石井AQ!の[ HTプロデューサーの小屋 ] |
第8回 「重厚長大」のイメージと現実 |
★ 第7回に関連して、[谷山最長曲は「七角錐の少女」なんだろうか?]と、「曲の長さ」にネタふりをしてみたところ、何と詳細なデータをお持ちのファンの方がいらして、送っていただきました。やったね! ★ とおやま@札幌さんです、拍手をもってお迎えください。
何か面白いねっ! そうか、やはり一番短いのは「HATO TO MAGI」か(アタリマエだっつーの)(^_^;;。チャンピオンは予想通りの「七角錐」。 「Doll House」のどこが重厚長大やね~ん、とか、「海の時間original」は「静かに」に負けてるやんか~、などの声が…。 324曲中だから、真中は162か、もっとも平均的な…「あやつり人形」…ね…(^_^;;。とか。 ★ …ってなわけで、何かご感想などありましたら、こちらへ。 (2001.06) |
第7回 神秘の「7」に誘われて |
★ 予告通り、「七角錐の少女」(from 「漂流楽団」(ポニーキャニオン PCCA-00801 ))についての徒然を。…しかし、何ちゅータイトルでしょうね、この曲。すっごいわ。(^^;) ★ やはり、「七角錐」ってことになっちゃいますよね。日がな一日、辺の長さを測っているんだそうですが。…クラクラして来ます。いや、しかし、このクラクラする感じ、感じの裏側には、「7という数字のオイシサ」が潜んでいそうです。 ★ ヨーイドン、で、素数の列を眺めていくと、2,3,5ときて7。さすがに一桁の数字だけあって、それぞれにポップさは抜群です。しかし、そのポップさに神秘の輝きが加わってくる、のは「7」ではないでしょうか。さりとて、19、だの、23、だのというような数秘の淀みに落ち込んではいない一桁のポピュラリティ。何たってラッキー7!などと気軽に呼ばれちゃうくらいでありながら(甲子園上空にジェット風船が舞っていようとも)何処かに陰影を匿している、それが「7」の力でしょう。 ★ 何よりのトピックは、おそらく七角錐の底面を支えているだろう正七角形です。正七角形はコンパスと定規とでは作図出来ない最初の正n角形である、という。これこそ「7」の神秘であって、どうにも割り切れない七角錐の少女の姿が此処にあります。ついでに言えば、七等分した弦はちっとも良くは鳴らない、とピタゴラスは嘆きました。 ★ ところで上記に関係するんですが、正七角形が「コンパスと定規」で作図出来ないのは有名ですが、「折り紙」では出来るんですって? 「折り」の繰り返しで、正七角形が作図出来るとかって聞いたんですが。この件、詳しい人は教えてください。 ★ さて、本題(何が本題、というわけでもないかタハハ)、「7」と「七角錐の少女」の直接の関係に進みましょうか。まずは「7拍子」。7拍子の一般論までやってるとキリが無いんで省きますが、5拍子と7拍子は、音楽の中で「変拍子」と言われる拍子の代表的なものです。一番ユーメーな7拍子は何だろ。ピンク・フロイドの「マネー」(3+4、ないし、3+3+1的な7)かな。 ★ と言いながら、いきなり逸れますが、日本人だと気になるのは、七五調って奴だよね。でも七五調と7拍子5拍子とは、あまり相関は無いんですね。例えば、 「あいみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもわざりけり」 であれば、これを詠むと、 「あいみての休休休/休のちのこころに/くらぶれば休休休/むかしはものを休/おもわざりけり休」 で、まぁ4拍子。五七五のところに比べて、七七はちょっと揺らいでいて、七の神秘があるかもしれないが。 これは、 「休のちのこころに」 と、アタマの所に休符が来てるのが結構ミソで、日本人にも休符から始まる感覚ってあるわけですね。 でさらには(これは森毅先生の話に出て来るんだけど(さらに元はあるんだろうけど))、「日本人のリズム感覚が表打ちというのはどうも怪しい」というのもあります。表打ち、ってのはこの場合、典型的には「温泉でオヤヂが演歌や民謡ショーで手拍子打つのに、拍の頭で手を打って揉む」って奴ね。森先生の話によると、日本人は古来は裏打ちではないか、という。そこに開国があって「軍隊マーチ」という西洋カルチャーが到来したのではないか。それを元々は表打ち感覚の無い日本人が不器用に真似たもので、かっちょわるい温泉表打ち手拍子文化が生じたのではないか。 だから本来DNAに書いてない西洋マーチビートを元にした音楽教育の結果、妙チキリンな日本人のリズム感が近代に蔓延したという説です。 うーん、それで音楽教育も崩壊した最近になって、元に戻って正常化したってか? (^^;) とま、珍説の一つではありますが、面白い。 ★ あ、それから、そんなことを言ってたら、谷山チームのエピソードの一つを思い出してしまったなぁ…。これも書いておきましょう。じゃーん、人呼んで、「3・3・5・5拍子事件」じゃー。これは、谷山せんせが紹介したこともある事件なんで、ディープなファンの方は御存じだと思いますが。
んー、何の話をしてたんだかわからなくなってしまいましたが、本題(?)に戻りましょう。「七角錐の少女」。9分になんなんとする長大な曲が始まります。う~ん、自画自賛になっちゃうけど、なんて妖しくも美しいイントロざんしょ(^_^;)。バイブっぽいアルペジオとオーボエっぽいリードがProphet T8で、ヴォイスっぽいのが01R/W。Syn.系でキーになるのはこの後、不思議なパーカッシヴソニックを幾つか聞かせているProcussion、Syn.Bassを受け持つMini Moog(S.E.のmidi版)でしょうか。 ★ メンツは、まず、お馴染み「青山&メッケン」の、最強かつ最凶なリズムユニット。グレイト! ギターは、最後のソロだけ、窪田晴男氏が弾いています。クボタは実は、私の音楽業界での最も古い知り合いでして、もう四半世紀になりますね(^_^;)。トホホ。当時は音楽業界もクソも無い、鼻垂れ高校生であったわけですが…。その頃、ベースを弾いていたヨコヤマは、今は「スリル」とか「デミセミ」をやってます。ちょっと後になると、元「スタレビ」のミタニ氏や、「メンズ5」「ビブラストーン」のオカダ陽ちゃんが現われ。今はみな不惑のバンドマン…人生ですな(^_^;)。最近はまた、たまに、クボタ先生プロデュースの楽曲のプログラミングを手伝ってたりもします。 ★ … この項も随分アップしてないんで、ここまでで一旦こっそり上げておきます。こっそり見たりなどしてくださいませませ。ではでは。(つづく) (2000.11) ★ … えーと、何の話だっけ? (^_^;;(^_^;;(^_^;; というわけで、2001年、世紀も変った4月になって、書き継いでおります。すいません。何だかわからなくなっちゃったから、本題の核心にさっさと進みましょう。 ★ …と言いながら聞き返してみて…重厚長大…谷山レコーディング史上最長曲なんでしょうか?? 