眼前にはいつのまにか巨大な白い壁がそびえ、かすかな冷気を放っていた。頬を寄せるとめり込むような感触に、あわてて後ずさる。もしやこれは時空の歪み、熱に冒されたこの世界からの出口なのか。脱出するなら今しかない。私は白い壁に身を躍らせた。衝撃はなく、ひんやりとやわらかな空間が全身を包みこむ。ここは天国か。疲れがどっと出たのか、私は意識を失った。 はらわたも煮えくり返るような熱さで目覚めた。救われたのは夢だったのか。遠のく意識の中、彼方で響く声が聞こえた。声はこんなことを言う。 「いやぁ、暑い夏には泥鰌鍋、コレにかぎるよな」 |
平穏だつた細胞に さうざうしいミトコンドリアがはひりこみ 人類はさうざうしくなった |
蛇の這い入るすきまもないさみしい密室にころがる 衰弱した男の死体 冷徹な犯人が送りこんだのは凶悪なサナダムシ 「まだらの真田紐」 |
なにものも入りこむ隙のない密室に 横たわる被害者 途方に暮れる名探偵と警官の群れ 死体は回想する、靄のようにかすむドアの隙間 立ちはだかったのは ナイフを手にした バカボンのパパ 「2次元のヒトだからこれでイイのだ〜」 |