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フランス料理店(北部フランス)
この一覧はアルファベット順になっています。
 
 

  L'Amphitryon : Jean-Paul Abadie  ランフィトリオン : ジャン-ポール・アバディ
  
127, rue du Colonel Jean Muller - 56100 - LORIENT 02 97 83 34 04 (Fax:02 97 37 25 02) 
ferme vacances, dimanche et lundi
depuis1985 Chef: Jean-Paul Abadie (1958- ) ~
・  
 Jean-Paul Abadie は Gault Millau の Cuisinier de l'annee 2004 に選ばれた。その感動的な料理に、間違いなく現在のフランスを代表するトップ・シェフの一人だと確信する。 (2005.4)

  → 2005ブルターニュ旅行記はこちら

 2009GaultMillauで、Veronique AbadieはDirectrice de Salle de L'Anneeを獲得。

Michelin ○  /GaultMillau 18 (2001)
Michelin ○○ /GaultMillau 19 (2004)
Michelin ○○ /GaultMillau 19 (2008)
Michelin ○○ /GaultMillau 5t (2011)

 2012年3月、Veronique Abadieがまだ51歳の若さで、急病により逝去してしまったようです。大変に悲しいことです。
 もし誰かが、「Jean-Paul Abadieはフランストップのシェフで、Veronique Abadieはフランストップのサービスさ」…という意見を唱えたとしても、我々にはさしたる異論はありません。それだけの店、人物でした。「ロリアンは偉大な女性を失ってしまった」…とは、ロリアン市長の言葉だそうです。
 合掌。

 2018年頃、どうやら経営が変更した模様。Jean-Paul Abadieシェフは引退した、のかなあ。
 もう一回食べたかったなあ。
 フランス料理の世界の頂点に君臨するレストラン…の中では最も地味な方の一軒、、、でした。内容は、神々の世界…でしたけどねえ…。

LAMP1 [↓メモ版:工事中]
2005年 4月 ☆☆☆☆

 " goute a tout "
 *dinette de saveurs
  ・フォアグラムース、トマトのジュ/野菜と花と山葵/クッキー/マクローのタルタル、トマトのキャラメリゼ/牡蠣と人参ピュレ、シトロン風味   ・ブランダード、トマトのキャラメリゼ
 *royale et transparence d'araignee a la reglisse
 *l'artichaut violet, l'oignon vert et le cabilolaud demi-se
 *bar en cuisson lente [fumet mousseux a la citronnelle]
 *homard saute a cru a la mode des vieux
 *filet de veau en cocotte - asperges meunieres
 *histoire de chocolat
 *creation autour d'un fruit
 *mignardises
  クレーム、人参ムース、グラスドベルモット、キウイゼリー
 +83 Ch.Palmer

29-2 (コメント工事中)
[AQ!]
 え、こんな煤けた街外れに? そうとう意表を突くロケーション。しいて言うとアルサック的。見知ったAの文字。小さい店。ガラス扉だ。多くの客が20:30予約だからか、店頭に立っただけで扉が開き、マダムはじめフロア陣に物凄い流麗さで迎え入れられる。メルキュール・ホテルでもそうだったが、日本人を見ただけで「Oh! ホントに来やがった!」状態で、ジュマペルもオノムドも不要な感じ。
 ガラス職人(Le Hen。Lorient在住の夫婦アーティストで、ギ・サヴォアも彼等の皿を使用している)とは“コラボ”に近い関係なのか、店内にオブジェが一杯。皿はほぼ全部がラス製。驚いたのは、皿と皿の間に、鑑賞用の目印皿が出ること。これは極めて気分の良いモノ。料理がイケてなかったら、空々しいアイディアかも知れんが。韓流デザインの皿がひときわ綺麗。しかも全体に変型皿が多く、一度に何枚も持てないので、フロアのセルヴールは、ごっつう忙しいこととなる。やたらよく働くフロアだ。飛ぶように走るように歩き回るのだが、エレガントで、話せばサンパ。その辺りは統括するマダムVeloniqの力が大であろう。服のボタンとヘアカットの現代的な“ロックスターのような”マダムは、髪を赤と黒の縞に染め、先頭に立ってフロアを仕切る。我々の席に来ると、極めてユックリと明瞭に仏語を発音してくれるので、我らボンクラ頭にもとてもよくわかる。…これはヴィヴァロアのマダム以来の技かも。
29-3
 アーティショー・ヴィオレが、ウマ過ぎる程にウマい。これには魂を抜かれるようだ。だいたい、この皿はそもそもよく出来ている。真ん中にデミセルのキャビヨ(バスクのウルサがたも喜ぶような具合の)を置き、周りに新玉葱とアーティショー・ヴィオレ、そしてソースは泡で、キャビヨやアーティショーが白っぽい岩のように泡の間に顔を出す。アーティショーと玉葱に、ほんの数本の焦げ目が“計算通り”に入っていて、上品に香ばしい。キャビヨと玉葱を同時にいただくと、玉葱の新モノの香りと甘みがキャビヨの美味しさをクッキリと際立て、押し上げる。ナイス・サポート。キャビヨとアーティショーを一緒に食すと、今度は、キャビヨがアーティショーにスポットライトを当てる。とても複雑でテロワを感じさせるこの野菜の美味しさが、フルに発現する。先程は“かしづかれて”いたキャビヨは奴隷となって、“王侯”アーティショーに仕える。面白いものだ。
 オマールは“古典風”という名乗り。フォンドヴォーの濃いソースを使っているのが、その、含意だろうか。参りました。天上の一皿。ここまで、ここまでも、ウマいか!! オマールって、こんなにウマいか! 多分、全てが完璧に、尽くされているのだろう。ブルターニュのオマールの、“現地の”質。抜群のキュイソン。きっと掃除も。
 そして、ソースが凄い。多分、古典へのオマージュと、現代的な見つめ直しが真摯に追求されてのことと思う。これは、「今回の旅行の、この一皿」と言えるだろう。
 極めて複雑な工程、緻密で手抜きのない仕事をした結果が、シンプルとも言えるような「一つの味」となって皿上にある。JPAの料理は、ブラスやアドゥリスを食べた時のことを、思い起こさせた。
 アレネはカレー風味で、蟹味噌っぽいロワイヤルと、身のトランスペアレントの2ウェイ。正直、食べなければ想像がつきにくいくらい、透明で美しい「蜘蛛蟹のカレー」である。
 アミューズは多くの店が牡蠣を使っていて、牡蠣勝負が勝手に楽しめてしまったのだが、ブッちぎりの1番はコチラ。合わせたのは人参ピュレで、後はオイルにシトロン、エピス何かってところだろう。細部は不明なのだけど「どこまで牡蠣のこと知ってんだ?!」と驚いた。知り尽くした男の料理。
 バールのキュイソンでまた、2人してひっくり返った。オンブルシュヴァリエかと思うような、繊細で蛋白質凝固点を睨んだような火入れ。バールの香りが、綺麗な香りだけがこんなにわかる料理は初めて。
 ヴォーはちょっとレジスのヴィアンドみたいなまとめ方。

[へべ]
 ようやく念願かなったブルターニュ旅行の、行ってよかった!(いや、やっててよかった!とも言うか…)この一軒。店内、サービスともに素晴らしいところへもってきてこの料理。望外の幸せここにあり、と泣きました。いやー、ウマかった。
 アンリ・ゴーごっこで「私のベスト料理」を挙げるならやはり、オマールの古典風。素材の鮮度が、質の良さが、寸分の狂いもない的確な扱いが、そしてソースの選択をはじめ料理としての個性と説得力が、すべてこの皿の上に結実している…。ただただ脱帽し、ヒックリ返り、コーフンし涙しつつたちまち食べ終えて、ため息とともに余韻を味わうのでした。ふぅ。
 パリのフランス料理を食べていたころは、魚介類の火入れの精度はフランス人、まだまだだなぁと(平均的には)思ってました。ランブロワジーのパコーやブラス、レジス・マルコンは別格ですが。…ところがスペイン方面に出かけてみるとバスク人のレベルは高いし、今回ブルターニュでもトップクラスの火入れはばっちりで、このあたりの意識は自分の中でかなり変わったかも。

[AQ!]
 メルキュールのフロントで、ついでに聞く。
「レストラン、ランフィトリオンっつうのは知っとるかに、チミぃ?」
「あ~ら、勿の論よ。 (ロリアン市街地図を取り出して) ホテルが此処でしょ、こー行ってあー行ってロンポワンが2つあって、はい、此処! (とボールペンでぐりぐりする)」
「ふぉふぉふぉ、さすがにゆーめーであるのね。タクシーでどのくらい?」
「うーん、10分」
「我々は実は今晩予約してあるだで、どうか20時にタクシーを呼んでくだされだども、お願げしますだ」

 L'AmphitryonのJean-Paul AbadieはGault Millau の Cuisinier de l'annee 2004に選ばれて一躍注目を浴びたが、それまでは内外ともにマスコミ露出が少ない地味なシェフという印象であった(けど、どうか)。2001年にミシュラン1つ星・ゴーミヨ18点だったのが、2004年には2つ星・19点となっているので、急進中の若手かと思いきや、写真を見る限り「おじいちゃん」っぽさも出て来たベテランシェフであるようだ(後年注:あとで調べたら1958生らしい。たまに随分トシくって写ってるけど、そんなにはイって無いのね(^^;))。大体さ、かなり僻地なので、ミシュランもゴーミヨもろくに審査員が回ってなかったという辺りが真相、だったりするかもしれぬ。
 ここは行ってみたいものだ(こういうシェフ顕彰は地方のシェフに与えられる時は信憑性が高い)、と、2月中にFAXを入れるが、これがあーた、返事が来ない来ない。も~、今回感じたブルターニュ全体の特徴だが、ルーズだよ(^^;) (別にFAXに限らず、e-mailの返事もゆっくりな所多し)。パスカル・レミが「ミシュランの調査員は伝統的にアルザスのしっかり者が多くて、ブルターニュあたりの連中の事務処理のいい加減さには我慢がならない。それであの辺りの星は全体的に実力より低いんでねーの?」みたいな意味のことを書いてたけど、ホントだ!(^^;)
 でリクエストは5/3だったのだが、3週間ほどしてやっと来た返信には何と「いやぁスマンスマン。5/1からメーデー休暇でね、1週間休みなのよ~ん」と丁寧な字で書かれている。アチャー! 今年の暦上のGW、すなわち我々の休暇は4/29~5/8なのである。
 こりゃアカンか…とカレンダーと営業コードを睨むと「む、4/30はOKかもかも?」。すぐさま4/30のリクエストに切替えFAXした所、悠長にまたしばらくして「OK」が返ってきた。うーん、まさにピンポイント、“空白の一日”(古い…)にジャスト・ヒットだー。
 そして後になって我々は、奇跡の一日にこの店を訪問できたことを神に感謝することになる。速攻で「我が心のフランスの料理長10人」を書き換えたくらい、圧倒的に好き。ワシら個人的には、この店に辿り着かでブルターニュに如何で花実の咲いたものか(^^;) (意味不明)。

 20時10分。我々はホテルフロントにいる。タクシーはまだ来ない。「タクシー遅いね」とフロントに声をかけるとオネーサンは「すいませんねぇ。もう~、あのタクシーったら、toujours toujours toujours(と3回言った)、こうなのよ~(^^;)」と電話する。そんなにいつも駄目なら、呼ぶ奴変えればいいのにとも思うが、そこは田舎。間もなく到着するタクシーに乗り込む。運転手のニーチャンは、我々の方に向き直って、「デゾレ。ジェウーブリエ!」と何の屈託もなく明るく笑う。…パスカル・レミの言ってたことが身をもって理解出来た気がする瞬間ですた。セ・ブルターニュ。かも。

 クルマは街中心部からやや郊外に向かう。とは言っても、まだ家・店・工場の立ち並ぶ市街地だが、だいぶ中心部に比べるとボロっとくたびれた建物が多くなり、雰囲気も殺伐…じゃないけど煤けて見える(観光客には)。そんな具合の道っ端、いきなり「着いたよ」と言われる。ホニャ?、と見ると、まぁこれも大したことない建物の横にL'Amphitryonのサイトで見慣れた「A」を変形させたロゴが浮かんでいる。よく見るとその横にガラスの扉。いやぁこりゃまた地味な場所の地味な外観のレストランである。“しなびた街外れの道端”具合はArzakを思い出すね、と意見が一致したが、Arzak以上に意外感のあるロケーションかも。

 さて、ガラスの扉は中からこちらがよく見える訳で、すかさずバーンと開け放たれて「ボンスワー」。まず最初に驚くのは、“ロックスターのような”カッティングの黒服に身をつつみ頭を“赤と黒”に染めたマダム、ヴェロニク・アバディの出迎え姿だろうか。「ええと予約したイシイで…」「ハイハイ、わかってるわヨ」と、こちらでも東洋人顔が既に今晩のパスポート状態…になっているような流麗な案内で席へ。
 主サルで30人弱の小店で、ガラスの彫刻やオブジェがキマった実にクールな内装、めっちゃお洒落で居心地良い。大体、小バコ好きだし。店外の雰囲気との差が急峻でクラクラする。
 注文は色々検討した結果、一番大きなムニュ「全部食え」が最も季節やテロワの色がよく出ているようで、それにする。一番上等でも、ミシュラン2つ星にして100euro程度だし、量的に重くないし、これは結構オススメ。

 料理は、後に詳述することもあろうが、本当に素晴らしく感動的だ。素材への敬意と直観がある。アイディアがあって、丁寧で精緻な工程を重ねて行くが、その複雑な作業の行き着く結果はとても“シンプル”で純粋である。…とそんな料理。舌や鼻に届く時の純度が高くて、珍しくもミシェル・ブラスやアンドニ・アドゥリスに似てる、と思ってしまった(別に似てるから良い・悪いってのは無いんですが)。後でネットで検索してたら、Abadieシェフは英語の記事で「私の料理はSimpleとRespect」などと答えてて、なるほどと納得。
 ブルターニュ名物、牡蠣・アーティショー・オマール。牡蠣は大概の店でアミューズで出るが、L'Amphitryonの人参ムースと合わせたシトロン風味ほど牡蠣への理解の深さを感じさせる物はない。季節を迎えるアーティショー・ヴィオレには、「これがアーティショーだったか」と驚倒(元々アーティショー好きなんだけど)。オマールは「昔風」と名乗り、フォンドヴォーのソースなのかな…それが古典的なんだろうけど、もう、ちょっと美味過ぎてヤヴァい。オマールとのこんな出会い、これからもあるものだろうか、と思うと切なくなってくる(←アホ)ような。今回の旅の「この一品」。

 …と料理はケレン味のまったくない純粋直球だが、店のアート感覚は色々凝っていて面白い。先にも触れたがガラス作品好きで、料理の皿もすべてガラス。実はこれらは、同じLorientに住むガラス工芸作家Chantal et Didier Le Henの作品で、このプレゼンは、Le HenとAbadieの“コラボレーション”としてとらえて良いと思う(Le Henの作品はGuy Savoyなどでも使われているそうな)。
 面白いのは、「料理と料理の間にも位置皿が出る」こと。えーと、レストランに行くと最初に置いてある位置皿・サービスプレート、アシェットドプレザンタシオンって奴ですが、まぁアレは最初だけ置いてある物なんだけど、この店だと、一つ料理が終わると、また違った位置皿が出てくるのだ。位置皿…ってより、「観賞用のお皿」と言えばいいか。Le Henの凝ったデザインの皿で、「次の料理が出てくるまでこれでも眺めて談笑してて下さいませや」ってことなんですな。
 作品自体も綺麗で多彩、楽しめた。まぁこういう趣向は“肝腎の料理”がイイ店じゃないと滑りそうな気もするけどね。それにしても、この鑑賞皿の上げ下げが加わるので、サービスは忙しい。優雅に、しかし、飛び回っている。先程のタクシー兄ィとはうってかわって「勤労意欲に燃えるブルターニュの若者」が見られる。ここのサービスは全体にキビキビしてて良かったな。マダムが“キリッと”采配をとってるので、カティが仕切るクラン家の「ラルンスブール」の雰囲気をちょっと思い出した。

 後になって聞いたのだが、盛んに食い歩きをするタイプの現地修業中の日本人料理人の一人が、「全土回ったけどランフィトリオンが一番」と言ったそうだ。「ウム!」と深く頷くワタシたち(笑)。

(コメント工事中)
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  L'Arnsbourg  ラルンスブール
  
18, Untermuhlthal 57230 BAERENTHAL  03 87 06 50 85 (Fax 03 87 06 57 67 ) www.arnsbourg.com
ferme vacances d'ete, vacances de jan.,mardi et mercredi
Chef:  ~ Jean-Georges Klein ~ Philippe Labbé ~ Fabien Mengus
・
  → 2002アルザス旅行記はこちら

 ジャン=ジョルジュ・クライン(片仮名表記はひらまつのサイトによる)は「ひらまつ」と組んで、2004年、札幌に進出するそうだ。
「ル・バエレンタル」(片仮名表記はひらまつのサイトによる…ま、ちょっと悩ましかったでしょうな)
 札幌市中央区南1条西28丁目3-1 

Michelin ○  /GaultMillau 15 (1990)
Michelin ○○ /GaultMillau 16 (2001)
Michelin ○○○/GaultMillau 16 (2002)
Michelin ○○○/GaultMillau 18 (2008)

 ひらまつとの提携は終了。

 Jean-Georges KleinはラリックがWingen-sur-Moderに持つ「la Villa René Lalique」のシェフに就任、L'Arunsbourgを離脱。
 マネージメントを仕切るCathy Kleinが次期シェフにShangri-La Parisを離れたPhilippe Labbéを迎え、継続する。 (2015)

 Klein家は「L'Arnsbourg」をLaure & Fabien Mengusへ売却の模様。 (2016)

ARNS1 [↓メモ版:工事中]
2002年12月 ☆☆

 *トマトの薄い熱々パイ
 *セロリに泡(カフェ、バルサミク)の一口スプーン
 [ Menu Decouverte ]
 *Petits Savoureux Aperitifs
  エスカルゴ、アンショワのエスカベシュ、パルメザンの芯、オリエンタルな牡蛎
 *Caviar "Oscietra" a la Creme de Chou-fleur
 *Soupe de Coco, Rouget au Curry de Madras
 *Grillade de Foie Gras de Canard et Betterave Rouge aux Epices, Huile au Citron
 *Noix de Saint Jacques Poelees, a la Creme de Nougat
 *Poitrine de Perdreau Rouge, Pattes Compotees, Ecrase de Panais
 *Emulsion de Pommes de Terre et Truffe
 *Invitation a la Decouverte
  アニス風味マスカットの一口スプーン
 *Petites Gateries de Fin de Repas
  パッションフルーツのジュレにヨーグルトグラス
 +00 Riesling GC Vorbourg / St.Landelin Mure