「長い曲ベスト5」…とか調べたら面白そうなんだけど…ってネタだけ振ってみつつ…七角錐、王国、海の時間、時計館、えーとえーと… ★ 「七角錐の少女」における「7」。 この曲の音楽的仕組に現われる「7」のネタばらしの一席です。 ★ まず最初に事件が起きるのが、歌の1番2番大サビと来た後の(通例「ブリッジ」などと称しますが)小さな間奏です。これはひょっとしてお気づきの方も多いかとも思います、大サビが歌われたあと一瞬静かな空気に戻って現われるこの間奏に流れるメロディが8分の7拍子であることに。 なるほど8分の7拍子! (MP3[196k]:64kbit/s,44.1kHz,Mono) ★ 「七角錐における7拍子」。そうです、こう言ってしまうと、音楽上の駄洒落としては結構ベタですね。だからあまり大声で自慢するのは抵抗があるものの、でも、なかなかよく出来たブリッジだと思っています。この部分の成立の経緯については、実は忘却してしまったのですが、たしか多分、谷山デモにあった間奏フレーズに対して、私が「これは7拍子になるんじゃないか?」というアイディアを抱いたというようなことだったかな。 ★ 7拍子メロとしては流暢でしょ? 細かく見ると、バックのアルペジオが「4+3」型で、対してメロは「3+2+2」みたいな採り方をしています。もしくはメロは8拍子のものが極端なルバートで伸縮して7拍子にはまっているように考えられるかもしれません。ボーっと聞いていると浮遊感がありますね。迷宮のイメージとでも言うべき不安定感。実はここの所が鍵だと思うのですが、「七角錐の少女」という曲は、楽曲自体が不可思議な神秘性のベールの向こうにあります。このブリッジまでの歌で表現された迷宮感覚が頭に染み込んできた頃合のブリッジだからこその簡単な手品。イメージとして既に形成された神秘感覚をこのブリッジで(だけ)具象化する、具体的な時間格子を7にすり替えているというわけですが、迷宮内の出来事ゆえトリックは隠され自然な流れになっているのではないかと思います。 ★ このブリッジが明けて3番から青山&メッケンのリズム隊が登場するのですが、ろくに譜面も見ないで(?(^_^;;)スタンバイしてた青山純さんが「はにゃはにゃ~、この間奏ど~なってんの~?」と、3番に入り損ねてたのが懐かしいす。(こぼれ話っぽいこぼれ話だ) ★ さて、次の仕掛けは実は、この後すぐに続いて出てきます。こちらはちょっと気が付きにくいと思うのですが如何です? 「いや、俺にはとっくにお見通しだったぜ」というリスナーの方には脱帽です。3番の歌からは青山&メッケンのドラム&ベースが派手に登場するのですが、その陰でひっそりともう一人加わってきた楽器があります。ディストーションのかかったエレキギターによるアルペジオです。こちらに耳を傾けてみてください。(なお、このエレキギターは、実はEnsoniq SD-1というシンセによるもので、私が弾いてます。窪田晴男氏の、ソロ録音時にこのフレーズも弾いて貰おうかと思ったのですが、「これはそのままの方が良いよ」という御宣託だったので、そのまま残しました。) ★ このギターのアルペジオのリフ、とでも言うべきフレーズなのですが、このリフが8分音符7拍で一つの塊となる「7拍フレーズ」と呼ばれる物となっているのです。「8分音符が7個で一つのパターンを作り、これを繰り返す」…およそ、このようなことです。大ざっぱに言うと「高低高低高中低」って感じのパターンが聞こえましたでしょうか。これはそんなに複雑な物ではありませんが、気分的にはキング・クリムゾンのREDだど~、とか、そんな感じ。このアルペジオ以外の楽器は、4分の4拍子を基本として進行するので、簡単な「ポリリズム」になっています。駄洒落としての「7」はともかく、音楽的には、若干の不安定な心情を醸しつつ、ともするとドシっと落ち着き感の出過ぎるテンポのこの曲に独特のスピード感を加える役割を果たしている筈です。 数えてみれば7拍だ! (MP3[124k]:64kbit/s,44.1kHz,Mono) ★ …というわけで、神秘の「7」に誘われた2つの仕掛けのネタばらしでした。ネタばらし、を「どうだ!」と書くのって、どうしても自画自賛部分を避けえません。一つご勘弁のほどを切に願って今回はオシマイ。 (2001.04) |
第6回 タマネギに向かって鳴く小犬の正体は? |
★ えへへへへ、今回は何となく嬉しいことに、「メールでいただいた御質問」への回答です。ではまず、メールの文面から紹介いたしましょう。くださったのは、「よしだ.N」さんです。
というわけで御題は「土曜日のタマネギ」です。初出はアルバム「水玉時間」収録ですね。うーん、懐かしいなぁ。メンツは…原田佳和・Mekken・阿達彰義…、の面々。谷山チームではお馴染みの諸氏で、3人ともコンサートツアーを回ってもらったこともありますね。…あ、ライナーに誤植があるな、当時の私のボウヤが「シンセ助手」としてクレジットされているのですが、「石川博高」クンではありません、「市川博高」クンです。まぁ、懐かしい。 ★ さて、聴いてみましょ。ウィンドチャイムがチリリンと鳴って…おお、早速出てきました。 「小犬の鳴声」!! 鳴いてますね。じゃれてますね。それとも、皿でも拭かされているのでしょうか。 ズバリ、犯人は阿達彰義さんです。 序の後、Syn.(これはOberheimのXpanderですね。懐かしい…。まだ所有しているんですが、よる年波か、たまにランダムに電源が突然死する病気を持ってしまっていて、それからあまり使わなくなってしまいました。根本手術に挑むべきかなぁ…良いシンセなんですが)、そしてベースとドラムが登場。実に気持ちよく流れていきますが、この音楽、ベースとドラムの「演奏」と考えて聴くと、結構、異常ですね、これ。音楽というより、絵画、というか、お喋り、というか。気まぐれ、というか。いや、その件の犯人は頼んだ私ですが。(^_^;) よく聴くとユニークな作りになっている曲だと思います。 でもって「小犬の鳴声」なんですが、これも、この楽器としては「普通でない」使い方なんです。 ★ その楽器とは… クイーカ quica (cuica、とも) です。 クイーカは所謂ラテン・パーカッションと呼ばれる打楽器の一つですが、なかなか変わった原理というか構造を持ちます。ボンゴとかタムのような太鼓があるとします。その胴の内側から竹などの細い棒を差し込み皮面裏側真中近辺にひっつける、とする。そんなような感じ。で、この棒を濡れた皮などで擦る、するとキュッキュッと音がする。皮面のテンションを押え具合で調整すると、音程に変化が付けられる。…といった楽器です。 ブラジリアンミュージックで広く活躍するのでブラジル起源の楽器だと思うけど、違ったらゴメン。 ★ このクイーカですが、フツーには、オッキュキュキュッキュ・オキュッキュキュ、ってな具合でリズムを刻むような奏法を取ります。間抜けながらも陽気なラテンの空気が広がります。「土曜日のタマネギ」でのクイーカは、もっと怠け者で気紛れです。気が向いた時だけ足元にじゃれつく小犬のように、ですね。演奏は、かなり感覚的に挿入していただきました。 クイーカ本来の使い方・サウンドでは無い、ややME的(SE:Sound Effectに対してMusic Effect。音楽的効果音のこと)なアプローチですが、なかなか良いでしょ? ★ …というので、回答になりましたでしょうか。 (2000.11) |
