛糸覆いをかぶった通勤電車であった。 |
「毎日でしょ、毎日通勤してると、だんだんね、自分が何処にいるんだか、何をしているんだか、何処に向かっているんだか、わからなくなってくるような気がね、してね、いたんだよ、ある日、それでね、それで」 |
おう、痛ぇっ……。 したたかに脳天を床に打ちつけていた。身体のあちこちで遊んでいた意識がすーっと頭の真ん中に集まってきて……そうか、俺は長い眠りから目覚めたようだ。 「ゴツンっ」と音がした。 キャーっ。ザワザワザワ。何やら騒がしい。 ここは、早春の行楽客で賑わう日光東照宮。何か落ちたらしい。 俺は一つ大きくのびをうつ。よく寝たものだなぁ。どれだけ寝たものか、覚えてもいないや。だいたい俺は何者でこんなとこで何してたんだろ。 ま、いいや、そんなことより、感覚が戻ってきてみると、ん、腹が減ったな。 「あ、こらこら、駄目よ、美弥ちゃん、駄目だって」 手を引こうとする母親を振り切って、はしゃいで落下物にかけ寄る子供。すっかり興奮している。 「えー、どうしたの、これ」 夢中で手をのばす。 すっかり飢えた俺の目の前に現れた、ふっくらと柔く美味しそうな肉……。 |
関節に優しい… シリー・ウォーキングを考える市民の会。 |