(コメント工事中)
[へべ]
 山の中、森の中の寒村(? 木しか見えなかった。夜だったので)に輝く3つのマカロン。美しい。磨き上げた、きめ細かな木目のみごとな、デザインはしかしモダンな細工物…のような印象。店も料理も。
 ガラスの皿に、琥珀色に輝くパッションフルーツのジュレ。なぜ今まで気づかなかった??と問いたくなるような強烈さだった。マダムのかっこよさも印象的。

[AQ!]
 Nを出たタクシーはO,Zの集落を越えるとVosge Nord自然公園の山道を走る。見える物と言えば、路傍の木立のみ、その広がり奥行きは真っ暗闇に沈みこんで何も見えない。暗い暗い森の中。
 田舎のレストランにはそれでもいくらか慣れてはきたものの、ここは凄いロケーションだ。十分ほど暗い山道を走ったタクシーの前に、忽然と光を放つ山荘が現れる。それがこの度、ミシュランに3つ目のマカロンを与えられたレストランだとは。

 ラルンスブール…、正直言って、2002ミシュランで「新3つ星店誕生」として話題になるまでは、聞いたこともない店であった。元々は木こり相手の食堂だったという(ホンマかいな)。そこに現シェフのJGKが入ってから、メキメキと頭角を現すに至ったらしい。
 エルブイに影響を受けたと広言する彼は独特の多皿構成のコースを組み、香草を多用し、自然に回帰しているらしい。まぁ、こんな抜き書きにしてしまうと、所謂「イマドキ」のコンセプトのあまりにも一例になってしまうのだが、それをアルザスの山ん中でやっているってのがちょっとイイじゃないですか。

 2002年末旅行の候補地は二転三転していたのだが、ラルンスブールが取れたらアルザスも面白いね、と傾いた。アルザスにはリルとビュルイーゼルという(今となっては)大古典の2軒があるゆえ(ちなみに02ミシュランで悲しい目に遭ったクロコディルは、年末は営業していない)、新傾向の店が組み込めるとバランスが良いのだ。

 …タクシーは、山荘の前に止った。アルザスらしく、木材をタップリと使った建物だ。辺りには森が広がるばかり…だと思うのだが、ここに至っても、手前の木々が少しばかり照明を受けて見えるだけで、情景の全貌は闇に隠れている。(今度、昼か夏に訪れて見てみたいと思います)

 この地はUMという、集落とも言えない小集落らしい。もっと大きな括りでは、Baerenthalとなる。L'Aは宿泊設備のないレストランで、何処かに宿を取らないといけない。当初はバーレンタールの中心地のホテルを考えたが、そこでもL'Aから4km。バーレンタールはごく小さな村で、「タクシーとかいるんかいな」から始まって、当日翌日の動線の折合いもあまりよくないと判明、L'Aから12kmほどのNで泊ることにした。Nはカジノもある温泉地で、ここいら辺では大きい町(とは言え、田舎の小さ~い町にしか見えないけど)。
 一応、機能は揃っている。(Nには、Hagenauから電車とバス合せて2時間に1本程度出ている)
 N「Grand Hotel」(街で最も立派な、部屋もでかいホテル(ただし、ちょい古)だが、ダブル59E。来年、メルキュールに変わるらしい)のフロントのオバサンが「それでアナタたちは今夜は? カジノ、それともお食事?」と聞いてくるんで、「UMのL'Aっていうさ、レストラン取ってるんだけど、タクシーとか頼める?」と答える。オバサン「L'A!! あそこはと~っても良いレストランよ、それは素晴らしいわねアナタタチ。レストランからの帰りも、タクシーでこのホテルに戻るのでいい? じゃ電話してあげるから」と早速受話器を取る。
 「もしもし、タクシーの**さん? あーら、クリスマスは如何お過ごし? え、お孫さん? お孫さんって幾つなの? … …」…って、いきなり延々と世間話かよ! いやぁ、田舎っていいですね。…。
 ドイツ系とおぼしきタクシーおじさんは、約束の19:20丁度にベンツで現れ、ワシらを山荘に降ろすと、「帰りは20分前くらいにこの番号に電話して。お勘定は後でまとめていただくよ」と去って行く。(後段でチップ入れて60Eくらい)

 山荘玄関は地味だが、入ると穏やかながらキリっと晴れがましい空間。すぐはサロンで、床の一部がガラス貼りになっていて、下階のワインカーヴの様子が覗ける。サルはL字の形の構成。やはりふんだんな木材の質感と量感、ガラス窓をとても大きく取って外への開放感がある(見えるのは暗い黒い森…?)。内装自体は特に凝った物では無いがシャープに作られ、調度や装飾品でアクセントをつけリズムを醸している。ノエルがテーマかな、という装飾だったが、大変に上品かつ美しい。
 関係ないが、客も上品かつ美しめの店だった。さすがにこの場所のせいか、3つ星には珍しく外国人が少ない(…とこの場合、アルザスではドイツ人は外国人にカウントしない(^^;))ようだ。
 葬式帰りかい?…という黒服8人組はさすがに円卓にビッシリと座って肘と肘が触れそう、とへべが興味津々である。
 どう考えても食事の途中、なのに居なくなる卓がある。デセールを別室で…?と考えてもまだ早いし、事情が生じて帰ったか…と思うと、戻ってくる。しばらく謎だったのだが、判明した(と思う)のは、l'Aは「禁煙」なのだ。喫煙はサロンでのみOK。…とすると、退席する彼らは、ヤニタイムということのようだ。喫煙国フランスもすっかり禁煙時代に突入、Parisを見ていると東京と同等か追い抜いてしまったような禁煙度の印象だが、アルザス人はよく吸う(ように見える)。

 アミューズの最初は、熱々のトマトパイ。フランスのフランス料理としては珍しいくらい熱々なのだが、この日は他にも幾つか“熱々モノ”があった。意識的に、提供温度域を広く使っているのかも知れない。アルザス人には猫舌が少ないのかも…
 次に、メートルの皿の上に乗って目前に差し出されるのは、最近流行の“一口スプーン”モノ。この柄無しスプーンは誰の発明なのか。ここしばらくは、新食器・容器の発明と売込みの世界は、賑やかそうだな。パクッ。あ、いい香り。ウトーリ。思わずメートルの顔を見ると、「根セロリに泡、その上のバルサミコにはカフェが入ってます」と説明およびウィンク。
 ここんちのメートルドテルとチーフソムリエは、温和親密でホントに「出来そうな」ヒトでした。フロアの親分は、オーナーであるマダム・クラン。黒いスタイルのズボンはややエスニック調に両足が繋がった形で「闊歩」が迫力ありつつ綺麗。その下にメートル連とソムリエ連。実行部隊は思い切って、ヒジョーに若い子を多用している。オマケにこれが大変な美少女軍団で、ピシっとした制服のよく似合うこと…。制服美少女萌え系のヒトは、アンミラで我慢してないで、アルザスに行かんといかんよ。
 全員が成熟したサービスではないが、中間管理層の指導が良いのか、勘所は押さえてとても気持ちのよいサービスであった。
 アルページュとかヴェイラんとことか、ビュルイーゼルとか、サービスがメロメロヨレヨレの3つ星もあるが、こちらは立派である。
 その美少女によって、細長い黒い木皿に乗った4つのガラス小皿が、卓上に斜めに置かれる。勿論、彼女が発展途上だから斜めに傾いた訳ではなく、斜めに置くことで食べる順番を示唆しているのだ。コースの中では小皿モノに添えるスプーンを皿前に斜めに置く、というような手筋も使われていたので、見た目の面白さも狙っているのだろう。
 一番手前は温かい泡に埋もれたエスカルゴ。細かい泡の下に緑が覗いている所を見ると、パセリのグリーンソース仕立て。ついつい、一口を大事に食べてしまう繊細な美味で、精度の高さを感じる。底に置かれたエスカルゴ本体は冷たく、多分、温度曲線趣向。
 2番目は、アンショワのエスカベッシュとの説明だが、アンショワは揚げでなく、クリュっぽい。上品な酸味が快い。3番目は御所車のようにサンドイッチしたパルメザンの芯らしい。
 一番奥が殻に乗ったユイットルで、かけてあるソースが中国風オリエンタル。香港かバンコックあたりで出て来そうな香り。大変に美味しく、「あ~、コレは、つまりアレが何?」と慌てて口の中を探すも、既に、たった1個の身の上は微笑みながら胃の腑に納まっている。
 フォアグラとビーツ。ジャガイモや大根とフォアグラの相性を考えると、良さそうであるが、ビーツのときに愛想の良過ぎる所が、フォアグラの脂と合ってニヤケ笑いにならないか、少し心配する。ところが食べてみると、陽気な殿様の後ろに控える軍師は厳しく、ノアが両者を引き締めて、優れた一皿を完成させている。
 天上の木組みから大きな窓への磨かれた角度の内装、フロア一同の背筋の伸びたサービス、そしてこのように考えられた料理と、全てが、キリッとしたピシッとした印象を残すレストランである。
(コメント工事中)
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  L'Auberge Bretonne : Jacques Thorel  ローベルジュ・ブルトン : ジャック・トレル
  
2 place Duguesclin 56130 La Roche-Bernard 02 99 90 60 28 (Fax 02 99 90 85 00) www.thorel.fr
ferme le Jeudi toute la journee et le Lundi, le Mardi et le Vendredi pour le dejeuner mais l'hotel reste ouvert
Chef: Jacques Thorel
・
Michelin ○  /GaultMillau 17 (1990)
Michelin ○○ /GaultMillau 18 (2001)
Michelin ○○ /GaultMillau 19 (2004)
Michelin ○  /GaultMillau 17 (2008)

  → 2005ブルターニュ旅行記はこちら

ABRE1 [↓メモ版:工事中]
2005年 5月 ☆☆

 *フィナンシェ
 *コライユクレーム、フォアグラ・ユイルドノワゼットの背の高いコルネ、スリースのパイ、マクロー(!)、アランのキャビアのコルネ、三角ラビオリ、ムール燻製・細かく刻んだコンコンブル
 " Une idee de menu de Printemps "
 *Oursin, Peuce pied, coquillages, etc
 *Leger bouillon d'asperges, Truffe de coquilles Saint Jacques en surprise
 *Turbot en baluchon, Boucane comme a Hoedic
 *Boudin blanc de lapin, Praire et curry
 *Piece d'agneau, Traite a la Marocaine
 *Le grand delice de Solange
  フレーズの軽クレーム、マンゴのババ、バターケーキ、フレーズ・アグリュームのスープ、リュバーブのクレーム、
 +85 Ch.Petit Village

L'Auberge Bretonne (コメント工事中)
[AQ!]
 Carnacの巨石群に圧倒されナンシカの感動に震えたワシらはVannesを抜け、La Roche-Bernardへ向かう。此処もクルリと簡単に一回り出来そうなフランスの小さな田舎町だが、中心部だけは町の機能が凝縮しておりそのロンポワンは混雑している。ジャック・トレルの館は、その繁華部分にデンと構えている。…あ、みつける前に一回、ロンポワンを出る方向を間違えたな、たしか住宅街に入ってしまった。
 車道からちょっと引っ込んだ所に玄関が見えるので、へべに顔を出してきてもらう。間もなくマダム・トレルと連れ立って戻る。スーツケースなどを降ろし、「パーキングはぐるっと回って裏手なのよ、今、案内させるわ」…で若い子を同乗させてそのパーキング…屋根付きの車庫へ車を回す。ホント、中心部だけは「村」でなくて「町」っぽい。
L'Auberge Bretonne
 小ざっぱりクリーンな印象の玄関から右手階段を上がって2階が客室。
「こちらでございます」
 へ~、だだっ広からず狭からずいい感じのシャンブル。窓から望む、屋根・中庭・石塀・ロシュベルナールの家並…がなんとも気分である。Daty(当地出身)の絵がかかっている。「趣味のいい内装ねぇ」とへべ。
 これも趣味のいい湯舟にゆっくり浸かってプハー…などするうちに夕飯タイム。
L'Auberge Bretonne
 1階に降りてサラマンジェは中庭を囲んで口の字の形。雰囲気ええわ~。中庭には野菜! (キャベツ? コールラビ? サボテンも?)が植わっている。
 さて、と。ムニュが「オリジナル」のクレアティフで、カルトが「トラディション」とのこと。カルトの方が本当は本質っぽいかもしれなかったな。「Palmer定食」もやってました。80,82,75…など並べて、オマールとシャロレ牛。
 近隣の卓はみな、ムニュからの組み立てとお見受けする。この日は3,4割の入りかな、空いてた。
 引算型のムニュは初めてみた。ズラーと品書が並ぶ名乗りで、「ここから1品マイナスは幾ら、2品マイナスは幾ら…」って表現。まぁ加算型と結局は同じことではあるのだが、印象は少し変わる。Jacque御本人は全て食べて丁度良いのかなぁ? 節々に「大食漢型シェフ」の目印が転がっている感はある。1皿ポーションはわからないけど、さすがに全部だと多そうだ、とマイナス1で注文。まぁ結果的にはマイナス2でよかったかな。
L'Auberge Bretonne
 ブルターニュは概ねどこもそうだが、サンパ。Solangeもそうだし、ゆっくりと話す。ソムリエールは若い娘。見開きの「今日のムニュに合いそうなワインのリスト」を渡してくれる。それだけでもちょっとしたレストランのワインリストくらいのvolumeがあるのだが、頼めばグランドリストが出てくる。「世界有数」、と誇るリストだ。
 今日は風が強い。いきなりの突風で外扉がバタンと音を立てて開き、セルヴールがびっくりしていた。
L'Auberge Bretonne
 まず現れるはアミューズの巨大船団。初っ端のフィナンシェから大きいが、続く船影もみなデカい。東京の店のランチなら「アントレ」って感じ? そしてクレームもタップリ奢ってあってウメー。ウメくて不安。最初からこれで、長き航路を乗り切れるのだろうか。クレームの存在感(腹減ってる時点だしやたらとウマイ)に溺れる舌の直感はしかし正しくて、まぁ後から思うと、少しずつ齧り残してもよかった(出来ないネ)。

 殻入り雲丹はオーソドックス調かな、一口スープなどお供を従えて。

 トリュフ団子モノ…って、surpriseと言いたくなるのだろうか。帆立を細かく刻んだ団子にオハギのようにトリュフをまぶし、アスパラのレジェなスープを卓上で注ぎ入れる。物凄くタップリ注ぐ。フツーの高級店ならお上品にレードル1杯かな?と目算する所で、ワー! 3杯たっぷりだー、、みたいな。割りと直球の質感なので、なにもスープまで完食しなくてもいいか…とも思うのだが、スープにトリュフが崩れ混じり入り出すと、頃合がずっと良くなり、ついつい食べてしまう(こういうのが失敗)という仕掛け。
L'Auberge Bretonne
 「クレアシオン」でもクレームは多く、スープは好きみたい。
 トゥルボは円筒形に巻いて、スープの海に浮かべた海賊船。

 ラパンの白ブーダンが実に旨い。なんか、肉ならまかせとけっ、て印象。…そ、そして、「ち、注文が違ったかなぁ」と思い知りはじめる。ううー、此処んちは少なくともワシらには、カルトからドゥプラ…だったなあぁ、、
 まぁそれでも完食には届くのだが、舌の持久体力がしょせん日本人、っちゅう、、 とゆーか、トレルおぢさんの本質的な持ち味もカルトのような気がするのだが、、 ごちゃごちゃとクレアティフなムニュ…は、ミシュランの星維持用…だったりして、、

 仔羊は可憐さの残るようなまだ小さい肉質で「ジックリ火の入ったロゼ」とでも言うべきキュイソンはとてもデリケートかつ強い。剛腕ジャック・トレル此処にアリ、って感じだ。ヴィアンドのキュイソンが得意の中心だろうか。

 さて大航海もここまで、後はマダムの名を冠した甘味の宴。デセールもクレームこってり型多皿なのだが、“別腹理論”というのは偉大なものである。オーソドックスだがそんなにボッタクなくて結構でした。

 オツカレサマー…じゃないけど、ヨレヨレとサロンに移って珈琲のおかわり。館の愛犬がお出迎え。動いて、場所が変わって気分が変わるとリフレッシュするもので、火照りもずいぶんさめる。如何にもサロンっちゅうサロンで、沈み込む座り心地を尻で楽しんでうわ言を発する。ディジェスティフももらったっけ?、忘れてもうた。堪能&退散。素敵なベッドが待つ。
(コメント工事中)

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  Auberge de L'Ill  オーベルジュ・ド・リル
  
2, rue de Collonges au Mont d'Or 68970 ILHAEUSERN 03 89 71 89 00 (Fax 03 89 71 82 83) www.auberge-de-l-ill.com
ferme vacances de fev., lundi et mardi
depuis1878 Chef: ~ Paul Haeberlin (1923-2008) ~ Marc Haeberlin (1954-) サービス: Jean-Pierre Haeberlin (1926-) ソムリエ: Serge Dubs
・
ミシュランでは、1952年に1つ星、1957年に2つ星、1967年に3つ星(アルザス地方で初)を得ている。GaultMillauでは、1990年にCuisinier de l'anneeに選ばれた。
Michelin ○○○/GaultMillau 19.5 (1990)
Michelin ○○○/GaultMillau 17 (2001)
Michelin ○○○/GaultMillau 17 (2002)
Michelin ○○○/GaultMillau 17 (2004)
Michelin ○○○/GaultMillau 17 (2005)
Michelin ○○○/GaultMillau Icone (2008)

併設するホテル部門はL'Hotel des Bergesと称する。実は、長いことオーベルジュを名乗りながら宿泊部門は持っていなかったのだが、1992年にこの素晴らしいホテルが完成した。

  → 2002アルザス旅行記はこちら

 ポールエーベルラン老、逝去。合掌。
 あの超絶のセル・ド・フォアグラの秘密はマルクに受け継がれた模様、そうであってくれ(^^;)。 (2008)

LILL1 [↓メモ版:工事中]
2002年12月 ☆☆

 *ソモンとモヤシ
 *グジェール、テュイル
 *La terrine de foie gras truffee
 *Le Mousseline de Grenouille "Paul Haeberlin"
 *Filet de Sandre Poele nage ecrevisses
 *Le Lievre a la Royale "Paul Haeberlin"
 *La Peche Haeberlin
 *La gelee d'agrumes au pain d'epices, glace a la biere ambree
 +90 Riesling Clos St. Hune / Trimbach