第5回 ちょっと「アナタ 最高 LUCKY! TOUR」を振り返る…レンタル機材篇 |
★ そういうわけで「アナタ 最高 LUCKY! TOUR」に来ていただいてありがたいのである。実はちょっと珍しいことも重なったので、その辺りを書いてみよう。このコーナーの主旨(^^;)だからしょうがないが「一体、誰にとって面白いねん?」とゆーよーな話ではある(^^;)。 ★ おもな話題は、「レンタル機材」について、でして、まぁシンセファンの方などにはちょっと興味あるやもしれません。(シンセネタが続いてすいませんね。次回は違うのを…(^^;)) ★ 「アナタ 最高 LUCKY! TOUR」は、地方主要都市のライブハウスサイズの小会場を回ろう、というコンセプトがありました。客席が近いコンサートは楽しいし。現実的に大変なのは、この場合、PA機材とか楽器機材を運搬して回ることが出来ないんです。時間的・予算的に余裕がありませんから。全て、現地調達か持って回るか、ということになります。 アコースティック・ギタリストだと、それでも、通常は平気な顔してブラ下げて出かける…んですが、我らが田代さんはご存じの通りのマルチ楽器商会状態なんで、「何をどうやって持って行くものやら」相当に頭を捻っていたようです。生ギターと言っても、谷山曲のように要求が色々多いとエフェクト類も必要になってしまうし。今回の田代さんは、BOSSのマルチエフェクトボードに全部プログラミングしてました。何とか可搬性もコンパクトで、重宝したようです。 さて、シンセはどうしようかな? ★ 勿論、基本的にはレンタルするしかないんですが、何を借りようかな? これは実はちょいと悩ましいところなんです。というのは、「普段使っているシンセをそのまま借りればいいじゃないか」という訳にはいかないんです。各都市に、そうは上手く揃ってないもんで。これは、微妙なモデル違いも含め、毎年大量に新製品を登場させてきたメーカーさんのせいでもありますが、発展途上のジャンルっていうのはしょうがないよね。それから、普段「少ししか使ってないもの」まで全部レンタルしてるんじゃ、予算的にも大変です。 ★ というわけで、今回は慎重にレンタル作戦を開始しました。第一に考えたのは、とにかく各都市で同一のセットアップを組もうということ。そうすれば、そのセットアップに対するデータをプログラミングしてしまえばOKです。各都市の楽器セットアップが違ってしまうと、それぞれの公演に対する別のデータを組まないといけない訳で、集中効率が悪いんです。効率、なんていうと手抜きしてるみたいだけど、そじゃなくて、一つに集中してプログラムを詰めた方が、やはり、クォリティがいいんですよ。 ★ そうすると問題は、大阪・名古屋・札幌・福岡・広島・仙台で共通して組めるシンセ・セットアップはどういう機種を使ったものか?ということになります。今回はそれを「徹底調査」しちゃいました。各地に「何が用意可能ですか?」と聞いたんです。6都市の機材屋さんから答えをいただいたんですが、楽器ファン的にはとても面白かったです。一覧表で出しちゃったりすると実に興味深いんだけど、ちょっと失礼かな。名古屋なんかは「事前に言っておいていただければ何でも用意できます!」と大書してありました。さすがは物持ちだぞ、名古屋! ★ 質問にあげた具体的機種は、 AKAI S-1000,1100,3000,5000,6000 KORG M1(R),Wavestation(A/D),01(R/W) ROLAND D-(5)50,U-220,JV-1(2)080,SC-88(pro) YAMAHA SY-77,99,MEP-4 CLAVIA Nord Lead(2) EMU Proteus2(XR),Vintage Keys(+) ALESIS adat(XT) です。この中で、6都市全てに揃っていたのはどれでしょう…というと S-1100, M1, D-50, U-220, SC-88, SY-77 でした。なるほどやっぱり、という感じでしょうか。U-220とSY-77がちょっと意外かな。それと、今回は聞きませんでしたが、DX-7はまず間違いなく何処でもあると思います。本当は密かに期待したのがS-5000(6000)とMEP-4なんですが、さすがに6都市は揃いませんでした。 ★ やはり今も、基本は、DX-7,M1,D-50なんですねぇ…。レンタル料金も10000-15000円/日、と安定してるし。S-1100は高いんですね、ビックリ…それにしても40000円/日を取ってる某都市はボリ過ぎでないかい?(^^;) リストを睨むことしばし、決めたレンタル・セットアップは結局、平凡で M1, D-50, U-220, MDデッキ としました。左手でベースを弾く曲が数曲ある関係で、鍵盤は2台欲しいんです。U-220は期待してなかったんだけど、揃ってるし、「あれば小便利で音は豊かになる、値段も安い」。adatが揃わないので、MDデッキです。ほぼ半々の割合でSonyとTascamのものが来てました。MDは、メーカーやモデルが違っても互換性が高いので無問題です。これに加えて、手持ちで運んで回ったのが S-6000, MEP-4 です。やっぱり…無いと…出来ない(^^;)…という結論。S-6000とMEP-4を6Uのラックに突っ込んで、楽譜とZIPのドライブ(S-6000用)とMDF2(MIDI Data Filer…シンセ類のデータをMIDIのエクスクルーシブ・データとしてフロッピーに記憶します。電池駆動可の優れモノ)を大中バッグに詰め込んで、まとめてキャリアに縛りつけて……となりますと楽器系の経験ある方だとわかるでしょうが、なかなかに産地直送直売:行商のオバサン状態でありまして…これで全国回りました。 ★ ~~あ、全然また話は逸れるけどさ、そんなわけで楽器を10kg,20kgと持って移動することは、たまにはあるのよ、ワシら。そういう時に思うんだけど、ほんとに日本の鉄道駅って障害者の方に優しくないですね(「車椅子一日体験」の疑似版、みたいなことですね(^^;))。大荷物持って移動してるとさ、ほんとに「作り方で避けようのある階段だのステップ」がたくさんあり、スロープやエスカレータ・エレベータの設備が整ってないことがヒシヒシと感じられます。各駅各列車への執拗な灰皿設置を見てわかるような異常なまでの喫煙者溺愛に対して、何たる障害者に対する冷たさ。鉄道会社はちょっと考えた方がいいよ。少なくとも灰皿の設置と清掃にかかる予算を利用者負担として、その分くらい障害者用スロープ作れよ。