■序____________________
[へべ]
 窓辺の上席に案内された。" Belle Table でしょ "と一言、そこにいるだけで千両役者のJean-Pierre(だっけ?)に脱帽。トリュフが妖しくとけこんだ絶品のフォアグラに、そして夢のように美味しい桃のデセールにも脱帽、のリルの夜。しっとりと雨に湿った風景。

■Ilhaeusern____________________
[AQ!]
 ストラスブール駅前のホテルに、どんよりとした朝が来る。

 前夜。
 21時過ぎ着のSNCFで初めてのアルザス入りを果たす。駅前すぐのメルキュールを取ったのは正解であったようだ。スーツケースをごろちゃら転がしてチェックイン。
LILL2  「靴の中敷に入れる唐辛子が必要よ」と脅されていたアルザスの厳冬であるが、着いてみると、軽く肩透かしなくらいラクな気温である。霧雨が、雪にもならず、そぼ降っていた。(実際、2002年12月末、フランスは全土的に暖冬であった。それが年が明けて2003年になるや、いきなり気温は10度くらい低下し「大雪によるCDGの空港閉鎖」騒ぎまで起きた)
 駅前なるホテルは、地方らしい部屋の広さに防犯目配りもあって、まずまず結構である。お昼はパリ「レゼリゼ」でしこたま食ってきたワシらも、そろそろ腹が減ってくる頃合で、賑やかな灯りを求めてよろばい出る。
 何か軽く気楽に食いたい気分に目立つのはトルコ料理店の多さだ。さすがはドイツ国境の町…? (サッカー界を展望すればすぐわかるように、ドイツはトルコ移民が非常に多い)
 そんな中の一軒で、これはメゼかあれはケバブか…といただいて、満腹・爆睡。

 ストラスブールまで来ていれば、オーベルジュ・ド・リルのあるイロイゼルンはもう目と鼻の先。ゆっくりの朝を、駅に向かう。今日は祝日だが、それでもストラスブール・コルマール間はSNCFの本数が多い。
 イロイゼルンは、ストラスブールとコルマールのちょうど中間くらいに位置する小村である。大体のとこ、アルザスのレストラン巡りも他の地方と似て、本来はレンタカーで回るのが一番簡便なのであろう。しかし「雪が降って当然」の今の季節となると、ちょっとばかし旅人はビビるのである。東京のリビエラと呼ばれる(嘘)南部大田区出身者としては、なおさら雪が恐いのです。 (いや、つまり、チェーン装着慣れしてる人なら何でもないんでしょうが…)
 今回は
「まぁSNCFでなるべく接近しといてタクシーですかね…」
と考える。
(のですが、フツーに金持ちのヒトは、ストラスブールからタクシー直行、で全然問題ありませぬ、念の為(^^;))
 そうは言っても、フランスの田舎というのは馬鹿みたいに寂しいものであるから、あまりに小さい駅を目指すのは不安である。地図を眺めると、「Selestat」という町が、ストラスブール・コルマール間では一番大きく、かつまたイロイゼルンに近い。
 よし、そこに降り立ってみることにしよう。
 で、…降り立つ。
LILL3  シーン。
 ヒューっ。ピューっ。風が泣いてるぜゴゴゴ。
 …これだから、フランスの田舎っつう奴は…。
 静まり返った駅。外に出てみても駅前には何も無く、人の影もクルマの影も無い。
 ┐(´-`)┌
 これは、どうしたらよいかどうか。見回すと公衆電話ボックスがあるので、電話帳に泣きついてみようとする。すると、ボックスのガラスに、ちぎれかけたカードが一枚貼り付いているのが目に入る。見ると「Taxi...」と読める。
「やったね、ラッチョイ」…と、何とか解読できたその番号をダイアルする。

 まぁそんな風にして「何とかはなる」訳だ。
 Selestatの名誉の為に(?)言っておけば、これはそれでも“祝日”ゆえの災難である。実際、翌日(=平日)にこの駅に来てみれば、駅員と乗客でそこそこは賑やかな駅なのである。フランスの日曜・祝日というのは、人があまり出歩かないことと、駅員がお休みの駅が多いことで、「日本人観光客にとってはガーン!」な状況に往々にしてなるのでありました…。

 さて、クリスマスにも働く勤労taxiニーチャン(身なりもクルマも裕福そう。アルザスってそんな人が多いけど)に、「ILHAEUSERNオーベルジュドリルっつー旅籠があると思うんすけど」と告げる。
「OK,イロイゼルン!」と趣味のいいセーターの彼氏は車を飛ばす。アルザスの固有名詞は難読で、“ILHAEUSERN”もおっかなビックリの発音だったのだが、ニーチャンの返答をヒアリングすると、ほぼ片仮名読み「イロイゼルン」…で大丈夫、って印象であった。
LILL4
 イロイゼルンは、イル川の流れる小村。イル=I.l.l…って綴りゆえ、「Ill川」。…、字面を見てると、何だか変だ。縦線だらけだ。定冠詞つくと「l'Ill」だしな~。人間のDNAには「流れる川は縦線」って書いてあるのけ?(^^;)
 …って話はおいとくとして、ホントに小さい村である。小さいのではあるが、オーベルジュ・ド・リルは、その集落のほぼ中心に位置するので、回りが田圃だ畑だ草原だ牛だ馬だ…、という訳では、ない。一応、民家や商店や公共施設がある。しかし集落の真ん中の癖して、
イル川は静かに満々と流れ・植木は手入れされ・余裕ある敷地に瀟洒な建物が佇み・“この世の極楽”のような顔をして、
世界中からの客を待ち受けている…。のである。

 イル川の橋を渡ってレストラン棟の前に着いたタクシーを降りる。見回すと、ホテル棟はその横の路地を入った所のようだ。レストランの隣は教会で、屋根に“アルザスのお約束”=コウノトリの巣、が作られている。「いやぁさすがアルザスだね~」と言いながら、振り向いてレストラン棟の裏手を見てみると…アレマ!
 そこは、“シェフの部屋”だろうか、小部屋になっていて大きな見晴らし窓がピカリと光っている。中2階って感じの少し高い階層で、総ガラス張りだ。その窓際に置かれたソファに対面で座ってにこやかに話し込んでいる二人の男は…、ありゃま! 「ポールマルク」じゃ、あ~りませんか! にこやかに微笑みながら語り合う親子。
 いやぁ、これは“いい絵”だったなぁ。二人ともコックコート。デジュネの戦いを終えたところだろうか。…「ああ、写真を撮っとけばヨカッタ」と後でつくづく思った光景であった。

 空はドンヨリと重いが、そこはそれ、かえって「冬のアルザスっぽくて」いいかなとも思う。
 オテル・ド・ベルジュにチェックイン。3つ星レストランの併設オテルらしく豪華に整えられているが、サンパなスタッフに迎えられて親しみやすい印象を受ける。サンパ、それも何処となく“家族経営的”な肌触りは、「フランスでも有数の“家族の絆”をもって営むエーベルラン家」…という事前思い込みがもたらす部分もあろうが、とても快い。部屋のテラスから乗りだすと、すぐ下にイル川が流れる。たっぷりとした流量は、意外に流速もある。かなり居心地のイイ部屋で、二人とも気に入る。2,3つ星レストラン併設オーベルジュの中でも、好きな方に数えられるだろう。

 何もないイロイゼルンの町を、何もないのを確認しようと散歩。何もない。帰館。入浴。実にバスタブも気持ちいい。パフー。

[へべ]
 タクシーの運転手は確かにこう言った。
「“イロイゼルン”のオーベルジュドリルですかい?」
 アルザスはさすがに、フランスといってもドイツとの境目のはじっこなんだと実感。町のレストランのメニューはドイツ語併記だし、地名はやたらドイツ調。オーベルジュドリルの相客もドイツ語卓がけっこうあったし。
 というわけで、やって来たオーベルジ・ド・リルであります。
 リル川の流れと枝垂れる柳を背景にポワロの緑が美しいあの「ベッカオッファ」や干し草にのったウナギのロースト…数々の印象的な料理写真を眺めつつも、いくらなんでもアルザスまで来ることもあるまいと心のどこかで思っていた、そのリルへ。来ちゃいました。
 併設ホテル「ベルジェ」の受付嬢に「ジュワイヨ・ノエル!」と歓迎され、2号室「Perfecto」へチェックイン。

リル
■Auberge de L'Ill____________________
[へべ]
 サルに足を踏み入れた途端、二人して鼻をピクピクさせる。季節の恵み、トリュフの香りが妖しくもふんぷんと漂うサル、というのは初めての経験でした。灰の中でトリュフを丸焼き、という極悪な料理があるようなので、昼のそれの残り香だったのかも。柳の揺れる川辺のオーベルジュが、夢みたそのままにここにある幸せ…。
 やはり特筆すべきはフォアグラのテリーヌ。壺からたっぷりとすくい取って盛り付けてくれた、そのなめらかな舌触り、馥郁とした香りと酸味にうっとり。そして桃のエーベルラン風に絶句。どうしてこんなに美味しいのか。定番名料理は予想以上に魅力的でした。アルザス万歳。

[AQ!]
 ホテル棟とレストラン棟は、リル川沿いに100mほど離れて建つ。両棟の間は、手入れされた公園の遊歩道…といった趣き。美食への期待を胸に秘めたガストン達のレストランへのアプローチとして、これほど素敵なそぞろ歩きはない。更に言えば、満腹を抱えた帰り道は、「消化のため」…と言わずとも、少しばかり歩きたいもの、それにも気持ちよい。まぁ、モノのわかった作りである。
LILL5
 20時を回ったところ。庭側の入り口からボンスワ。通りに面した正面玄関より幾分“裏口”っぽくはある。
 どうもアルザスは、パリに比べて食事の開始時間が早いようなのだが、此処でも既にかなりの数の卓がいい塩梅に“温まって”いる。
 「ほぉ~っ」と溜息をつくワシらに気付かれもせずいつの間にか現れるJean-Pierreにいつの間にか案内され、漂うトリュフの霞をかき分けて(笑)着席。微笑は千金のJean-Pierreのサービスは、トロワグロのメートル以来の至芸ですだ(カンケーないけど、別の意味でのサービス至芸はシャペルとピックのメートル…名門というのはサスガなものである)。目の前に揺れる柳。イル川寄りで、景色優先型の結構な上席をくれた感じ。
リル
 さて、此処んちのカルトの特徴は「新・旧」入り交じった品書きであることで、歴史の長さを反映している。アレやコレや検討するも、「旧」をやや多め、くらいの注文になった。

 アミューズを待ちながら「どうせ来るでしょ電話帳カルトドヴァン」…などワクテカしていると、背後から何やら随分わかりやすい言語が聞こえる。「いらっしゃいませ」とか言ってる(^^;)。フト見ると、日本人ソムリエじゃあ~りませんか。
 聞けばこのソムリエO君もリルには来たばっかりらしい。というか、普段はパリのビストロ・デュ・ソムリエにお勤めだそうで、今はそちらが冬休みで、リルを覗きがてら仕事に来たそうだ。何たってリルのソムリエはセルジュ・デュブ(Serge DUBSは、1989年世界最優秀ソムリエで2004年にフランスソムリエ連盟の会長に就任)だもんね。
リル
 折角の日本語会話だ、何が出てくるものやらワイン選びはお任せで…ともチラと思ったのだが、今日は「リストに手応えあればクロサンチューン」とほぼ決めて来たのだ。「アルザスに来たからにはね」のこの酒、こーゆーものは「まだ日にちがある」とか言って頼み渋ってると機会を逃したりしがちなものである。最初からビシーッと行ってしまおうという腹。
「今日はClos St. Hune行こうと思ってるス」と告げる。ただ、さすがはリルで、ヴィンテージはやたらと揃っている訳で、そこは
「どーかにー?」
 と下駄を預ける。
90…、じゃないスカ?
「Oh,Yeah!!」
 落とし所や良し、とお互いホッとして、雑談。
LILL6
「アルザスどうよ? ドイツ臭いね、さすがに」
なんて水を向けると
それが、やっぱ、言葉が全然わかんなくて焦りまくりですよ。方言なんですかね。でも、やっぱりソムリエで一人、トゥールから来たばかりの奴がいるんですよ。で、そいつに『こいつら何言ってるの?』と聞いたんですけど『いやぁ俺もわからんのだわ』だって
…で爆笑。
リル
 などあって、テケトーにアミューズ(大したことない)を摘んで、お題はフォアグラへ。前述した通りの、狂気のフォアグラ。今はどうか知らんが、パパ・ポールが、誰にも見せも教えもせず、ひたすら仕込むという伝説の一品。
 食えば気絶しそうに妖艶で…とか何とか書きたいのだけど、ハッキリ言って、食い終わってしまってから我にかえる一品。ハッキリ言って、よくわからん。
 アントレのもう一つは、これもパパの名品の蛙のムースリーヌ。だけど、こちらは冷静な出来。美味しいんだけど、ジックリ“探しながら”舌にまつわせて行くと、「まぁこんなんかな」って感もアリ。…か。
 流行の逆麦藁帽子型の皿で供される(プラとしてはややチンマリ見え過ぎるキライあり)サンドルのポワレは、しっかりと焼かれしっかりと味するが、凡庸…ということはないが、まぁ凡庸(なんのこっちゃ)
 野兎ロワイヤルの出来は、あんまし感心せんなぁ…。監視の目の甘そうな煮込み具合に、仕上げフランベの残りか何かなのか、妙にキツいアルコール香が邪魔。

*****

 朝食のシャルキュトリーの充実♪
リル
[↑メモ版:工事中]
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  Auberge du Cheval Blanc  オーベルジュ・デュ・シュヴァル・ブラン
  
4 rue de Wissembourg 67510 LEMBACH 03 88 94 41 86 (Fax 03 88 94 20 74)
ferme vacance d'ete, vacance de fev., lundi et mardi
Chef: ~ Fernand Mischler
・
Michelin ○○/GaultMillau 15 (1990)
Michelin ○○/GaultMillau 16 (2001)
Michelin ○○/GaultMillau 16 (2002)
Michelin ○ /GaultMillau 16 (2008)

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[↓メモ版:工事中]
2002年12月 ☆☆

 *Salade tiede de langoustines et St Jacques a l'endive, creme de cepes
  ・ラングスティーヌのフリット、ライム添え
  ・ラングスティーヌのポワレ、胡桃のヴィネグレット、アンディーヴ煮添え
  ・ラングスティーヌの青葉巻き(上に似ている)
  ・帆立のポワレと春菊みたいな葉っぱのサラダ、茸いろいろ
  ・ラングスティーヌのブイヨン、ストローでどうぞ
 *Presskopf de poissons d'eau douce
 *Caille en croute de noix et roule de potiron
 *Declinaison de faisan facon "Cheval Blanc"
 *Chiboust au Kirsch et aux griottines, son sorbet
 *Poire au caramel de girofle
 +90 Pommard Grand Epenots / Gaunoux

ACBL1 [↓メモ版:工事中]
[へべ]
 「Lembachまでよろしこ」。Taxiで目指すはミシュラン2マカロンの白馬荘ことAuberge du Cheval Blanc。Niederbronの運ちゃんも「ああ、あそこね合点だ」と車を乗り入れ、すんなり到着。小さな階段を上がりドアを開けてBonjour!
 …と、どうやらこちらはレストランの、しかも駐車場に出る裏口だった模様。スーツケースをよっこらしょと抱えて入ったAQ!はなんと、Micheler家の当主にしてシェフ、Fernand氏とおぼしきコックコートの主とご対面。いや、ホテルは一度出てあっちへぐるっと回ってねスマソいやはや、的やりとりを経て、今度は正しくホテル入り口へ。
 ようこそやぁやぁと、招じ入れられた部屋は1階のCitronelle(30数m2)←宿の案内ファイルに各室面積をまじえた紹介あり。隣のサフランはなんと55m2!と破格の広さらしい。

 さて、このChambreが素晴らしい。アルザスらしく家具や内装に落ち着いた色の木、壁は白い漆喰(だったかな)、それらによく合うオレンジ系のカーペットやカーテン、座ってよし寝てよしの素敵なソファ。ベッドサイドのランプやフロアスタンド、カーテン止めなども黒い鋳鉄のちょっといい感じのデザインで、壁にはこれまたぼくたち好みの、目に心地くもかっこいい抽象画がかかっている。「"chefのアート趣味"ってレジス(マルコン)さんのとこもそうだし、ジル(グジョン)もそうだったけど、なにか職業パーソナリティ的なものがあるのかなぁ?」などとたわごとを言いつつ、まずはウェルカムドリンクのmuscat d'Alsaceを楽しむのでした。このいい宿に早めに着いてのんびりくつろぐ至福のひとときって、好きだなぁ。
 Dinerの身支度のお供は連日、フランスのみのもんたがお届けする「Qui veux gagner des million?」。クイズの問いと答えの選択肢が文字で表示されるので、耳だけだとハテナ?だらけの当家でもクイズ参加の楽しみがあったりして(でも多くの設問はかなりカンタンらしい…"猫という動物は…1.しっぽ5本 2.頭3つ 3.4本足"…みたいな)。

 いよいよDiner。レストラン棟のサルに足を踏み入れてみると、かなりの卓がすでに埋まっている。20:00よりは前だったと思うので、やはり噂にたがわずアルザスの夜は(スタートが)早めということかも。威風堂々としたサルのしつらえにまず驚嘆。高い天井の中央は、太く重そうな梁と重厚な格子天井風の造りになっている。つややかな材がふんだんに使われ、年代物らしき色ガラスの窓も風格を感じさせる。さらにぼくらを圧倒したのが、客席のこれまた堂々とした人々。ドイツ系の?恰幅よく身なりもりゅうとしたメッシューダムがそこかしこにどっしりと構える様は、まさに地方の(それも国境の)一流オーベルジュ、といったところかしらん。

 カルトは既にサイトと部屋の資料で予習済み。変更点などさらっとチェックし、筋書き通りのオーダーを。
 セルヴィスも実に手厚い布陣で、特にえらい方の灰色ジャケット軍団は"誰が何のエライ人かあててみようゲーム"が出来そうなくらい。ところでアルザスは、ここもそうだったけれど、サラにあまりchefが出てこないようだ。「まぁ、Parisはもちろん、地方でも、マルク・"俺様がスターだぜ"・ヴェイラや売り出し中のアンヌ・ゾフィー(・ピック)とかレジスさんが"よろしく~"と出て来るなぞを別にすれば、chefは出て来ない方が主流のようだしね」とAQ!。サービスは店の雰囲気&土地柄にふさわしく、きちんとして冷静な感じ、かな。
ACBL2  特筆すべきはサル中央部を占める4卓の意表を突く配置。サル中央に、小島のようにこの4卓が置かれている。案内されてワシら思わず「ナ、ナニー?! @☆**※」(心の中で)状態に。コンパクトなオフィスのデスク配置を思わせる、このドギマギするほどの隣卓の近さ。