…俺も使うからさ。ヽ(^^;)丿~~ …というわけで構内が迷路な鉄道駅は大変なんですが、飛行機だと、空港内は整備が良いし玄関までイベンターの方がクルマで迎えにきてくれたりしてラクできます。 けっこう長くなってしまったぞ(^^;)。本題はこれからで、さっさと書くと、「事件! KORG M1、連続接触不良の怪」じゃー。 ★ 地方での初日は大阪。この前夜(というのか)は夜中の2時過ぎから橋本一子さんのライブをやりまして、5時に寝て7時に起きて新幹線に飛び乗って大阪、という個人的わけわかの日。シンセについて覚えてるのは、汚ぇ~こと(^^;)。M1もD-50も、結構、表面パネルが禿げちょろけてて塗装がめくれてるぞオイ…。しかし(後にして思えば)、ペダルのキシキシ音がでかいくらいで、機能的にはどいつも良く動いてくれる連中でした。ノープロブレム。バンドマン的には「鍛えが入ってる」とか「歴戦のつわもの」とか、不合理なことを言って褒めてみたりする機材たち。 ★ 一夜あけて名古屋。この日は人間もよく寝てシンセもピカピカしてて、御機嫌に始まりました。ところが、しばらくして、「うにゃにゃ??」。何だか変だ。音が切り替わってないなぁ…。シンセの音色など、各種シーンの切り替えは、マスター・キーボードのKORG M1のフロントパネル上の10キーで行ってます。"53"を押せばストリングス・"26"ならブラス…、そんな具合ね。これがちゃんと動いてないの。で、よく見ながらもう一度やってみると、そりゃそうだ、「"1"が入らないよ、オイ」。カチカチやっててわかったのは、10キーのスイッチの単純な接触不良なのでした。"0"と"1"が、「強く10回押して3回くらい入る」程度なのです。「うわ、マイッタな」。この10キーによるパッチ切替は1曲中でも5回や10回は出てくる頻出操作、しかも、忙しい所だと時間的余裕が16分音符1個分しか無かったりします。「ツーカー」であって欲しいもの、また、オレが恥をかけばいいや、という問題でもありません(^^;)。「まっくら森の間奏でいきなり華々しいブラスが現われるわけにもいくめぇ」。 ★ この単純なスイッチ接触不良、歯痒くも難物です。もっと複雑なソフト上の問題など、意外な所にショートパスを切るアイディアが転がってて逃げられるということもあります。また、ケーブル系の接触不良だと、バラして磨くとか復活剤という手があります。また、「鍵盤がもげてる」というような派手な故障というか欠損があれば見切りがつけやすいですよね。でも、"0"と"1"のマイクロスイッチだけが接触不良…って、なんか歯痒いんだよなぁ~(^^;)。…。……。…。しかし腕組みして考えても妙案なく、何回カチカチやってても事態に改善なく、ということで、代替機手配ということになりました。ここいらも超オーソドックス機で組んである今回のセットアップの強みで、何なく代替M1が用意され、こちらは接触不良フリーで、本番は無事に済んだのでした。 ★ 飛行機で飛んで札幌。いわゆる一つのホッケストの地。覚悟したほどには寒くない。会場のジャスマックプラザ・ザナドゥは、何故か2階に天然温泉の湧くビルの4階に、ケバケバのディスコの夢の跡なるライブハウスというケッタイで楽しい小屋。市内の仏料理屋「トーイズ」のランチ(850円から。オトク!)を決めて乗り込み、御機嫌に始まりました。ところが、しばらくして、「うにゃにゃ??」。何だか変だ。音が切り替わってないなぁ…。これがちゃんと動いてないの。で、よく見ながらもう一度やってみると、そりゃそうだ、「"4"が入らないよ、オイ」。カチカチやっててわかったのは、10キーのスイッチの単純な接触不良なのでした。"4"と"7"が、「強く10回押して3回くらい入る」程度なのです。 ★ …↑という「こら、コピー&ペーストで済まさんでちゃんと書かんかい」「はい、すいません」的事態。いやホントに(^^;)。でも、何で4と7なんだ? 0と1って説得力あんだけど(そういうものか?)。で、同様に推移してM1の機体をチェンジ。 ★ こういう時に(も)活躍の場が回ってきてしまうのが舞台監督、具体的にいうと大城さんなのであります。ありがたや~。現地班にピシピシと代替手配の采配をふります。現地の皆さんも駆け回っていただきご苦労さまでした。 私にとって比較的気楽だったのは、この症状の判りやすさ。誰が押してみたって「あ、こりゃ接触不良だ」とわかるし、「ここが接触不良じゃ業務に支障があるわな」とわかる症例だったから。もっと微妙な症状だと人に頼むのも悩ましいんだよね。「この芋虫データが16bitで来た時だけ毛虫のバージョンが違ってフラッグが立たなくて弾かれちゃうんですぅ。適正なゴキブリホイホイにアップグレードした機体じゃなきゃ本番の曲の頭出しで羽虫が回って困るんだけど…」みたいなようなことを怪訝な顔をした人々にブツブツと訴える…というような事態でなくてよかったな…と(^^;)。 ★ 飛行機を遅らせる事件!勃発(谷山サイト参照)…でドタドタと人様に迷惑をおかけして恐縮しきりの一行は福岡へ。会場からもほど近い驚異のコーヒー店「美美」で素晴しいイブラヒム・モカをいただいて、一日が御機嫌に始まりました。ところが、しばらくして、「うにゃにゃ??」……。以下同文。驚きの3連発達成!。(^^;) ★ これは一体どういう呪いでしょうか?(^^;) 余計に不思議なのがこれがKorg M1という現代(最新鋭では無いにせよ)シンセであって、OBXaとかEmulator2といったような「芋ハンダ3000箇所!(嘘)」タイプのシンセでは無いんですよねぇ。さすがに二度あることは三度笠合羽からげた舞台監督大城さんは、この日はもうこのトラブルを見込んで動いていたようで、すぐに代替機が到着しました。 ★ もうこのトラブルはトラブルとも思わなくなった一行は最終のこだま号で広島へ。車中の馬鹿な写真がMCに載ってましたね。「AQ!さんが抱えてたワインなーに?」とMLかどこかで尋かれてたと思うけど、アレはポンちゃんが福岡で仕入れてくれたワインで、何だっけな、忘れちゃった。でも、わざわざ、ブルゴーニュなるピノを買ってくれたんです。感謝~。(そういえば関係ないが、「クリスマスねこ森」のアンケートでわざわざ名古屋のブル品揃えの良い酒屋をタレこんでくれた某氏にも感謝や~2月に行くでぇ~時間があれば) ★ 牡蠣は何と帆立のベッドで育つのかぁ!と、牡蠣養殖の神秘に触れたりなどして、御機嫌で狭くて実にライブハウス味が嬉しい会場に乗り込むと、M1が2台ありました。(^^;)(^^;)(^^;) 業を煮やした大城さんの先回り。予備機をあらかじめスタンバってたんです。そして! マーフィーは今日も微笑む! この広島の2台のM1の現実は、2台とも完動!だったんですね。チャンチャン。いやはや。 ★ いやぁ長くなりましたが、これがおおよそ事件の全貌ですだー。どうだー。まいったかー。しかし長い文だなー。普通、読まんなー。誰もここまでは到達してないだろー。やーいやーい。…。……。(^^;) ★ ま、しかし、何とも不思議な連続事件でした。サウンドチェック~リハーサル時に解決してしまうんで、本番には全く影響はなく、お客さんにはまるでわからなかったと思いますが。3連発もさりながら、M1で!というのは結構、驚きました。先程もちょっと書いたように、現代のとても安定したシンセなんです。だからメインにしたんです。各地の楽器担当者も驚いてました、「そんなの聞いたことない」って。私も地方でレンタル機でやる時には今までもM1を指定することは多かったのですが、これまでノー・トラブルでした。ハードウェア的に頑丈な造りなのです。そしてソフト的にも、OSバージョンの違いが少なくOS違いによるデータ問題が殆ど無い(exかどうか、は要チェックですが)。こういうシーンでの優等生なのは(楽器担当者などにとって)常識と言っても良いでしょう。 ★ ま、呪われてましたな(嘘) ★ 「現代の」と言っても、M1の発売からどのくらい経ちましたか、10年以上にはなるか、レンタルに使われている物は割りと初期の物が多いようです。いつの間にかM1もベテランシンセにはなっていたんですね。10キーの所はスイッチに発光の仕込まれたタイプのパーツを使ってます。さすがの名設計も、そろそろこういった特殊「パーツの耐用期限」を一斉に迎える、という頃合なんでしょうか。そんな気分もあるんでしょう。しかし、2台目は何処でもちゃんと動いたんだよなぁ(^^;)。(最初から動く方持ってこいよぉ…とは言わない(^^;)) ★ ところでシンセのパッチ切替はMIDI的に言うと、要は0-127の数字が指定されれば良いのです。で先程から「10キー」と言っているように、M1は10進法的にこれを指定するのね。ところがRolandなるD-50では8進法なの。1-1から始まって1-8の次は2-1…といったような。でYamahaのSY-77(99)になると16進法。A01から始まってA16の次がB01。これも一種のメーカー間の意地なのかね? んな訳で、日頃、SY-99で「C」「15」と入力しているパッチは、M1上で「4」「6」と押さないといけないのだー。ワシの脊髄にも8進10進16進切り替えのディップスイッチが欲しいぞと思う時であります(^^;)。演奏中なんて脊髄反射だからなぁ。 ★ ところでこうなったら仙台にも登場してもらわねば。ハラハラドキドキのスタッフを尻目にスイスイと動いたんです、M1。ところが! 何を思ったんだか、D-50がデータ、読まないの。(;_;) これは詳述しないけど、ごく初期のD-50とD-550系の間で、データフォーマットに異論がある部分がある、というようなことなんですがね…。いやぁ、あざ笑われるというか、翻弄されているような話でした。 ★ それにしてもレンタル機材のトラブルなんて、ありそうでいてこれまで殆ど無かったんですが、まとめて降ってきたようなツアーでした、ハイ。ということで一席ぶってしまいました。次回は、近いうちにもっと手短にわかり易い話題で登場を予定したく候。 (2000.01.) |
第4回 …は発売記念!「谷山浩子の幻想図書館・雪の女王」である |
★ 出ました出ました~、ライブビデオ「雪の女王」。もうご覧になっていただましたか? 久しぶりのビデオです。というわけで、今回はその話。 ★ [お詫びとお断り] いやはや昨今の不景気で、金なら無い・暇ならいくらでもある、というならいいのですが、何か妙に時間の使い方が下手にばかりなってしまって、本項目、一気に書き上げる時間の自信がありません。ちょこまかと書いては上げて行くつもりですんで、よろしくです。…と予告モード。 ★ ところで、「雪の女王」公演は追加公演もあわせると4日間行ったんですが、収録はそのうちの1日です。どの日だったか、わかりますか? ★ などとふって、…つづく… (1999.05.) うーん、随分間が空いてしまった~。「雪の女王」が恋しいような真夏の日々です。…けど気にせず行きますです。 ★ 基本データとして、この公演は1998年12月4.5.6日及び1999年2月6日に新宿スペースゼロにて行われました。このうち収録日は、 1998年12月5日 でした。3日連続の真ん中の日ですね。「あててみそ?」などと書いたら、「谷山浩子ML」では簡単に見破られてましたが。タハハ。 ★ (「3日間とも収録して編集すりゃいいのにね」。ごもっともです。何でそうじゃないかって? そう、その理由は貴方の想像通りです、ハイ、タハっ。) ★ そしてこの日、収録自体は絵も音も基本的に全て、本公演時のもの(リハーサル時ではなく)です。例外として、青山伊都美さんの「烏の場面」の絵だけ、アップを録りたいとのことで、リハーサル時にカメラを回していました。…けど、どう使われていたか、絵はシロートなもんで、私にもよくわからないんです。トホホ。 ★ さて、音の方ですが。フランク・ザッパ大先生なんかビデオで 「No Over-Dub!」なんて大書して威張っておられますが、ワシらも一本勝負は一本勝負…という点だけは一緒(大先生が月面宙返りならワシらはでんぐり返しですけど)、緊張しましたわよー。ほんま。 録れ上がってきた音を聴きました。おおお頑張ってるじゃござんせんか。でね、じゃぁ無修正でワシらも「No Over-Dub!」と威張ろうかと思ったんだけど…タハハ。威張ってどうする、って。 ★ というわけでオーバーダブ問題です。えとね、実は、谷山・田代・青山の皆さんは、修正無しです。というのは一つには、公演の収録なんでノイズなどをかなり拾っているために、オーバーダブ(付け足し)は出来ても、録り直しという形での差し替えは不可能、ということもあります。いやぁ皆さん御苦労様でした、偉いっ。田代耕一郎さんなんか、単に「ライブの仕事」って思ったら何も「こういう」苦労をしなくてもいいライブなんて幾らでもあるんですよね、世の中的には。それをまぁ、何やらかにやらゴチャゴチャと面倒くさい作業もこなして貰って、ほんとにありがたいこってす。 ★ さて、んなわけで、オーバーダブは私めのシンセで、ずばり4箇所です。わっかるかなぁ? ★ その1。 「岸を離れる日」の間奏で、ストリングスのトップが奏でる間奏メロディだけをさらに被せて強調しました。これはやりたくなる作業なのです。間奏のストリングスを私が弾くわけですが、ライブでは当然、ストリングスのベースも内声もトップもいっぺんに弾かなければなりません。ということは、全て同一のストリングス音色を使わなければならないのです。この状態でトップのメロディを目立たせるには、メロディのみを強く弾く、という演奏をする訳で、それによって、よりブライトな音で大きい音量でメロが鳴って強調されて聞こえるのですが、所詮同一音色の中での連続性を持った「差」しか出せないので、思い通りにはメロが強調されないのです。この問題は、メロだけを、ほんのちょっと強い音色のストリングスでなぞってあげれば気持ちよく解消するって訳。 ★ ちょっとマニアックにもう少し突っ込んだ余談:ライブセッティングでは鍵盤を複数台(「雪の女王」では3台)置いてますから、右手と左手で2音色は使えるのです。2音色使えることによって解消するケースもあります。しかし、ストリングスの場合、右手だけでも、メロを1声・内声を2~3声押さえるので、この右手と左手で音色を分けるという逃げ方は通用しない訳です。(Q:「キーボードスプリットでは?」 A:「音域がクロスするからなぁ」) ほんとに余談になりますが、こういう事態をさらに包含的にカバーする技術的アイディアだけは昔からあるんだけどなぁ。あのですね、鍵盤側がどの指で弾かれたか、を検知する機能があればいいんだよね。「あ、今、右手中指がC3を押した」とか「今、左手薬指がG1を離した」とかね。技術的には色々可能性はあるでしょ。で、指ごとに違うMIDIチャンネルを送信できれば良い、というアイディア。そしたら、「メロ音色は右手の薬指と小指だけで弾く」みたいな手が使えるんだけど。こういう鍵盤は、多分まだ商品化されたことないんじゃないかなぁ。まぁ何となく(取れるものなら)どこかが特許とかは押さえてそうな気がするが。 ★ …つづく… (1999.08.) ★ その2。 ボートが花園の老婆の家に辿りついた、のBGMですが、タハハハハハハ、ここはミスの隠蔽です。\(☆〇☆)/ ★ さて、言い訳言い訳。(^_^;) ここはそもそも、公演第1日目まではBGMはありませんでした…これ、気が付いた人いる?(いたら凄い)。1日目の後で、この場面、ちょっと音が寂しいね、という話になったのです。で、ちょうど「花園の子守歌」が公演中に使われていなかったこともありまして、そのメロディをBGMで使おう、そんな話になりました。と言う訳で私の仕事が一つ増えました(…後々書くかもしれませんが、この公演中のBGMとかBGSoundはみんなワシが生演奏してるんだよ~ん)。だから、収録日が初めての試み。リハでやってみて、「お、いいねいいね」ということになり本番。スンナリ行ったんで気持ちの危機管理が無かったのがイカンのだね。本番に何が起ったかというと、ちょうどこの場面の本番照明をチェックしてなかった…結果が、何と強いライトが譜面ファイルの表面に当たってハネて、譜面が見えなかったのです。ここが微妙な所で、段取りに慣れていたりそうでなくても心の危機管理があれば、このくらいのとこ別に譜面見えなくても何ていうことないのだが…「予期せぬ事態」の悲しさで、「譜面を見ずに弾く」か「(頭の傾け方で)譜面が見える角度を求めるか」で迷ってしまったんだよー。その混乱の0.5秒くらいのパニックの間に何故か手が、ソーシドレ、の所を、ソーラシレ、と弾いていたんだな、これが。ここだけの話、谷山先生は「思わず吹き出しそうになった」とのことであります。そりゃそーですね、まったくもってすいやせん。…んでもって、とにかく違うわけですから「これはメロディではなくイントロである」というすり替えに創作していく訳ですが、動揺は残り、上手な工作とは到底言えません。トホホ。そんな訳で、この「工作」をオーバーダブ時に巧妙に付け足して何とかした、という場面なのでした。 ★ …つづく… (1999.11.) ★ その3。 本編のド最後、再びの「あかり」のラストです。ここでは左手の小指の外へ、6本目の指に生えてもらいました。 ★ まぁここは、本当は、音楽の迫力上では実際に押さえているより更に1オクターブ下の音が鳴っていると、いいっちゃいいんです。ぐっとスケール感が出ます。当然それはライブでは、手が足りない指が足りないんで果たせないんですが。ビデオ版では折角ですから、6本目の指を足しました。 ★ その4。 アンコールの「カイの迷宮」の前半の一部です。概ねコード演奏に回ってるんですが、実は、パッチ切替を間違えました。それを直すというか、足しています。 ★ 本編がまがりなりにも無事に済んでホッとしたのは覚えています。さぁ、思いっ切りアンコールの「カイの迷宮」を楽しもうっと、と思った瞬間に、フラフラと変なパッチを呼んでしまいました。パッチ切替というのは(色々な場合があるけど)、シンセ上の10キー(のようなもの)を打ってそれで演奏する「音色」を呼び出すことです。これを間違えるとどうなるか、というと「とんでもないことになる」場合もあるのですが、ちょっと気の迷いで隣に行った場合などは例えば「フルートのソロのところでオーボエを握って立ち上がってしまった」というような事態になります。この例の場合は、余程オーケストレーションまで覚えている人ならば「あれ?フルートの筈なのに変なの」となるでしょうが、そうでなければ音楽的には「間違い」じゃなくて、アレンジ変更というような感じになります。 ★ この例に沿って話せば、思いがけずオーボエの音がして一瞬はビックリしたんですが(^_^;)、頭の方の切り替えは速く、「フルートのパートは(ビデオ版は)後で足せばいいや」と割り切って、オーボエならやるであろうパートを弾きました。で、本来ならやっている筈のフルートの業務内容はこの機会に加えた、という訳。 ★ … ★ …そんなこんなをダラダラ話していたら、いつの間にやら時はまた、雪の女王の季節になってしまいましたね。何か、長くなってしまいました。本項は一応、ここまでにしましょう。この公演のその他の裏話は、また、いつか…。(1999.12.) |
第3回 テープレコーダーの上を走り回る「恋するニワトリ」ではあった |
★ 第3弾。いきますっ。今回は軽い小ネタだよん。 ★ 1985年のアルバム「空飛ぶ日曜日」(ポニーキャニオン PCCA-00267)収録の「恋するニワトリ」。暗いようでいてやたらと元気が良いとも言えるアルバムの、コーラスバージョンの「恋するニワトリ」ですね。 ★ さすがに14年前とあって古色おびてきてもいるけど、可愛いから、ま、いっか。このアカペラ版は、半分ちょっとはサンプリングで残りが生コーラス。「スタジオ遊びに来た記念」で歌ってもらった人も多く、その度にこの曲のテープを出していたので、アシスタントの人なんかはちょっと大変でした。ご苦労様。当時まだ渋谷にあったエピキュラススタジオでの収録です。 ★ 「パンパパン」というベースと「ココ」「ジャン」あたりが私の声のサンプリング、基本コードのコーラスや「フワ」が谷山さんの声のサンプリング。 ★ 2番に入って後ろで奇麗に「パンパラパン」とカノンを歌いあげているのが斉藤克也・前マネージャーです。この人は歌自慢で、たしかにとても上手。マネージャーの歌合戦があったら上位入賞間違いなし、という。克也さんの歌ってる曲はニワトリ以外にも数多くあります。 ★ 2番の後の間奏でリードをとっているのが、相曽晴日さん。今年はまた色々活動の予定があるようで期待したいものです。この時は、たまたま遊びに来たんだっけかしらん? ★ ひき続いて3番にはいって聞こえるハイ・ソプラノのオブリは橋本一子さん。晴日さんとうってかわってビブラート満載の登場です。やはり遊びに来たのをつかまえた?