[AQ!]
 今日はLembachの白馬荘へ行く。Lembach?…この仏風発音が怪しい独風の名を持つ小さな町は、フランスのイカリ肩の右肩の先っちょも先っちょ、どっちにどう走っても独領にこぼれそうな位置にある。右上一番端っこの2つ星だろう。
 鉄道はなくバスも不明だがtaxiでNBから30euro、Hagneauから40euro程度。
 白馬荘は街道沿いに代々続く旅籠で、日本人的には“集落”という方がふさわしいような小さい町の中心部にデンと構える。
 websiteの写真を見るに、典型的なアルザスの田舎のレストランで、全般的にクラシックな気配アリということで、本日はとてもノンビリと気楽で大どかな気分の移動である。逆にやはり“先鋭的”と聞く店を訪ねる時には「期待と不安」で緊張しているのだな。白馬荘に向かう気分は良い意味で「なめている」ソレで、しかしホントの田舎心地と言えるか。
 Lembach近くに来てから、Taxiの運転手のオッサンは「レンバッハの何処に行くのかの?」と聞いてくる。「白馬荘ってんだけどさ」と答えると、「お~、そうかいそうかい!」と陽気にクルマを進める。さすがにこの辺りではユーメー店のようだ。
[↑メモ版:工事中]
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  Aux Pesked オー・ペスケ
  
59 rue du Legue 22000 Saint Brieuc 02 96 33 34 65 (Fax 02 96 33 65 38) www.auxpesked.com
ferme samedi midi et dimanche soir
Chef: Jean Marie Baudic ~ Mathieu Aumont サービス:Sophie Aumont
・
 ガニェールのスー・シェフを4年、エレーヌ・ダローズのスー・シェフを2年勤めたボーディックは、Gault Millauの「Grands de demain 2004」に選ばれた、いま注目の若手。陽気で、すげぇ感じの良いヤツだ。 (2005)

Michelin ○  /GaultMillau 16 (2004)

  → 2005ブルターニュ旅行記はこちら

 Aux PeskedからシェフJean Marie Baudic ジャン・マリ・ボーディックが離脱した模様です。自分のオーナー店の開店準備とかでしょうかねぇ? (2006)

 Jean Marie Baudic 自らの新店は「Youpala Bistrot」。サイトを見る限り、「そ~キタかぁ!」って感じの店ですね。 (2006)

APES1 [↓メモ版:工事中]
2005年 5月 ☆☆

 [Degustation Mets & Vin]
 *ソモン・ミキュイ、蛤大根、牡蠣生ハム、トマトコンフィ、パンプルムース・サルディン楊枝
 *ラングスティーヌのサラダ仕立て コキヤージュ(浅利・ビゴルノーのオーブン焼)・ロケット
 *サンピエールのポワレ ビゴルノーのせ、白・緑アスパラ、ツルムラサキ(の酸っぱいヤツ)、サラミ、サフランの泡
 *ピジョノーのロティ ポムドテール、エシャロット・コンフィ、若豆苗、プチポワの皮揚げ
 *フロマージュブランとコンコンブル、ブリーにカイエンと泡、葉っぱ添え
 *クレームレジェのアヴァンデセール
 *黒い森の再構成
 *フレーズ尽し

[↓メモ版:工事中]
[AQ!]
 全卓、フロマージュ・キュイジネ
 Pierre Gagnaireのスーシェフ4年のJean Marie Baudicの、現代的な、取り合わせにも面白みのある…料理だが、むしろ我々の“予想”に対しては、「オーソドックス」で王道、古典的色彩もある…そんな点が印象に残った。味も「しっかりとした」物で、強過ぎたり濃かったりはしないが、堂々として揺るぎのない感じ。これがJMBの個人的資質、乃至は好み、なのかな。とても美味しい。

 渓谷を見渡す絶景の好位置、の店。Saint Brieucは変な街で、銀座から15分歩くと等々力渓谷…もとい、秋川渓谷に至る。とにかく、サントルヴィーユからア・ピエで辿り着ける場所なのに、凄い大自然展望である。
 Pesked(ブルトン語:poisson)だらけの店内は、とてもクールでアートっぽく、明るくて居心地よい。この日はほぼ全席が地元っぽいが、アート職業くさい客やそうでなくても“かっこいい”服で来店する客たちが、雰囲気を作っている。
 チャールズ皇太子っぽいマシューとソフィーが、チャッチャッスチャッとフロアを闊歩。ソムリエが、なかなかサンパな奴だ、とワシらに好評。こいつは笑顔が沢山。
Aux Pesked
 サンパと言えば、Jean Marie Baudic。
「アリガトウ」
「ドウイタシマシテ」
 …は日本人スタジエから習ったか。すんごく「気のいい若者」調の喋り。
「何でウチなんかのこと知ったの?」
 って言うから、
「アンテルネのサイトあるじゃん」
 とへべが言った後、ワシが
「チミチミ、ゴーミヨのグランドマンじゃねーかよチミ」
 と突っ込むと、
「ワオワオワオ~!そうなんだよ~」
 と喜んでおりました。
「バカンス? ブルターニュの食べ歩き?」
 に
「そーそー。ロリエンにロシュベルナール、カンカルにノント…」
 と答えると、ここでも「ブルターニュ・レストラン」本が出てきた。
「フォフォ、チミは何処に載っとるのかね?」
 と頁を開かせた所でサインしてもらう。

 それにしても気持ち良く感じ良く、アミみたいなJMBだ。言葉を換えると、未だスーシェフ根性が抜け切っていない、と言えるくらい(^^;)。
 これも日本人コミから習ったらしい
「来店ありがとう」
と記したミニャルディーズ皿は笑った。
AP
 ラング・貝の皿は、オーソドックスの傑作で、ヒネったソースなどでないのに、まったく口が飽きず、貝のミネラルetc.がとてもキレイ。ラングのキュイソンも良い。ロケットが強烈に強いモノで、ロケットで統率が効く。
 鳩はOlivier Roellingerの鳩を蹴散らした(^^;)。
[↑メモ版:工事中]
Aux Pesked Aux Pesked Aux Pesked Aux Pesked
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   Le Bec Au Cauchois  ル・ベック・オ・コショワ
  
22 rue Andre Fiquet, 76540 Valmont 02 35 29 77 56 www.lebecaucauchois.com
Chef: Pierre Caillet
・
 ノルマンディーの田舎マルダシの素晴らしく長閑なロケーションに構える愛らしいオーベルジュ。宿泊も可愛い。

  → 2010北仏旅行記はこちら

 Pierre Cailletシェフは、2011年にMOFを獲得。

2010年 8月  ☆

 [La Calville]
 *Cubisme de Foie Gras confit aux Pommes, Gelee au Pommeau et Failue toastee
 *Aspic de Tourteau aux Germes de Tournesol, Gelee de Concombre et Jaune d'oeuf confit
 *Mousseaux et Craquant de Haddock, Spagetti de Tomate a l'Hysope
 *Filet de Rouget Barbet juste poele, Risotto Carnaroli aux Asperges vertes et Beignet de Consoude
 *Mignon de Veau au Melilot, Cremeux de Groseille au jus reduit, Haricots beurre aux Tomates confites et Origan sauvage
 *Les Trois "C" (Cerise, Chocolat, Coquelicot)
 *La Framboise : facon "Tarte au Citron Meringuee" (Creme Citron Basilic, Tuile Meringue Praline rose)
 +CNDP

[↓メモ版:工事中]
[AQ!]
 Veauはなかなかケッコウ!
Bec Bec Bec
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   Le Bout du Monde  ル・ブ・デュ・モンド
  
BERTHENAY 37510 02 47 43 51 50
depuis2005 Chef: Keizo Sugimoto ~  サービス:Jacques Praud, Christophe Roublin
・
  → 2005フランス旅行記はこちら

 敬三さんのサイトにある通り、諸般の事情によって杉本敬三シェフは、11月に辞任されたそうです。たいへん残念ですが、ゆっくり休み、次の目標に向かわれることを期待します。 (2005)

 杉本シェフの新しい勤め先ですが、St.Junien(リモージュ近郊)の「ローリーヴァン:Lauryvan」とのこと。 (2006)

 敬三さんのサイトによると、「ローリーヴァン:Lauryvan」を辞任されるそです。また次が楽しみですね。 (2007)

 敬三さんのサイトによると、今度はアルザスはリクヴィール「Auberge du Schoenenbourg」に着任だそうです。ワクワク。「ジャン・リュック・ブランデルのいる町じゃないですか」と言ったら、「刺激されます」とのこと。一つの町に期待できるレストランが複数あるのは、色々とヨイ!と思います。行きて~(^^;)。 (2007)

 敬三さんのブログによると、2012春に東京・新橋で自店のオープンが決まったようです。

LBDM1 [↓メモ版:工事中]

2005年 5月 ☆☆

110.6euro定食40euro
ジェリーヌコンソメ、プティポワ2度剥き、紫蘇
エクルヴィス、クレーム、トマトコンフィ、ジュエリンヌ
アンギュイユ、ナヴェ、エピナール、パセリソース
リ・ド・コション、フォアグラ、白・緑・アスパラ
モリーユ、タン刺
フレーズ・ショーフロワ、
ショコラ(キャラメル)
 +VdT Francais Cuvee Kuniko
 +03 chardonnay cuvee du bout du monde
 +02 Touraine Clos de la Plante Mart

Keizo
[AQ!]
 黒鶏のコンソメ。甘皮まで剥いたポワ。エクルヴィスのジュは、とてもエグ味が出易いので、要するに「ず~~っと」味見をしながら詰めて行く、と言う。

 8歳で職人を目指し、15歳でフレンチ(パティシエ)を選ぶ。高校でサッカーの芽が出たと思ったら不整脈でアウト。美木さんジャンムーランで、ガーン!、と。国立辻調。24歳からしか入れない斉須さんとこに10代で(前線は触らせてもらえない)。谷さんとこでは最前線。

 現在、取締役。ベトナム女性コミ(デセールは少々)。仏人コミの“使える奴”がバイク事故で数カ月待ち、早く来いよ。2人きりで死にそうだが、前店より精度は良い。前店だと、ルセットを勝手に変える奴、切り方が正しく無い奴、、、みんなストレス。

 肉3軒、野菜2軒、魚4軒。休日は朝から生産者・業者回り。バルデんとこと一緒の魚を安くもらえたり。今日のレギュムは、ホントにこの近辺のもの。アスパラはリシュリューの、朝のトレトレ。プチポワは、ラ・ロシェルの方から。

 兄君は、ビザの都合で愛知万博マルタン。も一人もビザ待ち。こっちに来たらサイトの手入れと送り迎えサービスができるのに。
Keizo
 ワイン・ブドモンドは、ソムリエの親戚筋…だっけか、が、シノンの方で作るシャルドネでブルゴーニュスタイル。シャブリっぽいかなぁ。

 アミューズ2品はとても透明・綺麗で、仕事の丁寧さが現れている。

 鰻はロワール天然。触感・味・香り、ともに抜群。日本にこれだけの鰻、いるかなぁ。環境の問題もあるし、日本は取り過ぎ・食い過ぎ。こちらでも、こんな鰻は稀少品であるらしい。一般の魚のようにポワレして軽いクレームソースで食べる方法も良い。蒲焼にしちゃうと、どうしても醤油でディテールが塗り潰れちゃうし。

 リドコションは、リダニョー同様、ち~っちゃい部位。火入れに繊細さが要求されるようだ。食感的にフォアグラと対比され、艶っぽい。よく煮含まったモリーユと、自然の甘みの豊かなアスパラとのコントラストも良い。
Keizo
 ソムリエ、白の一杯目は「何でしょう? 答は後で」

 テラス整備中。ファサード関係も。
 「丈の高くなるサトウキビを植えて…」とのこと。内装に、元呉服屋パワーを発揮していきたい、とも。
 2階がバー。瓶詰・缶詰・珈琲豆・エピスなど、色々販売。
Keizo
 客は毎日がフル回転、リピーターが多いという。「バリエとバルデをかわりばんこに行ってたんじゃがね、此処とバルデのローテーションに換えたよ」と言うオヤヂ。

 各批評系は既に来訪と言う。ミシュランは事後に挨拶。ゴーミヨは「行くよ」と言って来て、タダ飯らしい。
「ゴーミヨは、ピャピャッと立体的に盛って、泡、かけとけばOK。ミシュランはもうちょっと地に足のついた感じで、やっぱ便所がどうとか…が五月蝿い」
 って。
 此処は、ジャックとクリストフもすごく良いから、☆/16…ぐらいで2006をスタートできるのでは?

[↑メモ版:工事中]
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  Buerehiesel  ビュルイーゼル
  
4, parc de l'Orangerie 67000 STRASBOURG 03 88 45 56 65 (Fax 03 88 61 32 00) www.buerehiesel.com
ferme vacances d'ete, nouvelle an.,mardi et mercredi
Chef: Antoine Westermann (1946-) ~ Eric Westermann
・ アントワーヌ・ヴェスタマン料理長、引退か? (2007)
Michelin ○○/GaultMillau 18 (1990)
Michelin ○○○/GaultMillau 19 (2001)
Michelin ○○○/GaultMillau 19 (2002)

  → 2002アルザス旅行記はこちら

 シェフパトロンAntoine Westermann氏が引退、息子に跡を継ぎ、ギドミシュランの三ツ星は返上するのではないか、という噂です。 (2007)

BUER1 [↓メモ版:工事中]
2002年12月 ☆

 *殻に載せた帆立マリネ、イワシのマリネ・トマト添え、香草カネロニ
 *Filet de Brochet aux aromates, Poireaux vinaigrette et oeuf poche
 *Schniederspaetle et cuisses de Grenouille poelees, au Cerfeuil
 *仔鳩のロティ、キャベツとジャガイモ
 *チョコムース、パイナップル、エピスの効いたフルーツのコンポート、バニラクレーム
 +87 Cote-Rotie la Landonne / Guigal

Buerehiesel Buerehiesel Buerehiesel Buerehiesel Buerehiesel Buerehiesel Buerehiesel Buerehiesel
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   La Grenouiller  ラ・グルヌイエール
  
La Madeleine-sous-Montreuil 03 21 06 07 22 www.lagrenouillere.fr
Chef: Alexandre Gauthier
・
  → 2010北仏旅行記はこちら

 下記2010年訪問時に既に着手していた「新館建設」は2011年に完成。そのクールモダンなお姿は、www.lagrenouillere.frを参照あれ。

2010年 8月 ☆☆

 [Ete 2010]
 *Tasse d'eau de mer
 *Concombre, fraises vertes, basilic
 *Petits pois...
 *Courgette, huitre grillee...
 *Bouquet-consoude, anchois
 *Saint Pierre, haricots beurre
 *Homard Genievre
 *...ferre, mauvaises herbes
 *Fraises confiturees
 *Abricots oxydation
 *Bulle d'oseille
 +05 Irouleguy


[へべ]
 昼ごろ、モントルイユ(sur mer)に着。
 雨やどりを兼ねて軽く昼食。

[AQ!]
 Montreuilは、来訪者の目的は知らんが、ちょびっとだけ観光地。
たまに大雨(^^;)。
 今日のシャンブルドット「2bis」を探す。なかなかみつからない。

 2bisは、ほとんど隠れ家。表には小さな看板一つ、入口は横の路地入ってのドア一枚だがこれも殺風景の極致。
 インタホン。
 誰も出ない。
 まだ早いしな、と昼食。広場に面したカフェでクロックムッシュとオムレツ。
 それから戻っても、まだ、無応答。電話しても留守電。
「まだ早いしな。ま、いっか、グルヌイエールを見に行こう」

[へべ]
 表から1本うらの通りで今宵の宿、2bis発見!
 呼鈴鳴らしたが人は出て来ず、電話も留守電。
 ヒマなのでグルヌイエール(レストラン・オーベルジュ)を見に行く。(今晩のレストランは予約済だが客室は満室だった)

[AQ!]
 “2bisから車2分”となっているが、5分くらいか。
 一応、「隣村」になる、Madelaine sous Montreuilの雰囲気ある一帯で、店の前は小道を挟んで小川が流れる。また、辺り一帯に溝やら湿地が点々としていて、いかにも蛙が多そうだ(笑)。通りの名も「蛙」(ま、「通りの名前をそのままつけたレストラン」ってのは多い訳ですが)。
 丁度この頃に、雨が上手くあがったので、そぞろ散歩する。実際、「散歩コース」の標識などもあり(全長10kmなので遠慮するが)、付近は、田畑とか山林とかより「高級別荘地」かなあ
…、って感じ。

[へべ]
 となり村(マドレーヌsousモントルイユ)にあるオーベルジュ本丸までは車でも10分くらい?
 一帯は瀟洒な別荘地といった趣。川と小川に、遠くからグルヌイユの声もきこえてきそう。
 フラフラと散歩してると、道ゆく車のおねーちゃんが呼びとめてきた。
「アナタたち、泊まりはこの辺? 2bis! それ、アタシのとこなのよ~、今いっしょに宿まで行けばそこで鍵を渡せるから、ど~お?」

[AQ!]
 で、プラプラしてると、後ろからクルマが来る。道を空けてやり過ごそうとすると、我々の横で止まり、ナカナカ美人のネーチャンが身を乗り出して、
「ネーネー、アナタたち、そこのグルヌイエールにお泊り?」
「いやあ、そうしたかったんだけどさ、満室だって言われちってMontreuilの2bisってシャンブルドットなんだけどさあ…」
「ア、(やっぱ)そか、アナタたちねラッキー! …えーと鍵が渡せちゃうと簡単だわ、ついてきて、…あ、クルマ?」
 と彼女の説明も順不同であったが、要するに、彼女が2bisの管理人で、
“今晩はキミらの一室だけです、エスプレッソバーからDVDまで、冷蔵庫の飲物や食い物、何でも好きにしていいから、「自分んちのように」”
 …ということのようである。

[へべ]
 行ってみるとそれも道理、2bisは2室こっきりの小さな宿で、今日の泊まりは当家のみ。
 冷蔵庫とひきだしにあれとこれと…なんでもご自由に! 自分の家みたいにくつろいでね♪
 …と鍵を渡せばそれで本日のお役目終了なのでありました。

[AQ!]
「夜にグルヌイエールで、またね」、と、彼女は去ろうとする。
 外錠を預かってるので、その点は心配なしだ。

「あ、ネーネー、夜はグルヌイエールにどうやって行ったらいいの?」
「え、昼間と一緒よ」
「だって、俺ら、飲むしぃぃ…」
「…んーそうねえ、タクシーを回す手配、しとくわ」

 …どうも、あの感じは、フツーは、飲んでもクルマを運転して行き来してるんだろうなあ。何せ、自称2分の距離だし。厳しくなったとはいうが、相変わらず、フランスの田舎のクルマは、アルコールに寛容なようだ。高速のSAのレストランでも「全員」が飲んでる卓はいくつもあるもんなあ。

 2bisはダダっ広く、カッコ良く、居心地良く、寛ぐ。

[へべ]
 2室共有の食堂部分も居室もモダンでアートなデザインのおもしろい宿で、これはこれでgood!