ものだと思います。まぁ、豪華。途中、奇天烈な相の手が入りますが、これは再度、克也さん。この相の手のネタはですね、ある年齢以上の人にはすぐわかるでしょうが、「狼少年ケン」ですね。(^^;) ★ 4番のお賑やかしの、音程に不自由している二人組(^^;)は、インペグ(ミュージシャンのコーディネーターのこと。この用語はまた後日、解説する日もあるでしょう)の飯島さん(うるさい\(☆〇☆)/方)とポニーキャニオンの長岡。 …と、登場人物の紹介をしただけで終わってしまってはこのコーナーらしくないので、ちょっとだけカルトな話を付け加えておきましょう。すなわち、主役の「ニワトリ」さんは誰かな? ★ この曲で、ニワトリさんは、「はばたきの音」でもって登場します。1番と2番の間、などのブレイクで、恋するニワトリはジタバタして羽ばたいてるのね。この「はばたきの音」、たしか、まずは本物の鶏の羽の音とか入れてたんですよ。でも往々にして本物というのは地味なもの。ここでも、もちょっと派手な奴がいいね、というような話になりました。で、どうしようか、と考える人々のスタジオは、下敷きをうちふるマネージャーとか、守衛室あたりから探してきたか団扇をはたき過ぎてマイクにぶつけるエンジニアとかの溢れる巷と化していました。 ★ さて、このヴァーチャル・ニワトリ合戦、その勝者として採用されたのは何だったと思います?アルバムに収められているこの「ニワトリのはばたき音」は実は「エピキュラススタジオのマルチテープレコーダーからテープが巻き取り切られる時の音」なんです。 ★ マルチのテープレコーダーは現在ではデジタル方式の物が主流となっていますが、当時はまだ全面的にアナログの24chでした。このテレコで使うテープは、幅が2インチもあるもので、これがグルングルン回ってる姿はなかなか力強いものがあります。ましてリワインドやファストフォワードで高速で巻いてる時は、唸りをあげる迫力。これがそのままテープを巻取ると、テープの最後の所が飛び跳ねて、結構な騒ぎになります。パタパタパタパタと…。これなんですね。 ★ ところで全くの余談になりますが、マルチテープの起動音から始まりテープを巻き切って終わる、というアルバムがあります。David Bowieの名盤"Scary Monsters"がそれ。さすがにニワトリはScary Monsterではないなぁ…、とわけがわからなくなった所で、バイバイ。 (1999.04.) |
第2回 そして「王国」の城門は閉じられた…のか? |
★ いやども、励ましのメールなどいただいた皆様にはありがとうございました。ってんで、第2弾じゃー。(^^;) ★ 今日は1992年のアルバム「歪んだ王国」(ポニーキャニオン PCCA-00370)から「王国」です。このアルバムは数多い(本当に!(^^;))谷山浩子アルバム中でも近年の…というかオーバーオールな代表作に推す方も多い作で、たしかにアルバムというものはそれぞれ一枚一枚に思い入れも価値もあって好き嫌いを言うのは難しいものの「「歪んだ王国」が「代表的」なアルバムの一枚である」というのは私も頷けるものがあります。そしてそのアルバム中でも「代表的」な曲となるとこの「王国」があがってくるでしょう。 ★ それにしても1992年かぁ、遠くなりにけり、でもありますね。この曲は「あの」綾辻行人先生がサイドヴォーカルをとっていることも有名ですが、当時は「駆け出しの売れっ子」のようであった綾辻さんも今では推理文壇の「オシツオサレツ」…じゃね~や、文壇でも「おしもおされもせぬ」新本格の巨匠として祭られる一方、もはや「若手」の冠は剥奪される今日この頃。 「王国」という曲が出来た(曲名が決まっていたかどうかは忘れた)、と言うので聞かせてもらったのを何となくまだ覚えているのだが、青山円形劇場であったように思う。うーん、地味な佳曲だと思ったのよね。初回は。(^^;) いやさ、とくに出だしのさ、メロだけ聞いてみしょ、淡々としてる曲ではあるよ。ましかし、地味だと思ったのよね、最初、覚えてる。変なもんだ。(^^;) それがね…随分遠くへ来たものだ。一つには歌詞の力がある。それは只ならぬものだから。そして結局、メロもね、聞く毎につまり力があるんでした。はい。そんなこんなでレコーディング時にはパンパンに膨らんだんです。 ★ 辿りついた先はいやぁも~、ドラマチック、ざんしょ。個人的冗談としてこのタイプを、谷山浩子のJARO系の曲、と呼んでいます。「JAROってなんじゃろ?」ですね。「う・そ、大・げ・さ」は言いつけてやりまひょ、って。…ま、制作サイドが「盛り上がりましたなぁ」なんて言ってちゃ自画自賛もいいところだが、その度にヒイていると文が長くなってしょーがないんで、平気で書いちゃってます。ご笑納ください。 ★ この曲のドラマチックな展開、というとその契機となるのは間奏ですね。ここが一つの展開点として使われている。この間奏、ちょっと変でしょ。コード進行でいうと、ここでの |:Cj7 / / / | Am7 / / / | Fj7 / / / | Em7 / / /:| という展開は「すごくフツー」なんですが、実はこの曲では、 |:Cj7 / / / | Am7 / / / | Fj7onE / / / | Em7 / / /:| になってるの。Fメジャ7の所でベースがEに行ってしまうんで、どよよよよ~んとしてぬかるんで底が抜けたような感じになるんですね。…。このアイディア、何処からきたかと言うんですが。谷山さんの録ったデモテープがですね、この箇所でですね、左手の小指が弾き損なって、ファのところをミを押さえてたんですね。ミスタッチという奴ですね。デモテープですからそういうことはよくあります。これが良かったんだ。私は思わず、「採用!」と主張していたんでした。 ★ 「王国」のサウンドの構成は、その多くが歌詞・その背景の世界にインスパイアされていると言ってよいでしょう。リュートが語り部となって紡がれる楽曲を構成するのは、「隠された時間」と「隠された場所」を暗示する楽器群です。ハーディガーディ・オンドマルトノ・サーランギ・ウォーターフォン・ハープシコード・アルトリコーダーと言ったある種「忘れられたような」楽器たちが、サンプリングという抽象化を経て時空間に淀んでいます。…。…おおお、何かカッコイイみたいやんけ。 ★ というわけで、細かいサウンド解体を行うなら結構いつまでも書けるんですが、枚数を稼ぐ原稿仕事をしてるわけじゃないんで、それぞれは割愛し、今日のテーマは「城門の音」なのだ。 ★ [曲の冒頭、ヒョヨヨ~と妖しい音は王国の王宮、まぁ城のようなものが建っているのだろう。そして、ギィ~ぃ~バタンっ、と重々しく城門が閉じられ、歪んだ王国の話が始まる] これが城門の閉じる音! (MP3[107k]:128kbit/s,44.1kHz,Stereo) と、このイントロを聴いた人はみな、思ったのです。いや、それはそうです。そう聞こえますもん。