 夜。たのんでおいたタクシーが(やっぱり)来なくて待ちぼうけ。結局、大シェフに送迎してもらうハメに。

[AQ!]
 19:50、指定時間に2bis前に立つ。
 タクシーは、来ない。
 マガリにTEL。
「え?」
 しばし待つ。
「タクシー会社の奴、バックレてるのよ。そこにいて、今、迎えに行くから」
 おー、、ブルターニュみたいじゃんか…(^^;;)。

 迎えは2台で来た。我々が乗るクルマを運転しているのは…。
 なんと、シェフ! (大シェフ。アレックスのおとーさん)
 いやはや、スマン。

 さて、蛙の館だ。
 玄関は、いたって質素。入店すると、サロンも質素でイナタイ。片隅の机の上に、蛙の陶像が何体も飾ってある。カワイイ。
 向かって右側のサルに進み入れられる。
 20席ほど。コレが何ともイナタく、いい具合に古ボケ、見え方もサイズも可愛らしく、イイ感じなのだ。まあ、ボロっちいと言えば言えなくもなく(笑)、それがあってか、新館を建てて移るらしいんだけど、コッチはどうするのかな? 何の形でも残して欲しいくらい、面白い。

 内装壁面には、「蛙のお話」の看板があり、そこから絵巻物風に紙芝居風に、「レストランにきた蛙の夫婦の話」が展開しており、これも実にいい味を出していた。(話は、要すると、飲み過ぎ・食い過ぎた旦那蛙が爆発してしまう、という他愛のないもの)

 ***

 「In de Wulf」からモントルイユヂュルメールに回って、今話題のAlex Gauthier「La Greneuiller」。此処はかなり「第2ディケイド化」してたわ。
 フランスだから(?)、mm精度というよりcm精度、申し訳程度にフオワグラ使ったりするが(笑)。

 ポテトステックはぼったい。卓上の謎の溶岩の正体は、後ほど。

Tasse d'eau de mer
 “海水”は、瓶から注がれる。海草などが瓶内を泳いでいる。中身は海の幸色々だが、やはり、牡蠣に一番ピントがあっている感じ。

 徹底した「片寄せ盛り」は、噂通り。ワークスペースってこって?…便利でもある。

Concombre, fraises vertes, basilic
 薄フォアグラに、胡瓜・緑苺・バジリコのハーモニーだが、品書上にフォアグラの文字がないのが現代調か。某店スペシャリテをはじめアチコチで出される、苺フォアグラは美味くもなんともないのだが、この、緑苺との相性は、ナカナカのものだ。丸く棒に剥かれている胡瓜が素晴しい。

Petits pois...
 青豆、ラヴ。前日のIn de Wulfより更に青臭く、苦いと言ってもいい加熱加減。青豆スープも苦渋い。救いとして幾つか入ってる青豆ニョッキだけが甘い。ここまで行くと、万人向けという気はしないが、豆のミネラルのありようが、テロワールが、見えてきそうな錯覚に陥るほど。

Courgette, huitre grillee...
 次の、牡蠣クールジェットもいい。グリエされた牡蠣のプックラした味ののりは、二人して「随分、巧いねえ、、」。クールジェットは、それこそ1,2mmの薄膜三層に切って組み直し、西瓜の皮の模様みたいに見えるw。両者の相性も、いい、

Bouquet-consoude, anchois
 次のテーマはアンショワ。…だけあって、かなりの塩気。此処んちのアセゾネ…塩味の決め加減は、皿によってかなり波の高低がある。狙いなのかどうか、ハッキリとはわからず。

Saint Pierre, haricots beurre
 サンピエールの皿は、美味いけど、サンピエールの活かし具合はフツーだな…と言ったら、へべに、要求水準高過ぎ…と窘められた。

[へべ]
Homard Genievre
 サルの壁画/卓上溶岩
 オマール+ジェニパー 手づかみで/カキとクルジェット薄切り~焼き …の2品がよかった。
 …ので、長いほうのコースにして正解!

[AQ!]
 しかしなんだ、この店のデグスタシオンは、フルと少しショートトラックの2つが用意されているのだが、ショートトラックだと「コレ!」って奴が漏れてしまうのだ。フルにしといて、ほんとに良かった。

 ところで、フランス領に戻るといきなりメテヴァンじゃなくなるw。ワインリストは、普通の作りにプラスして冒頭に「この季節のオススメ」が、白1ページ・赤1ページある。赤にイルレギが二本ノミネートされてるのが珍しい。この辺、見当つけて、
「オススメ頁の赤で重過ぎないあたりでケスクヴムコンセイエ?」
 …と、
「メルキュレですとか、このイルレギも面白いかと」
 の答え。お、来たw。
「あーソレソレ、そうしましょ」

 この酒は、実のところコースにとてもよく合った。海産物とも綺麗に調和する。それに、この種の安ワインの宿命だが、日本で飲む同じイルレギよりずっと美味い。雑味やエグみがなくて滑らか。安酒ほど傷みやすいってもんだけど、輸送コストかけられない、のは理屈だからなあ。

 デセールタイム、なんと、溶岩の出番だ!(^^;)。

 ***

[旅の後で]
 フランスのフランス料理の21世紀第1ディケイドを振り返ってみると、まず一つには、スペイン風邪と日本脳炎…西・和料理の強風の影響をに代表される国際化ということがある。
 それと並行して進行した傾向として、食べ易さ・わかり易さへの傾倒…ということもあるのではなかろうか。
 誰にでも受け入れられ、スンナリ食べられる、という。
 その結果、何となくフランス料理は、細く弱く、薄ら甘く、なった。
 今、流行りのフランス料理…と聞いて行くと、お菓子みたいな肉とか魚…なんてものに出会う。小児科味だ。
 Gauthierの料理をいただいていると、いい加減こうした傾向にも飽きが来たり、ある意味ウンザリし始めたんじゃないか、という気もする。
 そうするうちに第2ディケイドが始まる。
 これからしばらくは、わかる奴だけわかればいい、オレのことが好きな奴だけ来なさい…という揺り返しも少しあるのではないか。
 それは「ネオビス」という食い易さ料理にも、言えそう。
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   Ivan Vautier  イヴァン・ヴォティエ
  
3, Avenue Henry Cheron - 14000 Caen 02 31 73 32 71 www.ivanvautier.com
Chef: Ivan Vautier
・
  → 2010北仏旅行記はこちら

2010年 8月 

 *Specials D'Utah Beach du Pere Francis en deux facons / petits poireaux et vinaigrette a l'infusion de macis
 *Declinaison de tomates rares et de Jardin en 3 versions
 *Pastillas de caille desossee / jus de cuisson / huile de pistache torrefiee et girolles de saison
 *Fraise au vinaigre noir et aux pralines roses / glace basillic et au citron dans l'esprit d'un vacherin
 *Barre chocolatee a l'ecorce de citron / riz souffle / pommade de citron et glace Earl Grey
 +96 Corton Grand Cru / Jadot

IV IV
 なんか、見た目は割りとイイんだけど、味がボケ気味な気が…
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   Les Maisons de Bricourt "Relais Gourmand" : Olivier Roellinger 
 レ・メゾン・ドゥ・ブリクール : オリヴィエ・ロランジェ
  
1, rue Duguesclin 35 260 CANCALE maisons-de-bricourt.com/
Chef: Olivier Roellinger
・ 2008、閉店の模様
 レストラン「ルレ・グルマン」とビストロ「ル・コキアージュ」・2つのホテル「リシュー」と「リマン」、、、その全体をメゾン・ドゥ・ブリクールと称する。詳しくは公式サイトをどうぞ。

Michelin ○○ /GaultMillau 19 (1990)
Michelin ○○ /GaultMillau 19 (2001)
Michelin ○○ /GaultMillau 19 (2004)

  → 2005ブルターニュ旅行記はこちら

 「オリヴィエ・ロランジェ、年内で引退」という愕然とするニュースが飛び込んできました。qc.news.yahoo.comのようなサイトでも報じられているので、どうやら、本当のようです。健康不調説など、憶測は色々流れている模様、、、
 と言ってたら、自分のサイトmaisons-de-bricourt.com/でも12月15日で終わり、というアナウンスが出ました。 (2008.11)

[↓メモ版:工事中]
2005年 5月 ☆☆

 *海苔佃煮山葵、ポテチにアンショワ・野菜、烏賊ダイス楊枝
 *アスパラムース、ビゴルノー、サンピエールタルタル
 *" Aventures Marines "
  Saint Pierre cru : cubes au vinaigre de gingembre, lames au vinaigre celtique
  Pieces de Saint Jacques a la fleur de sel, "gros lait" et epices de Cochin
  L'oseille sauvage, les huitres plates, le foie gras et l'huile noisettee
 *Les ormeaux en persillade a la Cancalaise, pommes de terre ecrasees
 *Pigeonneau de l'ami Paul, "parfum de falaise" et quelques graines d'autres soleils.
 *Bananes et mangues "en croustilles" parfums de feve Tonka et muscade
 *Les petites crepes et la creme Chiboust a la vanille
 +94 Cote Rotie La Moulinne / Guigal

(コメント工事中)
[AQ!]
19-1  Cancaleはコンパクトな町だ。教会を中心にグルリと回ると、案内標識がやたらと沢山出ている。その中には勿論、「Maison de Bricourt Relais Gourmand」や、その経営する宿の一つ「Les Rimains」の名もある。実は我々は、Les Rimainsに泊まるのが第一希望だったのだが、4室しかないこの質素なブルターニュの民家風のホテルは満室で、断念。今日泊まるのは、ブリクールのもう一つの宿Chateau Richeuxである。
 RicheuxはCancaleから5kmほど南下した位置にあるのだが、Chateauの名の通り堂々たる建物のホテルで、一般にはこちらの方が人気があると言われる。RicheuxからCancaleの町なかのRoellingerのレストラン「Relais Gourmand」へは、送迎車が走る。

 サンマロ湾に望む高台に建つシャトー(といってもどことなく素朴で可愛らしい)にアストラを乗りつける。どもどもボンジュールなんしょ…とフロントを見ると、おねーさんは忙しい。このヒマな時間帯だと言うのに、電話と事務に追われている。
 適宜適当にチェックインし、「スーツケース取りにやらせるわ」という割に人も来ないので、車をパーキングに移動してから自分で部屋まで荷物を運んでしまう。ついでに言うと、チェックアウト時には更に(電話も)忙しくて、結構ダラダラと時間がかかるのであった。このおねーさんは感じの良い人で、そもそも俺ら、荷物などは自分で運んじゃう方が簡単でラクなくらい(エレベータあるし)で、何も気にしないのであるが、この「人手の足りなさ具合」が“例えば”3つ星に届かない処の由縁ではなかろか、などとは思えるのであった(後にも出てくるが、この、「メゾンドブリクールが何故ミシュラン3つ星を取れないか」というフランス料理界の七不思議話は、食いしんぼにとって、ロランジェを話題とするときの通奏低音みたいなものなのである(^^;))
 部屋は、これでもか、というぐらいに広く、3方の窓越し(一方はサンマロ湾)に風景が開けているのが気持ち良い。日本製オーディオがあって、ロバート・ジョンソンのCDがセットされている。渋い、っつーか、測りかねるというか、カッチョヨイことである。
 外を散歩。庭をちょっと横切って小道を下れば、すぐに浜辺だ。言わずと知れた「干満差世界一」な湾でありまして、この時はだいぶ潮が引いていて、ずっと沖合まで海水に濡れた妖しい浜の内臓が見えるのだけど、やっぱりスゴイ。海鳥が何か、つついている。遠~~~~くに小さな三角帽のような島影らしき物が見えるので目を凝らしてみたら、あんれま、モンサンミッシェルであった。「モンサンミッシェル、済み」と勝手にメモする(^^;)。

 で、ブルターニュの英雄・現代のスーパーシェフ、オリヴィエ・ロランジェ。勿論(笑)、我々にとって、今回の旅を計画した“動機”であり主眼である。
 曰く。

 ・地方の個性に立脚し、現代を疾駆する料理の冒険家。
 ・ブルターニュを知り尽くす男の海に関する知識は、漁法から魚介類の締め方にも及び、専属の漁師まで抱える。
 ・化学専攻の学徒からいきなり料理人に転向した(つまり通常の修業経験は無い)という異色の経歴を持つ。
 ・この地方は交易の関係で古くからスパイス文化圏なのだが、その中でも際立ったスパイス使いで、ついたアダ名が「エピスの魔術師」!(実際、胡椒一つとっても、「それでこれは何年何月に何処の畑で収穫したものか? それがわからなければ正確な使用は出来ないし、知識も集積しない」とか言うらしい。ブラヴォ)
 ・右の写真の、化学実験室の薬品棚みたいに並ぶのは、料理に合わせて調合されたエピス類と、風味付けされたオイル類で、これは販売用。少し買ってきたけど、極めて優れている。欧州内ではサイトから通販で買えるみたいなのが羨ましい(^^;)。
19-2
 そう、今から10年程前のフランスには、ミシェル・ブラスとマルク・ヴェイラ、そしてこのオリヴィエ・ロランジェこそが、「21世紀への扉を開ける」のだ…という空気が、確かにあった。そのことは、本人の言葉にも現れる。

「4,5年前、私を含めた先進的シェフたちが「フランス料理の危険人物」と叩かれた論争がある。保守派の人々にとって、それはフランス料理ではないというのだ。しかしフランス料理というもの自体、本当にあるのかどうか。今そう呼ばれているのはパリの料理だ。本物のアルザス料理、バスク料理、ブルターニュ料理に共通の土台があるかと言えば、ないと思う。国際的にはフランス料理はエスコフィエの料理だと思われている。しかしあれは20世紀初頭の、ホテル向けルセットの集大成だ。いつしかそれがすべての基準となり、料理を縛りつけた。私に言わせれば暗黒の時代だ。私が基準とするのは18世紀。当時は新しいものへの要求があり、世界に目が向けられた。フランスの料理人は新しい素材を受け入れ、把握し、さらに美しいものとして定着させた。皆が才能を表現し、フランス料理を豊かにした。料理はそのように時代と呼応しながら、新しいものを築いていくべきだと思う。」(「スペシャリテvol.3」柴田書店)

 何とも力強くも正鵠を射るステートメントではないか。
 さらに言えば、ロランジェは、ラ・ロシェル南青山の石井シェフの師匠(「ハーブ料理テクニック」の巻頭言も書いている)でもある。
 よし、ここ行くぞ!食うど! と、我々の志は漲る… …ものの、ブルターニュは遠し。冬は寒そうだし(…といきなり脆弱である(^^;))。

 そんな訳で数年をボーっと過ごすうちに、Cancaleを訪れた諸先輩方から話を伺う機会を得る。…のだが、これが悩ましい。「あぁ、メゾンドブリクールですかぁ…」…と、みな言い淀む。歯切れが悪い。「どうなんですか?」と聞いてみると、色々あるのだが、「いまいち」「出来不出来が激しい」「面白いのはある」「いいような悪いような」「ウマいのもあるよ」…などという声が凸凹と。そして、「"retour des Indes"は止めとけ」と付け加えられる。ちなみにこの"インドからの帰還"というのはサンピエールのカレー風味仕立てで、ロランジェの名を高からしめた傑作として知られる一品。ブラスのガルグイユやパコォのクドブフみたいなもので行ったら必ず頼んでしまいそうなモノなのだが、「ただのフィッシュカレーとしか思えなくて、なんだかな?」らしい(^^;)。(ちなみに、ミシュランが3つ目のマカロンを出さない主要因は「料理にムラがある」ことだ、という噂)
 そんなこんなで、行く前から作戦会議。アレはいいってコレは駄目だってインドには帰るなヴィアンドが意外と良いから海産物一色にするなっていきなり2泊はナニかなぁ…、と何か耳だけ年増になっちまったみたいだけど、研究した。

19-3  …などあるも、本物のCancaleに着いて、明るい太陽の元(実は、“この時期”のブルターニュは本来、雨天曇天が基本である。ずっと観察してた天気予報でも小雨続きだったのだが、我々の滞在していた一週間だけは妙に晴れた。妙に暑い、というありがたくないオマケまでついたが)、リシュー城の豪勢なバスタブで泡を吹いているとアレやコレやは頭から揮発していってしまう。そして、みるみる腹が減る。
 リシュー城からレストランへは送迎車で。「19:20にする?、20:40にする?」と聞かれる。基本的には、この2便でやり繰りしたいらしい。妙に、微妙な、帯と襷な時間設定だなぁ…(それが“例えば”3つ星に届かない処の…(以下略)(^^;))。ちょっと迷うが、20:40。さすがにこの季節、まだまだ明るい。
 城の1階サロンに降りる。この1階には海産物ビストロ「Le Coquillage」があり、ディネが始まっている。Chateau Richeuxに泊まりLe Coquillageで食べてしまうのが、観光的には一番手っ取り早い。日本人卓もチラホラ。ブルターニュ半島では日本人の姿を見ることは滅多に無かったのだが、ここカンカルにはかなりいました、日本人。サロンで待つことしばし、ショーファーから呼ばれる。

 ビュンビュンビュンのシュッと飛ばして、レストラン「Relais Gourmand」着。ファサードがいい感じ、本館に絡まった蔦も含め緑が目に優しい。この建物こそ、かつてインド交易で財をなしたBricourt氏の邸宅であり、後年Roellinger氏の生家となったと言う(ありゃ、ひょっとしてロランジェ君って、おぼっちゃま?)。門から建物への導入もいいが、素敵なのは池を擁する中庭で、中庭から食堂を眺める写真がよく紹介されている。本日の我々の席は、奥のサルの中庭を望むポイント。こりゃ良い席でしょ、ありがたや。グワグワグワと鴨など水鳥が池の回りを闊歩し水面に浮かぶ。イケスである(嘘)。サルはいかにも邸宅改造型な内装で、落ち着きがあり、しかしどっしりと重いというより洒落っ気のある軽いテイストが気に入った。
 セルヴールは最初だけ、何か英語のタドタドしい変な奴が現れてどうしましょと思ったけど、その後は、英語抜きだが普通の皆の衆で、一安心。