そしてこのイントロは、私が作ってスタジオに持ってって音を出したその時から、谷山さんからもスタッフの誰からもリスナーの多くの方からも、そのように信じられて現在に至っているんです。しかし、ここに一つのエピソードが匿されているのだ。この「ギーィバタン」、は城門の音じゃないんです、時計の音だったのです。 ★ そのサウンド構築の変遷はこうです。 「王国」の世界において重要な役割を占めているものに、時間の概念がある。日射しの角度すら幾千年動かない時の淀みの中で愛が永遠を叫んでおるのです。おお~、悲しい。実際、砕かれた時計も登場するこの世界で、「何か時間の表象が欲しい」と思ったんです。そこで用意される素材が時計だったのです。ネジ巻時計の音。ギーギー、と。 しかし、時計の音をそのままサウンドの中に投げ込んでも無粋なだけです。ここはそれを抽象化したい局面である。すなわち明示ではなく「暗喩」と洒落たい。そして、音楽的にはその場所には「低い音」が欲しいのでした。そのときに考えられる手段の一つとして「音程を下げる」ことがあります。テープなら回転数を下げますが、サンプラー内ではイージーなオペレーションです。たしか、2オクターブばかり下げたものと思います。これはとてもよくはまって感じられました。(気になる方は、この部分を、テープなら4倍速にして「戻して」聴いてみれば、元の音が聞ける筈です) 2オクターブも変更すると、たしかに、大概の音は、元の音のキャラクターから著しく離れます。その変化は一様ではありません。2オクターブ下がった時計は、たしかに、「ぎぃばたん」とも聞こえるような音になっていました。 元は確かにネジ巻きだ! (MP3[25k]:128kbit/s,44.1kHz,Stereo) ★ この時点では私の意識中では、まだ時間の暗喩としての音、だったのですが、以降の展開は上述のようです。スタジオでは「あんりゃま、門に聞こえたかね、まいっかそれもいいね、はまってるし、色々あるねタハハ」ってなとこで、なに、文章にするとえらそーでもミュージシャンが(私が、か(^^;))そんなに物事を深刻に考えるわけもなし。 ★ とまぁ、そんだけのこぼれ話。なんだけど、後で考えると、ちょっとなんか、良いかなと。誰に頼まれることもなく、「時を象徴する時計が王宮を象徴する城門に勝手に変容」していったんだね。なんかちょっと、かっちょよいくさ。ね~え。 ★ ですから、今度からは「王国」を聴くときにはここで述べたようなことごとに気を付けて聴……いていただいても、何~もかわりがあるわけじゃありません、はい。ここは「どうでもよい」ことだからい~んです。(^^;) では意味もなく、ちゃお。 (1999.03.) |
第1回 足ももつれるように「逃げる」 …3回続けて言うと早口言葉だなぁ… |
★ 1987年のアルバムに「透明なサーカス」(ポニーキャニオン PCCA-00269)があります。派手なアルバム、ではないものの、奇妙な味があって(さかなの言葉、や、MOON SONGのような正面きった名曲もありますが)今でもこのアルバムを支持してくださる方がいて嬉しかったりします。そういえば、この頃はまだ、LPレコードが存在、しますねぇ。そういえば馬鹿なジャケットだなぁ。これは千駄ヶ谷の店で撮ったものですね。うーん、と、禿げ頭のオジサン、を被っているのが前マネージャー斉藤克也氏だ、というのは覚えてるなぁ。 ★ とくに「お人形畑」~「逃げる」~「時の回廊」あたりはストレンジな空気と思います。で、「逃げる」、の話をば。しかし、何やね、「逃げる」ってタイトル、そのまんまやね。(^^;) 動詞やね。(^^;) 谷山先生は外部から見たって歌詞の方面ではそりゃもう日本のプロの中でも恐ろしく力のある、って、もうその辺は当然の念を押した上で言いますとね、「タイトル」はたまにとても”い~~加減”、なことがあるんですよ。タイトル、となると。「せんせ、タイトル、これでい~んですか、そのままやんけ?」って。「逃げる」も、考え抜いてシンプルになったのかもしれないけど、この、「タイトルいい加減症候群」の可能性もありますね。…ま、そりゃいいか。 改めて聞いてみると、美しい間奏ですね。Sequential CircuitsはProphet T8ですね。谷山演奏no quantizeですね。オートパンしているセリフは、AQ!ですね。これは何だったかなぁ、「逃げる」かなんかの歌詞の朗読の逆回転じゃないかな。逆回転にするとネタがわかるかも知れません。そういえば、全然別のアルバムの別の曲の話ですが、その曲の逆回転のネタを「谷山浩子メーリングリスト」の人にズバリ当てられたことあったなぁ。熱心な方はいるものです。 ★ で、「逃げる」ではとにかく何かの朗読をサンプラーに取り込んで逆回転にし、メモリの読み出しの頭のアドレス指定をダイヤルにアサインしておいてグリングリンと回しながら鍵盤でポン出した筈です。いやぁ~、クラブ(←平坦なアクセントで読むこと)なことしてるね。…はい、この辺マニア向けでした。 ★ で、本題。本題もマニア向けだけど。「逃げる」は、「足がもつれてるんです」。これはかなりカルトだど。後奏なんですが、足がもつれているのを感じた方ももしかするといるんじゃないか、と。まぁもしそう思ったとしても、フツーは 気のせい ですね。しかしこの後奏では、気のせいじゃないんです。一番のヒントになるのは、ドラムのハイハットの音で、ハイハットは後奏でも8分の刻みをキープしてますんで、それに注意して聞いてみましょう。(…ったって、かなり訓練された人でないと難しいですが)ハイハットが周期的に「裏返る」のが聞こえますね。こうして、足はもつれていたわけです。つまり、どうなっているかというと、ハイハット以外の楽器群は、2小節単位のパターンの2小節目では、(最後の一つの)16分音符を欠いて演奏しています。すなわち2小節目は15/16なんですね。 ||: 1@[16*4+16*4+16*4+16*4] + 2@[16*4+16*4+16*4+16*3] :|| ★ というわけです。早口に自信のある人は「ちきちき・ちきちき・ちきちき・ちきちき/ちきちき・ちきちき・ちきちき・ちきち」と繰り返し唱えてみましょう。楽器たちと同期できて気持ち良くなるかもしれません。…少なくとも1時間程度、同期出来るまで大声で練習しましょう。脳内麻薬が出て気持ち良くなります。酸欠とも言う。(本気にしないように。「泡吹いて倒れた」等の苦情はただいま受け付けておりません。(^^;)) ★ ところでこの曲では、メッケンにベースを弾いてもらったんですが、この問題の後奏も実はやってもらいました。16/16+15/16で。大変にゴキゲンでカルトなトラックが録れたんですが、実は残念ながら「複雑になりすぎ」という判断でトラックダウンで消されてしまいまして、アルバムには入ってません。マルチのテープの上で淋しく寝ています。いやいや。 ★ はい、細かい話で失礼しました~。次はあるのか? ではまたーぼわ。 (1999.03.) |