 料理は、後に詳述することもあろうが、アントレに「スペシャリテ3連発」という盛り込み皿、プラに鮑と鳩を頼む。多分、悪くない注文だったと思う。

 アミューズはまず、白い皿上に黒い石を配し、その上に串刺しや揚げポテト器を置く美しいモノ。続いて「3種の貝、海賊の香り」。
 …だが、皿上をジッと見てみると、ややユルい。アマい。
 …って言ってるのは、この店に期待する「世界トップとしての感動」の有るや否やのレベルの話ではあるのだけど、包丁とキュイソンがややタルい気がする。
 パクリ。美味い!…けど、味の細部が、ややユルい。アマい。
 トータル的には、このファーストインプレッションの感想は、最後まで続いたのであった。即ち、綺麗で・面白く・美味しい、のよ。だけど、「現代のトップクラスであるか」「感動があるか」という視点を持って来てしまうと、何とも、ユルくてアマくてタルい…というのが正直な感想。点数付けたら(料理に点数付けたことなんかないけど)、85点以上の皿は無かったなぁ、って感じ。だから料理については、「素晴らしい…」というのと「物足りない…」というのが、自分の中でも同居しちまうんですね。ある意味、先輩方の言葉がよくわかった、という…。
ブリクール ブリクール

 鮑は3日間かけて柔らかくムチムチに仕上げた逸品であり、鳩の肉質には惚れ惚れとする(レンヌの鳩は本当にイイのだ)。…けど、ソースの掃き方なんかちょっとダレてるし(総じて現代型料理なのにプレゼンタシオンが乱れ気味というか雑なのはかなり印象を損なう)、味の着地も少し両足が揃わずにバタつきましたかねぇ惜しいですねぇ解説の加藤さん、って感じである。
ブリクール
 デセールは、それよりもうちょっと落ちて、少し情けないかなぁ。まぁ悪くもないし、2つ星な感じだけど。

 全体にエピス使いは素晴らしく、パリ辺りの凡庸な店には教えてやりたいようだけど、さりとてブルターニュを回ってみると、この地方のエピスNo.1…って印象では、ない。

 ワインはオーベルジュ・ブルトンほどではないけどなかなかのリストで、オーベルジュ・ブルトンやランフィトリオンに比べたら割高な値付けだが、2つ星としては良好な方。…だがそこに、ギガルの94のムーリーヌだけ何故かいきなり185euro。え!?、っと飛び付く。
 ワインが出てきて「こちらでございますね」、なんて差し出されて普段は見もしないでウィウィ言ってるんだが、この時は、ブリュンヌ・エ・ブロンドじゃないのかジッと見てしまいましたよ。いやいやちゃんとムーリーヌ。頃合いもかなり良くなってて、むちゃ旨。うーん、ハッピー(…って実は料理の方も「一軒のレストラン訪問」としては、「うーんハッピー」、ではあるんだけどね)

 そんな訳で、…まとめる必要も無いけどまとめは難しい。「モンサンミシェル観光のついでに素晴らしいレストランがある」というのは嘘では無いし、「オリヴィエ・ロランジェという夢を求めてやってきて、言葉に詰まる」というのも嘘では無い。
 帰りの送迎車は、時間差をまとめるせいかギュウ詰めの一杯、日本人も一杯。隣り合わせになったマダムは「パリではフォーシーズンスに泊まったのだけど、ル・サンクよりいいレストランあるわよ…って、ランブロワジーってとこ取ってもらったの。良かったわ」とのこと、「でも、今日の店はランブロワジーより軽くて食べやすくて、こちらの方が気に入ってよ」とおっしゃる。それは至極素直でまともなコメントであり、実際そういうもので一軒のレストランを評して…なら彼女の方がよほど正しいのかもしれないが、…つまり、“ロランジェに見た至高の夢の現実はどうなのよ?”と言い淀む我々みたいなもんは、なんですな、フランス料理ヲタって奴なんでしょうな(^^;)。
 前述したようなロランジェの言葉は本当に素晴らしく明晰だと思うし、それがどれだけフランスの地方のレストランを勇気づけたかと思うと、それはいくら評価しても、し足りないほどのものと思っている。それは本当だ。しかし、そういったことも含めた「夢」が、料理を食べることで「現実に着地」する、その快感と感動について聞かれると、先輩諸氏同様、甚だ心もとない。
 ぶっちゃけ、そのトータルを俺ら的に総括すると出て来る仮説は、“ブリクールは、スーシェフや部門シェフが弱いんでね~の?”ってところ… …がないでもない。「石井さんがいるときに食べてみたかったわね」とか思ってみたり、してね。今日のこれは、本当にロランジェの描いた絵図通りのものだったのだろうか。厨房はシステムである。人心掌握や組織管理に弱点があるのは、理系出身の弱みよね、と理系出身の俺は思う。…ってのはどうか? (^^;)


19-4  大らかで脳天気。
 さすがに日本人客もいるし。食べやすさはあるようで、「昨日のランブロワジーより、私にはGood」だとか。

 3点盛アントレでは、帆立がブッちぎりに良い。薄切り(かなりの)にグラニスミスを合わせ、エピスとオイルでまとめた。艶っぽくも品位の高い傑作。
 鳩はエピスの魔術師としてはかなりオーソドックスに。ウマい。
 オーモーが一番面白い。まぁオーモー自体、そんなに使わないしねぇ。歯応えを残しながらの柔化にはテクがありそうだし、香草ブーレ的なソースも旨い。とりわけ、でかいオーモーにチビ助(親指くらい?)を添えてコントラストを見せたのはナイス。ポムのエクラセは、妙にシロートっぽい。

 リシュー城からルレへのリムジンは、19:20と20:40の2択。どんな運用なのかな? 帰りは乗合いである。
 リシュー城のマダムは電話と対人応対で大変に忙しい。早く3つ目のマカロンを取って人手を増やして欲しい(?)。
 3方向に向かって窓が開く部屋は、開放感があって気持ちいい。シャワー室は別、型。CDプレイヤーに何故かRobert Johnsonがセットされている。  ルレ。グワグワが散歩する窓際の席。暮れて行く庭がとてもキレイ。ムノーんとこと似た構造だが、庭は夜間照明アリマス。でも、自然光で始まる夏がイイんじゃないかな。

 ワインリストは、JPAやJTに比べ「残り具合」が悪いが、時に、お値打ち品が見られ、94ムーリーヌの180euroはよいと思う。メチャ旨。
 サンピエールキューブの方は甘酢風味。アクワイヤドに美味いが魚は可哀想。時に渋さシラズなのは、気にしないみたい。ケルティック酢はほんのり甘い感じ?
 牡蠣の影に薄~くフォアグラを忍ばせておくのはまずまず整合していて効果的。
 デセールはどちらも、見た目・食感ともに、かなり“ボテーっ”としているが、味は悪くない。

 全体には、年齢とか歴史的実際はわからないけど、「新ブルターニュ料理の旧世代」って感じなんだよなぁ。
 量は軽め。アミューズも品目数はあるが、ほんのほんの一口ずつ。海苔の佃煮は、マテ貝の殻に乗ってるが、どう探しても貝の身は無し。スティック代わりか。
 それにしても、店内も宿も値段も、雰囲気はヒッジョーに“3つ星くさい”。
 やっぱTさんやT島さんじゃないけど、出来不出来が激しくて、「Retour de Inde」がマズいのがいかんのかのぉ? (でも“帰還”、Dさんは旨かったって)
 さすがにオオダナだけあって、JPAやJMBみたいな精度は出ないのかなぁ、と思ったが、例のブルターニュレストランガイド本を見ると、クヴェールは40で、他店に同じ。見た目より席数は絞っているのは、余裕で結構なことである。…けど、40ならもうちょっと精度出ねぇかな(^^;)。

 リシュー城泊で食事はビストロ、の日本人もいた。
 リシュー城泊だと、バーッと乗り付けてバーッと帰ってきてしまうので、ルレ回りの散策ができないのが、多少つまらん。ま、夕方にでもCancale散歩などする余裕があれば良かったんだけど。Hotelは第一希望は、ルレに近いリマンだったのだが、満室だった。
(コメント工事中)
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  Manoir de la Boulaie : Laurent Saudeau  マノワール・ドゥ・ラ・ブレ : ローラン・ソウドー
  
33 rue de la Chapelle Saint Martin 44115 HAUTE-GOULAINE 02 40 06 15 91 (Fax:02 40 54 56 83) http://www.manoir-de-la-boulaie.fr/
Ferme le dimanche soir, lundi et mercredi
depuis2000 Chef: Laurent Saudeau
・  
 Haute-GoulaineはNantesのすぐ郊外。
 年齢を聞いてみたところ「38歳だ」とのこと。この天才は、間違いなくフランス料理界の次代を担う一人である。
 2000年開業・2002年1つ星獲得・2005年2つ星獲得、の快進撃。 (2005.5)
 ところでこの辺りの人は、Nantesを「ナント」と呼ばれるのが何か気持ち悪いらしい。ワシらの出鱈目なフランス語、他は全てスルーなのに、「ナント」だけは、「ノント」(←片仮名だとこっちが近い)、と直される(^^;)。

  → 2005フランス旅行記はこちら

MDLB1 2005年 5月 ☆☆☆

 " Invitation au Voyageハ(Bacchusハ"accord mets et vins") "
 *トン赤身鮨・芥子・パッションフルーツ黄ソース、コンコンブルソルベ・松の実・フロマージュ、トリュイトタルタルとガスパチョ、クドブフ・ラビオリのスープ浸し
 *ガンバ天麩羅とプティポワムース 花添え
 *Noix de St jacques aux pistaches, Mitonne de boudin noir et emulsion de Granny Smith, Croquette de polenta a la pomme
 *Pot au feu de foie gras de canard aux legumes oublies, Bouillon, fleur de sel et poivre de maniguette
 *Pav・de Bar aux agrumes et baies de wu.w・ziハ, Samoussa de c四eri, champignons des bois et roquette sauvage
 *Filet de Rouget aux hu杯res "Marennes d'Ol屍on",ハハCompot・de chorizo Iberico, 残ume amande noisette
 *Sorbet citron et basilic, Une rasade de Vodka
 *Cataplana d'agneau cuisin・dans un bouquet deハthym et romarinハ, Bouchon de pommes de terre aux olives m仕iterran仔nnes
 *リドヴォのヴィエノワーズ au sautoir pilotis d'ail en gousse et lard fume, Jus a la quintessence de baton de reglisse
 *Milk shake de roquefort, figues et noix, Mouillette aux fruits secs
 *Le Chocolat en g姉m師rie variable
 *Inspiration exotique


[↓メモ版:工事中]
[AQ!]
 新2つ星、ピカピカ売り出し中のManoir de la Boulaieは、HAUTE-GOULAINEという土地にある。
 Nantesから10kmちょっとの郊外。
 Nantesはけっこーな大都市でクルマで入るのは面倒くさそう&Nantes自体には用事無し…ということで、Nantes中心部には入らず、国道沿いの宿を探す。それが、ロリエフルーリ。

 ロリエフルーリのオバチャン、声でかいよ。
 そのまんまのノリで日本まで電話して来て
「Car Parkingは完璧よ。カードはVISAとMasterだけど大丈夫?」
 ってワメくし。えらく気が良くて面倒見のいいオッカサン。
「オートグレーヌ、、、そーそー、マノワールドラブレに行くからTaxiよろしこ」
 と頼むと、
「あら、スゴイ! 予約はしてあるのー?」
 としきりに盛り上がってました。

 ザッと調べて、ブレの最寄りのホテルであるロリエフルーリにしただけあって、taxiはもー、“すぐに”オートグレーヌに着く。それでもその短い距離の間にノントの郊外ヴェルトーの街路は終わり、ミュスカデの畑が散見されたりする。
 ブレの壮大な館は、“御領地”なんて言葉が似合いそうな、こちとら庶民がひっくり返りそうな佇まい。
Manoir de la Boulaie
 この館の裏手にもミュスカデ畑が広がっている。オー、本場中の本場ではないか、と、アペリティフを聞かれた時に、
「チミはミュスカデのヴェールの用意などはないのかに?」
 と尋ねてみたのだが、案に相違して
「そんなことよりステキなアペリティフ・メゾンはどーよ?」
 とのこと。
 それに従ってやったのだが、このアラメゾンは、例の“フレンチスタイル”なアペリティフであって、ピンク色のトロピカルフルーツもの。アルコールがやや軽めで、味も上品めなのが救いか。シャンパンにしときゃよかった、、、とチビチビこわごわ(この手の、えらく回ったりする)やっていたが、隣の卓の4人組はほとんど「エイヤっ」て具合で一息に飲み干してやんの。
 奴らも注文は「バッカス」(Invitation au Voyageハ(Bacchusハ"accord mets et vins") )だったのだが、
「バッカスの最初の一杯の前に、何かお持ちしましょうか?」
 と聞かれてやんの。でも頼まないで、テキトーにおしゃべりしてました。フランス人もいい加減だな。

 客はほぼノントの奴か、その近郊くらいかなぁ。店内は明るく軽やかでお洒落。香草テーマのデザイン画、オリエンタルアートのデザイン画。
 日本人コミ君は3月に来たばかりだとかでまだアタフタ。
 厨房は、比較的新築のせいか、広くて使い易そう。
 ローランは、話すと知的なイメージで、でも芯は相当に自信がありそう…、しかし写真に撮ると何故かあの間抜け顔になる。変な奴だ。下ちゃんを一回りデカくしたみたいな体型、下腹はだいぶ膨れ始めているかも。社交的性格。エピスをはじめ、広大な知識。
Manoir de la Boulaie

トン赤身鮨・芥子・パッションフルーツ黄ソース、コンコンブルソルベ・松の実・フロマージュ、トリュイトタルタルとガスパチョ、クドブフ・ラビオリのスープ浸し
 鮨は海苔がパリパリ旨! 山葵クレーム

ガンバ天麩羅とプティポワムース 花添え
 海老天は例の磁石皿で
Manoir de la Boulaie
Noix de St jacques aux pistaches, Mitonne de boudin noir et emulsion de Granny Smith, Croquette de polenta a la pomme
 帆立串ピスタシュ(何たるキュイソン)、グラス三角切とパリとア・ボワール ブーダンノワール!

Pot au feu de foie gras de canard aux legumes oublies, Bouillon, fleur de sel et poivre de maniguette
 なかなか珍しい仕立て。
Manoir de la Boulaie
Manoir de la Boulaie  (宙に浮く)パン台にビックリ!! 驚いてるとさすがに「ウケた!」顔のメートル
Manoir de la Boulaie
Pave de Bar aux agrumes et baies de wu.w・ziハ, Samoussa de c四eri, champignons des bois et roquette sauvage
 バールにクルクル京都風人参
 バール皮に大量のエピス(高効率バランス)を打って、けっこうコンガリとさせているのに、皮目の下の脂から肉のキュイソンが非常に精密正確で、魔術的。

Filet de Rouget aux hu杯res "Marennes d'Ol屍on",ハハCompot・de chorizo Iberico, 残ume amande noisette
 ルジェ立ってる、揚げポワロのキャベツ千切り風、オゼイユソバージュ、イベリコチョリソ
 バールと同じように、魔法は、ルジェの、塩とキュイソン。オレロン島の牡蠣とチョリソというおツレはきわめて危うく見て取れるのだが(牡蠣とチョリソの個性や強い味がルジェを薄めてしまわないか)、この料理では、ルジェに、主賓たる格と味が確立されている。
Manoir de la Boulaie
Manoir de la Boulaie Sorbet citron et basilic, Une rasade de Vodka
 凝ったグラニテ。
Manoir de la Boulaie
Cataplana d'agneau cuisin・dans un bouquet deハthym et romarinハ, Bouchon de pommes de terre aux olives m仕iterran仔nnes
Manoir de la Boulaie
Manoir de la Boulaie リドヴォのヴィエノワーズ au sautoir pilotis d'ail en gousse et lard fume, Jus a la quintessence de baton de reglisse

Milk shake de roquefort, figues et noix, Mouillette aux fruits secs
 クルジェット・ムタール・マングのサンド
Manoir de la Boulaie
Le Chocolat en g姉m師rie variable
 ショコラ餃子、筒

Inspiration exotique
 ティラミス、レモンマドレーヌ、クレームにナッツ
Manoir de la Boulaie Manoir de la Boulaie
Manoir de la Boulaie  Laurent Saudeau38歳 depuis2000 その前はラ・ロシェルで2つ星店(?)。
 享楽的にして超絶的精度
 中庸の道の極北
 キュイソンおそるべし
 デレデレなアイディアに見えて、考え込まれ、詰められている。

 ゴツいカミさん、優秀
 メートル、ギターの古川さん調。
 「バッカス」、GJ!
 お値段、安い!
 車の経路は計画的で、来訪時は池をグル~っと回り、帰途はあっけなく道に出る(笑)

(メモ不明分)
フヌイユ尽し
フロマージュ(Ma,,,Ch,,,)
シリのモヤシみたいのエストラゴン
トマト(タイ風) curryヴィネグレット

[↑メモ版:工事中]
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   Restaurant Patrick Jeffroy  パトリック・ジェフロワ
  
20, rue du Kelenn 29660 Carantec 02 98 67 00 47 (Fax 02 98 67 08 25) www.hoteldecarantec.com/
Chef: Patrick Jeffroy
・
 宿泊部門は、「L'Hotel de Carantec」と名乗る。同一の建物内。

Michelin ○  /GaultMillau 16 (2001)
Michelin ○○ /GaultMillau 16 (2004)

  → 2005ブルターニュ旅行記はこちら

PJEF1 [↓メモ版:工事中]
2005年 5月

 *Homard Creme de Crustace
 *Presse de Tourteau
 *Poisson
 *Carre d'Agneau en Croute
 *Marquise
 *Pate Sablee

Patrick Jeffroy PJ Patrick Jeffroy Patrick Jeffroy
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  Restaurant Sa.Qua.Na / Alexandre Bourdas  サカナ/ アレクサンドル・ブルダス
  
22 place Hamelin. 14600 Honfleur 02.31.89.40.80 www.alexandre-bourdas.com
ouvert tous les soirs du vendredi au mardi plus les dejeuners du weekend ; 冬季休暇あり
depuis2006 Chef: Alexandre Bourdas
・
 Michelin ○ /GaultMillau 15 (2007)
 Michelin ○ /GaultMillau 16 (2008)

  → 2007ノルマンディー旅行記はこちら

  → 2010ノルマンディー旅行記はこちら

 祝!、Michelin Guide Rouge France 2010で2つ星獲得!
 実のところ、フランス人としては内気で大人しいAlexには極めて可哀想なことだったのですが、フランスのギョーカイ中では2008.2009と続けて「Sa.Qua.Na、2つ星に昇格」という噂が、ほとんど確定情報のノリで流れていたのです。なまじ、そんな噂、無ければよかったのに!
 やっと2010版で、カムトゥルーしました。「料理は三ツ星!(ネジュラン時代の…)」と信じる我々としては快哉、Alexにも祝メールを打ったのですが、Alexからの返信は、やはり“実直”そのもの。カレのことは、ずっと、応援したい…との思いを新たにしました。

 2012年末、パリにPascadeの店を出したそうだ。
 Pascade - Alexandre Bourdas (14 rue Daunou 75002 Paris 01 42 60 11 00)

2007年12月 ☆☆☆

 tout en Coleur 2
 *les amuses:
  la pascade
  Une pascade Aveyronnaise a l'huile de trufe
  les praires
  Quelaues praires, epinards, bouillon d'amande & Kabossu
 *la langoustine
  Un kefir facon "Thai", langoustines roties & condiments d'ici & la
 *la saint-jacques
  Nois de Saint-Jacques croutee,
  creme de celeri, radis noir, estragon & huile d'olive "verre"
 *les ormeaux
  Ormeaux/Veau/Huitres...qui l'eut cru!!
  emulsion de beurre, pommes de terre & oseille
 *la sole
  direct...
  Sole/Yuzu & lime du Mexique/Persil
 *le foie gras
  Un foie gras de canard poele,
  bouillon de coques, feuilles de mache, jus mousse gingembre/soja/ail
 *la truffe Uncinatum
  Comme une soupe au fromage,
  foie gras, laitue, pain, jambon, laguiole & truffe
 *le pigeon
  La poitrine de pigeoneau roti,
  une pastilla d'epices & de sucre, feuilles de chou, jus & creme d'amandes/pistache
 *Le plateau de fromages
  notre selection de Fromages Normands & Aveyronnais
 *le safran
  Une crepe soufflee au safran, mousse de banana & ananas/passion
 *la truffe Melanosporum
  Une meringue caramelisee - Truffe
 *a grignoter:
  Un sorbet mandarine, chantilly a l'eau & congolais
  Guimauve au sesame grille - Feuille de cerisiers
 +03 Volnay Santenots du Milieu / C.Lafon

[↓メモ版:工事中]
[へべ]
曇り。voieが出るとやはり大慌ての仏人。premsのクセして「コンポステ忘れたわ」と車掌まで行くオバサン。

[AQ!]
 上流客層に唖然。現役初老の、異例なくらいのハイソ。アトリエ経営者と融資した銀行頭取、商工会議所会頭? 仕立てと生地の良いシャツ・ジャケット。ノーネクタイは、俺ともう一人?
 「好きなとこ座っていいよ」“サカナ”君の真下の席。ウチより先行が2卓。明るい。壁の蛍光系白色光がクールな特徴。
 Alexにカドー渡して握手。

 精緻な完成度、明らかな魅力と署名。完全に世界トップの一角。二つ星18点は目前だろう、実質はもっと上だ。
 驚きの素材の質。腹、軽い。
 全て趣向を凝らし尽した料理は、主素材への収束の、そのエッジの効いた立ち昇り方が凄い。見事。

 サイトの写真で拝見したノッポ君がニコヤカ。全体にもニコヤカで柔らかい。華やかで可愛いデルフィン(多分、人気の一方の輪)は、「Toyaに5回行ったよ」と言うと、「私覚えてる?」「勿論」「気付かなくてゴメンナサイ」などと。

 固焼パンケーキは圧倒的なトリュフの香りに包まれて。かなり甘くした“お菓子”なのだが、まったく嫌味なく、清く軽くウマい。パクパクっ。そういえば、へべはワカモレも食いまくり。

 その間、“よく考えられた”((C)GM)ワインリストを拝見する。グィヨンかジャブレ、またはSudOuest…など思うも、最終頁“グランヴァン”を見ると03ラフォンが135ユーロ。これは新進レストランの価格としてはかなり頑張っている。間違いの少ないチョイスでサンシルベストルらしーじゃん…で決定。デルフィンがテーブルで抜栓。広口ワインボトル型のデカンタへ移す。

 エピナールはアモンドのブイヨンがかなりエキゾチック、浅蜊と一緒が面白い仕立てながら、ウン、とても美味なエピナール。
 ラングスティーヌは(Alexの好物の)ピビンパ丼にはったタイ風スープ仕立て。ケフィルの白がトムカーガイ(ところでトムカークンってあるのか?)風の見た目。エピスのタイ配合は(気持ち悪いほど)ピッタリ決まり、エキゾチック・パルフェ。見事に辛味抜きで(後味に毛ほどの辛さがあるのみ)成立させている。こんなん出来るのか。御本尊の素晴らしい質のラングスティーヌが、甘く味強く旨い。
 この料理は全体として“面白い仕立て”と見ることは出来るのだが、ラングスティーヌ側から洞察すると、海老身の甘味や旨味を引き出すために強く塩した場合の余剰感(これは往々にしてある)をケフィル・エピス・レギュームで吸収し引き締める…という構成になっていると感じられる。

 海産物の甘味・旨味・香りを取り出し嫌味・臭い・余剰を削る…という意味では次のサンジャックも同様で、恐ろしいような成功作。それにしても甘く身悶えるように魅力的な帆立を完璧に演出する舞台設計と照明。ルセット指定なのかは知らないが、ラディノワール(かな?)が一本切り…一本麺状態であった。細けぇ。

 鮑と牡蠣と仔牛の刺身仕立てというシュープリーズの陶酔! 仔牛はタルタル状…、日本では難しいなぁ、この仔牛が必要とあっては。小粒の鮑もたいへんオイシイ。いや、実に登場人物一人一人デギュステしたいくらいウマイのだけど、メリメロで食すと、魔味が現出する。クラクラと悦する。貝をアクサンにヴォーを食している気も、ヴォーのソース(フォンドヴォーでなく(笑))で貝を食している気も、するのが面白い。ウーン、たしかに、この辺り…ノルマンディーじゃないと出来ない料理かも。添えられた細切りジャガイモ揚げ(これだけでも大したテク)の献身も大きい。

 ソールにやられ! 完やられ! 参りました。ヤヴァイ。凄い。まさに地の素材、ソールの凄さ。バタ焼…になるのだが、ブラス家秘伝ともいうべきなのか、超透明澄ましバターのキュイソンの凄さ。柚子の、必然性・配置・具合の凄さ、これは一度、腕の立つ懐石のヒトと食べてみたいと思わずにいれない。ソール史上、…いや焼魚史上の傑作。

 フォアグラはペルセベとコラボ。貝汁に生姜醤油が仄かに香る。マーシュの緑が愛らしい。このペルセベは、細かな砂が取切れないタチのようで、そこは惜しいが、味は大変に良い。
 学名トリュフにはエマンスのフォアグラを合せて、皿の下部から掘り出されるレテュやらライオール(フロマージュ)が魅力一杯。焦がしパン粉まぶし…じゃないけどそのような類いの仕立て、Alexの得意のやつ。コレ、上手いんだよな。

 同じように言えるのは、ピジョノーに現れるエピス・シュクレ「板」で、これも素晴らしくよく出来た仕掛け。エピスをピジョンに振り掛けてロティすると“ぐじゃーぁ”とする所を、別添で用意するので、エピスの香りはフレッシュなままであり、板のクロカンと合せ、口内の楽しみとなる。登場人物と「キミは塩気、キミは甘み、キミは香り…」とシゴトを分担して行くのに長けています。

 フロマージュは、ライオール・カマンベール・リバロと取る。アミューズから引き続き、オーベルニュXノルマンディー作戦。隣の夫人はチーズはパス。
 デセールは「サフラン」と「トリュフ」で、プレザンタシオンはAlexとしては地味で実質本位。バナナ・アナナ・パッションとの対比で香り立つサフラン、2007の最後を締め括る香りの舞いを見せるトリュフ。

 パティシエ上がりとまでは言わないまでも若いうちにパティシエ主要職の長かったAlexの特徴か、精緻・正確・細密さは一種独特のもの。それでいて本人の性格の意外な大らかさ…というか長閑さを映してか、せせこましさがなくて存在感は大きい。
 洞爺で、2回目訪問から「あれ?」と思ったのだけど、ブラスのグランクラシック料理以外には、ブラス家の作風とは違う空気が漂っており、これはAlexの個性なのでは?という思いを強く抱いたのだが、更にそれを強固に確認することが出来た。
 Alexの料理って、どこか、ちょっと、“チャーミング”なんだよね。チャーミングさ…は、偉大さや感動に昇華するケースの少なそうな特性なのだが、Alexのは、偉大です。感動があります。
 チャーミングさ、ちょっと“可憐”。へべは洞爺から一貫して、Alexを、黄色い花に囲まれた花を食う牛、と呼ぶ。

 まだ訪仏2日目での大コースゆえ、3時間過ぎあたりから眠気が襲う。意味不明のお喋りを続けながら、瞬間気絶したりなど、す。
 結局、ジジババ2組に続く3組目として帰途につく。ルーシーに到着、時計を見るとjust24時。しまった、出際に時刻確認すればよかった。もう10分も居ればSQNで年越しでした。あの重々しい客たちも「ボナネ!」と乾杯するのだろうか。
 それにしても、すごい勢いで、寝る。

[へべ]
 ちょっと早いけど、もう入れるかな? ちらほらと卓についてる客も見え、いざ突入!
 (案の定)あやうく忘れていきかけた土産の壺屋焼のサカナ柄絵皿の箱を「シェフにプレゼント!」と渡すと、やさしいことに「自分で渡しますか?」的なことを。ずんずんずんと奥へ行ってアレックスにコンニチハとともにプレゼント。ついでに奥の席におちつく。

 手前が大サル、厨房寄りの奥が一段高くなった小サルで3卓ほど。カンロクの老夫婦2組、いずれもよい身なり…と思えば、あとからあとから来る客みな仕立てや布地のよい毛並みバツグンの客ばかり。
 トラマのところで見たアジャン社交界?みたいだね、などと言いつつ、さっそく良いお客がしっかりついていることを、ことほぐ。
 キッチン前の飾り棚のガラス鉢にゆったり泳ぐサカナ(大金魚)くん、を眺めつつ、20時から4時間近くゆったり楽しんだ。

 アレックスの料理はすごい。やっぱりすごい。火入れの精度、料理としての独創性、エピスやガルニや薬味のとり合わせ、塩・酸をはじめとする味の要素の立体的な配置とめりはりのきかせかた、、、おいしい。軽い。ほかにない。楽しい。
 多皿構成なのに、ひと皿がちまちましてない。精緻でこまやかなのにゆったりおおらかで、神経質じゃなくて、ユーモアとか茶目っ気が感じられる。
 魚の火入れは世界トップかと思うハイレベル。浅く、深く、ねっとりと、熱々に。

 アミューズは2日間とも、パンカード? こんがり甘い薄いパンケーキにトリュフオイルがよく香る。
 ライオールの付け根にSa.Qua.Naのロゴと店名。みぞ付き台座が使いやすい。
 タイの香り。コリアンドルの葉に、辛くなくて香るエピス。ヨーグルトベースで、2日目はノワドココのクリアなスープで。ピビンパ用の石鉢が大活躍(重そう)。
 ソールの旨いこと! こんがりとバターが甘くて清い。バタやヨーグルトや乳製品の使いこなしかた卸しかたは親方ブラスゆずり、ものすごく洗練されていて深い。結果、ふしぎに旨いのに軽く清い。
 ユズにすだちにメキシコライムにレモン。世界の酸や香りが完全に御されて料理にくみこまれている。悪目立ちはさせない。こんな生かしかたがあるのかと、目からウロコぼろぼろ。日本のシェフがくやしがりそうな展開と消化ぶり。
 いくらでも食べられそう。何日でも食べに来たい。
 フロマージュまで楽に入るくるしくない。(いっぱいでなかった?大丈夫?ときかれたけど)のどもかわかない。
 細いポワロ。ラディノワール。細ポテト。おどろいたのが1日目オーモーと仔牛とユイットルのクリュの一皿。仔牛が酸っぱい粗タルタルで細切ポテトが塩を担ってあれとこれとそれを一緒に。旨い!

 2晩目のトゥルボ→ソール→ドラド(→ヴォー)というコース構成もなんだかすごい。

[↑メモ版:工事中]

2008年 1月 ☆☆☆

 vert Olive
 *a se partager;
  souvenir de la Calmette,
  Une pascade Aveyronnaise a l'huile de trufe
 *le turbot
  Turbot poche au citron vert, feuilles de celeri & coriandre,
  un bouillon clair a la noix de coco et huile de Combava
 *la sole
  Un filet de sole poelee,
  creme de pomme de terre au fromage blanc, poireaux & Yuzu
 *la daurade
  Un filet de daurade etuvee,
  laitue braisee, emulsion de beurre & citron - ormeaux
 *le veau
  Un carre de veau roti,
  navets et feuilles de maches, le jus lie au celeri rave - echalotes
 *Le plateau de fromages
  notre selection de Fromages Normands & Aveyronnais
 *le potimarron
  Le Cappuccino "automne-hiver" de potimarron glace,
  cacao/noisettes & chantilly aux chataignes grillees
 *la truffe Melanosporum
  Une nougatine au beurre & cacao,
  chocolat blanc & truffe "Melanosporum", pate dechataignes grillees
 +04 Marcillac VV / Domaine du Cros

Sa.Qua.Na [↓メモ版:工事中]
[AQ!]
 欧米人は海岸沿いを、そぞろ歩き競争する。
 対岸は興醒めするほどインダストリアルシティである所のル・アーブル。
 15年モノと1978のカルバドスを試飲。元旦はケッコーやってた店々は2日は閉まり、淋しい。2日からの正月休みってのが多いのか。意外にポコポコ、変わらず営業は「ギャラリー」群。

[へべ]
 私有地 従業員専用

[AQ!]
 ウチらだけ、デセールトリュフは、別スタイル。
 今日は客層もヴァリエに富み、ノーネクタイも沢山。ううむ、恰好が昨日と逆順じゃん、ワシ。

「いつか京都か東京で店やりたいと思う」ってホントかよ、Alex。「日本のファン、ぼーくー、が来たがってるよオンフルール」と言ったら、「ほんと? みんな、SQNを開いたって、知っててくれてるかい?」

 それにしても、タイランデーズの中核をピックアップする精度に驚く。唐辛子と魚醤をマイナスしたような形なのだが、欠如感が無い。それに、今日の一品も、主役のトゥルボを引き立てる舞台になっているのね。今日のもピビンパ丼だが。
 スープはメートルが注ぎ回す形式。すぐ隣は父母娘の3人で、不思議そうな顔でタイ風スープをすする。おとーさん、嬉しそうな顔してることが多くてこちらも嬉し。
Sa.Qua.Na
 4皿を1.トゥルボ 2.ソール 3.ドラド 4.ヴォーで構成すんだから凄い。ハナれ技。Alex以外のフランス人じゃ空中分解じゃー、って気がする。
 ソールはクレームっぽくからめて、細く可愛い目のポワロとのコラボ。ポワロの甘さがたまらない。コレはアレです、かつてのランブロワジーのユイットル・ポワロを思い出しましたな。
 ドラドのエテュベ、は、この打順でいいのか?とおもったら、このドラドが、魚の香りを最も強く鋭角的に引き立てられていて、なるほど、コノ位置か。
 ヴォーは、煮ナヴェと生(?)エシャロットがいいコンビ、“ラッキョウか”、マーシュが映える。いいヴォー、噛んで肉旨し。

 マルシアックは「Alexの地元の酒よ」リコメンド。
 へべの後ろは画廊経営夫妻(?)風で、二人ともスンゴイお洒落な服。デルフィヌを捕まえるとスゲー勢いで話し込む。シャベリー。AQ!後ろはポロシャツ風おっさん夫妻、この翌日に帰途のBus Vertsで乗り合わせた。この人らも、パリ辺りから食うためだけに来たのだろうか?

 これだけ細かく多彩多様型の料理でありながら、時として卓上の感想が「ランブロワジーみたい?」…となるのは、偉いこっちゃ。
Sa.Qua.Na
 プレザンタシオンでは、ガラス皿をまったく使ってないのは、イマドキそーとー珍しく、多分、意図的。これもイマドキ多用される大面積系の皿も殆ど無くて、キュリッと集中的に凝集的に見せる皿・器が多い。京懐石でいう“つんもり”って感じに近い。そういえばテーブルサイズも抑え目で、きっと仏人には「Zenだ」というと深く納得するであろう。
 クトーは完全に使い回しで、ブラスのと同じメーカーにSQN名が彫り入れられている。これを木の支持台に置く。この台はよく出来てて、「ブラスより使い易い」とへべに評判。
 カトラリーなど配膳にはちょっと流行中の木の四角盆、ここでは黒色。

 釣り好きなAlexの魚への愛情、Rodez出身Alexのブーレ・フロマージュ・クレーム・ヤウールなど乳製品への理解の広さと深さ、そこに現出する世界である。
 モンティパイソンっぽいノッポさんが最も愛想良くニコヤカ、鬚眼鏡のイケメンは寡黙。
[↑メモ版:工事中]

2010年 8月 ☆☆☆

 [ Vert Olive ]  [le fil conducteur...]
 *Lotte pochee au citron vert,
  liveche & coriandre, un bouillon chair a la noix de coco & huile de Combava
 *Un filet saumon d'ici etuve,
  creme de celeri rave, miettes de lard, fleurs de persil & Hollandaise
 *Maquereau cuits au sel,
  boeuf cru & huitres, emulsion de riz grille, jus de viande, & chou poele
 *Quelques encornets justes raidis,
  chair de tourteaux, tomates, fevettes & amandes fraiches, vinaigrette a l'huile de Gaillet
 *Dans une feuille de cote de blette,
  echine de porc poele, langoustinem gingembre & herbes aromatiques
 *La poitrine de pigeonneau roti,
  beignets de courgettes & graines de celeri, creme de concombre, jus & pamplemousse
 *La fromage
 *Un flan dit "boulanger" aux fruits de la passion,
  creme glacee a la Reine de pres, eclats de meringue & framboises roties
 *Un croquant aux amandes & noisettes,
  abricots, myrtilles, creme d'amandes & yaourt

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  La Table du Gourmet / Jean Luc Brendel  ターブル・デュ・グルメ / ジャン・リュック・ブランデル
  
5 rue de la 1re-Armee 68340 RIQUEWIHR  03 89 49 09 09 (Fax 03 89 49 04 56 ) www.jlbrendel.com/
ferme vacance de jan., merc. a dej., jeudi a dej. et mardi (avril-mi-nov.), mardi et merc. (h.s.)
Chef: Jean Luc Brendel
・
Michelin ○/GaultMillau 16 (2001)
Michelin ○/GaultMillau 16 (2002)
Michelin ○/GaultMillau 16 (2009)

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TGOU1 [↓メモ版:工事中]
2002年12月 ☆☆☆

 *干大根、干柿、干林檎のペロペロキャンディー風
 [ L'envolee des Saveurs ]
 *Mises en Bouche en 3 services
  プレスコプフとケパー、人参天クレーム、甲殻ジュレ・キャビアにカレークレーム
 *St jacques grillees piquees de Pommes acides de mon verger,
  La Peau au Beurre sale, le jus des Pommes a boire, et des Noii
 *Un Nuage de Choux Fleur au Caviar de Hareng accompagne de Naan
 *Vapeur de Bar de Ligne, Gouttes d'Huile d'Argan , Supions, Citron confit au Sel et Poireaux
 *Rouget Barbet Petit Bateau, juste raidi , Baekeoffa aux Chataignes et Legumes Anciens le Jus au Raz El Hanout
 *Langoustines au Jambon cru de Cerda , Lamelles d'Helianti, Lait Mousseux aux Truffe a boire
 *Diamant Noir en raviole ouverte au Foie Gras
 *Faon de Daim aux Epices chaudes et Epines Vinettes , Choux, Raisin, Champignons sautes au Wok, un Gros Spaetzle souffle au Beurre sale
 *Degustation de fromages Fermiers , accommodes d'Herbes, d'Huile de Toscane et Epices
 *Petit Mezze de Desserts d'hiver ( 3 assiettes )
  マロングラッセ
  ジャックフルーツの刺さった薔薇ソースのグラス、レユニオン島のライチ
  クレモンティーヌのパピヨンのブラマンジェ、ココの細切り添え
 *ミニャルディーズ
  焼きエピス、ショコラクレームにテのゼリ、筒入りオリーブのクレーム
 +95Chateauneuf du Pape Hommage a Jacqes Perrin / Beaucastel

[へべ]
 Jean-Lucの料理。正確で精妙で面白くて、それが皆"旨さ"のためにある。ブラボー! アート野郎な内装もグッとくる。サービスの親密さもいい感じ。大好きな店。サイトで予感はあったけど、こんなに(本当に)いいとは思わなかった。(失礼)

 予想はしてたけど、Jean-Luc本人、ヘンな人で嬉しかったなー。半袖コックコートの料理オタク、ってな印象。冴えた料理は、あれこれ炸裂しつつも完成度が高くて、想像をはるかに上回る素晴らしさ。帆立に林檎ジュース、の皿には脱帽。

●リクヴィル。テーマパークのような小さな観光町。水が買える店は2軒だけ。
●夕方の散歩でTable du Gourmetの下見に。街並に似合う小ぎれいな細工の看板と、ガラス窓から見える真っ赤な店内のギャップにたじたじ。卓上のカボチャ(飾り)や入口のノエル装飾に「大丈夫か、オイ」感やや強まるが…?

●床を上げてあるのか、頭にぶつかりそうな高さにハリが走る店内を「ここ気をつけてね」と注意を受けつつ、ずずいと奥へ。ゲルマン人はアウト、ぼくたちはセーフ。
●真赤に塗られた漆喰の壁、を、黒々とひきしめる焦茶のハリ。黒い(鋳鉄風だけどそうではない)壁照明と並んで、ずらりと石を埋め込んでみたり。壁には、お似合いのアブストラクト。卓上には水用の赤いグラスと真紅の薔薇、そしてカボチャが。

●Jean-Lucの料理は、旨くてエキサイティング。意志的にきっちり計算された火入れと塩づかいを感じる。魚も肉も、そして野菜も火入れはすべて精妙そのもの。ルジェの皮のパリパリ感、Barの吸い付くようなしっとりとした身、ガルニのポワロのやわらかな甘さやタケノコみたいな灰色野菜のシャクシャク感、仔鹿の完璧な食感。帆立にはリンゴの皮と身とクルミを合わせ、ソースの代わりにグラスのリンゴジュースを飲むという仕様。熱々のリンゴジュースのフレッシュな酸に出会って、帆立の味の、こっくりとした深いところが、巧みに引き出されてくる。
●皿が来るとプーンとカレーのいいにおい。オリエンタルなスパイスが好き。らしく、要所に小粋に使用。甲殻ジュレ(すごく凝縮)にダイコン細切り、上に添えたクリームにはカレー粉(系スパイス)をパラリ。尻尾を舳先に見たてたルジェの小舟の下は、"ベッカオッファ"と名乗りつつ、まるでタジンから出てきたような、すっかりモロッコ風のスパイシーな根菜のとろとろ煮ふくめたもの。

●サービス陣は皆、女性で、これはフランスでは珍しいかも。ネクタイのかわい子ちゃんをずらりとそろえたラルンスブールに続いてこの店、とあって、「制服のかわいこちゃんヲタの人はアルザス必訪!」などとくだらなくも盛り上がる当家であった。La Table du Gourmetは皆黒服ながら、ミニのお嬢さんたち(フロマージュの説明、など修業中)、ロングタイトの金髪姉さん、パンタロンのヴァレリー、眼鏡のフレームがトンがってるマダム、と装いはそれぞれ違うところも、この店らしい。
●カウンターの上には鉄瓶がずらり。アンフュージョンを頼んだら、案の定これで出てきた。

●仔鹿Faon de Daim、マダムは「バンビだよ~ん」と説明してくれた。この肉がすこぶる美味だった。やわらかい、でも肉のセンイの感じられる、ジューシーな、こんがりした…「赤身の肉の旨いの」の理想をすごくピュアな形で皿にのせた、みたいな。栗とレザン(?赤い)とキャベツと茸を添える。これがまたいい。Spaetzleもここのはsouffle! 中空みたいになってて表面に焼き目をつけた軽い仕立てのを1ヶ添えてあるのがオシャレ。
●軽い、で思い出したのが、カリフラワーのクレームに添えられてきたナン。手のひらサイズの小さなナンは表側がこんがり、裏面が白くてふっくりしていて、こんがり面にチラホラ塩の花の粒が光る。これをブリニ代わりに、カリフラワーの甘さがやさしい白いクレームと黒いニシンのキャビアをいただく趣向。実に小粋。
●Jean-Lucのトリュフはよく香っていた。丸くて薄いギョーザの皮様の円盤2枚、その間にこんがり焼いた小さなフォアグラをはさんだ"ラビオリouvert"の上に、断面の大理石模様も艶めかしいトリュフを数枚。そこにトリュフのソースがたっぷりと。温度なのかトリュフの質なのかジュやオイルとの合わせ技のなせるものか、…とびきりの香りにうっとり。

[AQ!]
 料理との出会いの感動って何だろう。考えると不思議になるのだが、このアルザスはリクヴィールの村にあるTGでJLBが作り出す皿は、ワシらの心を揺さぶってやまない。
 この日は、年末の、パリに戻る日の一日前の日曜。当初の腹づもりは、マーレンハイムなる2つ星18点Le Cerfであった。土曜のLembach " Cheval Blanc "が取れていたので、
「おお、馬から鹿か。何と馬鹿馬鹿しくもめでたきことよ(ワシら向き)」
と喜んでいたのはよいが、Cerfから返ってきたFAXは無情にも
「今年はその日から冬休みなんだよ~ん」
との由を告げた。
 さて、困った。1日早くパリに戻っても良いのだが、日曜のパリでは寂しい(御存じの通り、お店は軒並みお休み)。アルザス乃至は帰途途中にどっか無いかと、ミシュランゴーミヨひっくり返して鳩首捜索会議。
 クリスマス~新年休み中の日曜で、なかなか難しい。そんな中で浮かんでくる候補は、どれもまぁまぁって感じで大した情報がなく、決め手に欠ける…んだよなぁ。
 情報といえばネット…というわけで、店名を片っ端からググって眺めている中でみつけたのが、このTGのサイト。
 お、お、お、何やこりゃ。妙にエキセントリックでイカレポンチ風の、だがクールでイカしたページである。よく見ると、シェフだという男が写っているのだが、変な眼鏡をかけてる目がトンでいる。サイコというかヲタというか…、が、入ってるよな、コイツ。
 このページ発見により、我が家では人気沸騰のTGに、勿論すぐにFAXを出す。10日ばかりして「イヤー、待たせてスマナカタなー」って調子でe-mailで返信が来た。予約をGet!

 サイトの、そして実際の店内内装の基調色は、赤である。真っ赤に塗り潰した其処に、黒でザックリと線を引く。赤と黒。ところどころに白い丸を置き、その中に白緑色でOxalisを描く。
 ちょっとレストラン離れした色彩感覚である。ワシには極めてクールで格好良く映るが、嫌いな人も少なくはないだろう(^^;)。
 店内のフロア陣は、珍しいことに全員が女性。若い娘たちが(LAほど美少女美少女してないけど)赤い床の上を滑って行く様は、ほとんど「サスペリア」の世界である。サイトではヴィスコンティじみた虚仮威しも多用されてるしね、おどろ面白い。
 こんなエキセントリックなカレであるが、サイトに上がった料理写真を見ると、ガルグイユもどきやブラス風のクーランがあったり、はたまた「自然と創造」方向の作品が見られたりして、期待が持てる。
 実のところ、旅行出発前には当家一番の「楽しみ」の店になっていたのだが、この“楽しみ”と言う所の含意は、眉唾混じりの半信半疑、博打的な意味合いの、ハズしたらハズしたでオモロイやんか、という類いの物であった。
 ところがぎっちょん、いきなり話は結論に飛ぶが、TGで出会った現実は、その広~い想像範囲のmaxか或いはそれ以上を行く大ホームラン。大ビックリ仰天でありました。

 アルザスワイン街道中の人気スポット、リクヴィールは、中世風の落ち着いてこぢんまりとした造りの町の中にワイン生産者が試飲ショップを並べる小さな集落。…というと素敵だが、次から次へと観光バスが乗り付け、名物ヴァンショーを片手に観光客が土産物屋の軒先を流して行くのが喧しい町、とも言える。
 観光タウンゆえ、日曜でもほとんどの店が開いているのが、賑やかで嬉しい。その町の只中にTGは構えている。外壁は水色で、そこに古風な看板がかかる。中を覗くと、真っ赤なサル。
 この店、本当はやっぱり、町を出て、日照の悪い山の斜面にでも(日照の良い斜面はみな葡萄畑である)好き勝手な館を建てて営めば、まことに「らしい」のではなかろうか、とは思われる。

 ボンソワ。
 赤と黒の館の奥深くに招き入れられる。サルの奥半分は天井が低く、特に黒くゴツい梁が張り出している所だと、170cmくらいしかない。ボクらはOKだけど、ゲルマン系は大仰に身を縮めて歩を進めていた。着席した横の壁からはヌッと石が生えている。イケてる怪しい絵画。
 この時期らしく、店の入口にはクリスマスツリー、店内BGMはクリスマスソング…、とこの辺りは俗っぽい。聖俗入り乱れるとゆーか、こだわりと非こだわりがマダラになってるのが微妙にヲタ的。
 予習の成果で、御注文はムニュデギスタシオン風の「ムニュランヴォレ」にほぼ決めていたので、カルトは余裕をもって“見物”。「根菜と冬ハーブ」なんて前菜は、「らしくて美味そう」。アルザス伝統料理に触発された皿にはコウノトリ(アルザスの象徴)が付されている。

 リクヴィールにての食事とあって、ワインは当地モノかなぁ、と思っていたが、カルトドヴァンを眺めていると悩ましくなる。アルザス全体の傾向のようだが、ローヌのちょい古めのコレクションに魅力あり(ブルゴーニュは若く、ボルドーは店に依る…かな)。
 93ムーリーヌで300Eちょい、70-80年代のジャブレシャペルが200E弱、80年代のシャーヴ・ボーカステルが83くらいまで200E弱、と「お、これもいいじゃん」クラスが並ぶ。
 その中に95のオマージュを発見。「オマージュがありましたよ、おかーさん」。結局、これに決着した。
 たしかに若いと思うが、今晩は10皿を超える長丁場なので良いのではないか。また、ボーカステルのノーマルのパプより、オマージュは若い内から特徴を発揮するような気がする。
 メートル・ソムリエ役を勤めるのはマダム。「ブレインストーム」に出て来そうなキリッとした立居振舞いで、フロアを統括する。ブランデル夫人なのだとばかり、この時は思ったのだが、ゴーミヨによると姉妹であるらしい。
 ワイン番としてかなり気合いが入っていて、オマージュを頼むと「オ、ソーキタカ」と厳かに頷き、ボトルを掲げて現れて「こちらはデカンタせずに瓶からサービスして行きたいと思う」と静かに宣言。ワシらも、望む所である。
 テイスティングは、卓上で少量注ぐと、マダムがグラスをグルグル回し、それからこちらへ差し出してくるタイプ。信じられないような荘重なアロマ、神々しい深い味わいは最初の一口から押し寄せてくる。
 思わず(作戦ではなく)胸に手をあてて感服の長嘆息…してしまったのだが、それを見ていたマダム、「あ~、うんうん、わかったわ。アナタたちにはコレを飲まれてしまってもしょうがないわねホーホホホ」…ってな具合の柔らかい表情に変じた(…と思う)。

 アミューズ。ケイパーが引き締めるプレスコプフは、「ああ、これが本当のプレスコプフだったか!」という説得力の旨さ。甲殻ジュレが大変よくとれていて美味なのに加え、カレー風味を利かしたクレームと共に行くと思わず唸る。
 人参天も良いのだが、揚がり具合は油切れがもう一つという所か。しかし、この時には、これが一晩を通しても「指摘できる唯一のミス」であろうとは思わなんだ。続く皿から皿、完成度高いのよ、コチラ。
 柿(「アナタたちは日本人だから知ってるわよね、カキよカキ」とマダム)と黒大根と林檎の超々薄焼(1mmにも満たない)をつまむ。この薄さにして、溢れる程の大根の香り、林檎の酸、干し柿のエッセンス、を純化したような味わいである。ホームランをかっ飛ばす店には、決まって「なんで、こんなモノがこんなに旨いの?」ってのがあるが、これもそうかも。
 帆立は料理名を読んだ時から「これは良いでしょ」と思っていたが、本当にイイ。帆立の坊っちゃん臭いダラシ無さを林檎でキリッと締めながら、ノワがコクの部分で共鳴して深みを出す。ジュドポムが筒に入って、「これは間の手で飲む」というスタイルで供される。普通は本体にかげてしまうのを、ハッキリ分離し、時間差をつけた。それにより、帆立の印象が鮮明になる。この手法は、帆立独特の曖昧さに対する解答になっていて、ワシも日頃の帆立感がソレやから嬉しい。奇しくも、料理はまったく違いながら、ラルンスブールのJGKも、「帆立の皿ではソース別添」で供していて、この点はとても興味深かった。
 そういえば、「キャビアabecシューフルール」ってのもJGKと一緒だな。JLBは、90Eのムニュゆえ、キャビアはHareng、ワシ的にはこれでもOK。シューフルールのクレームと共に酢漬けシューフルールを一片添えたのが巧み。“ナン”が付いてくるが、焼香りの素晴らしいナンだった。
 バールは素晴らしい料理で、個人的に殿堂入り。ちょっとウルウルきた。ジャガイモ薄片とシトロンコンフィとポワロの上に蒸されたバール(見事な火入れ!)、イカゲソとマテ貝殻にイカの細切り。過剰盛込み系に見えて、凄い統率力は、シトロンの酸味とアルガンオイルの相乗効果か。この皿に限らず、JLBは酸が上手で美しい。
 ルジェはRaz El Hanoutが働き、中東色の強い甘くエキゾチックな仕立て。栗と根菜類をワインで長時間煮込みした…のが“ベッカオッファ”見立てで、その上にルジェの焼いたんを乗せる。ルジェの尻尾がピンと残されているのが珍しい。ま、日本人やし、先端の少し焦げたルジェ尻尾まで食ってみたら、旨かった。メゴチの天麩羅…とか、そんな感じ。この皿全体は「うめぇうめぇ」ですぐなくなるタイプ。
 フォアグラトリュフのラビオリはオーソドックスで、「価格内」の素材の質だが、トリュフの香り出しが“上手”。
 ここまで来ても、胃袋はガオ~~ッ!!と言っている。それだけ精妙で、レジェールだ。
 仔鹿(「バンビよ~ん」はマダムの説明)はシットリとしながら肉汁に溢れ、肉質・調理ともに見事である。いやー旨い。タオヤカ系の鹿としては屈指の出来で、レジスマルコンの鹿を思い出したが、今日のは更に季節の分、味が乗っている。シュー、レザン、茸、栗をWokで香ばしく炒めたガルニがまた良い。コンガリとしたシューのいい匂い。

 「連日の連戦」の時には我が家はフロマージュは抜く戦法だが、JLBの魔法で、今日はいただく(決して軽いムニュではないのだが)。フロマージュシャリオは娘2人組で、指導教官モードが堀ちえみを思い出させる。
 マロングラッセの極上の軽さ、ライチ・薔薇・ジャックフルーツの奏でるエキゾチック、開いたクレモンティーヌの蝶々見立てが可愛いブランマンジェ。
 更にミニャルディーズではブラス風ショコラクレームにテのジュレをかぶせる工夫で…。んで、アンフュージョンは南部鉄瓶でサービスされ…。

 …とか言っている所に御大登場。厨房が忙しいのだろう、途中では出て来ないのだが、もうどの卓も終了…というか、残っているのは遠来のワシらと後は常連らしき卓ということでサルに現れたのかな。
 このオッサン、イカれたコックコートでアートにクールに決めてんのか?…と思いきや、現れてみるとごくごくラフなお姿で、しかも半袖。いい加減太ってるし、南の島でバカンス中の床屋のオヤジみたいだ。
 精一杯のエールを申し伝えるが、相変わらず、「オイチイ!スゴイ!アナタワアルザスノカガヤケルホチデチュ」程度にしか伝わらんだろうな…トホホ。JLBは「ジャポンでしょ~、俺は日本に凄く関心があって好きなんだよ。ホラ、その鉄瓶もな!」と笑ってました。
 カレがなぁ、新奇なアイディアを活かした面白い料理を作るんじゃないだろうか?…とは思ってましたよ。それはその通りなんだけど、この抜かりのない高度な精緻な技術と、この抜かりのない過たぬ美味を決める舌の持ち主であるとは!
 やはり、人間って面白深い、なぁ。
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