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 メールでリレー小説2004 第三章 

   第一節 「宴の夢
   第二節 「フェーヴ・ドゥ・メール
   第三節 「緑色の夜
   第四節 「藁色の世界
   第五節 「迷走航路PART2
   第六節 「夢の傍流
   第七節 「終わりの気配
   第八節 「其は彼の人か
   第九節 「深緑の視線
   第十節 「再会の街

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☆第三章 第一節 「宴の夢」

 緑の塔の頂につるされてから、どれくらいがたっただろうか。
 なんとか無事に俺達は、下界へ戻ってきた。
 あのとき塔の頂で見えた、東京へ向かっているように見えた津波が気にかかる。そんな心配も、ワリーヤ、ヒョードリ、カムチャッカの海の
「ザ シャースチエ ズダローヴィエ」
 の声でかき消された。
 そう、今は割烹「カッポレ」のオープニングセレモニーの真っ最中。おれも
「乾杯」
 とグラスを重ねる。シモーヌも店の隅に独り陣取って結構な勢いで杯を重ねている。かなり酩酊した様子で、何やら独り低い声で口ずさんでいる。
「〜訳っもなく酒を飲み、、うp、、片隅できいていたボッブッディランー〜オール アロング ザ ウォッチタワー〜、ううp、もの見の塔に吊されて〜」
 たまたま通りかかったカッポレの若い従業員ロスケノフが、これを小耳にはさんで仰天した。
「お、お客様、そのような危ない歌はここでは・・・」
「何だっての?うるさいわね。アンタもほれ、これ一杯やんなさいよ」
「あの〜、お客様・・・」
「ほらってば、乾杯〜!」
「・・・、うp」
 シモーヌに無理強いされた杯の中身も知らず一息に飲み干したロスケノフは、たちまち顔面蒼白、心頭滅却、御名御璽の状態に陥った。息も絶え絶えとなってワリーヤとヒョードリに担ぎ出されていく若者はしかし、担架の上で弱々しくかっぽれ踊りの手振りをしてみせるのであった。見よ、何たる健気さ!居並ぶ飲み助たちは彼を讚えて足をどすどすと踏みならしながら、盛大な乾杯とともに担架を見送るのであった。
「次はおまえじゃあ〜っ」
asb3-1  シモーヌの両の眼は爛々と輝き、そのたてがみは炎の如く燃え上がる。
 彼女のヒヅメの指し示す先には、藁原叔父貴がいた。わらわらおじき。変な名前だが本名だ。
「飲め、ワラオジ」
 シモーヌは叔父貴の手に無理矢理グラスを握らせると
「おまえのひとみに乾杯じゃあ〜っブルルルひひ〜ん」
 一声いななき、自分の分を一気に飲み干した。何者だこいつ。たてがみの炎は激しさを増し、ほとんどシモーヌは燃えていた。
 天井の隅からfushianaさんが睨んでいる。煙に噎せてなみだ目のfushianaさんは、いつもより不機嫌だった。
「お前、燃えとるぞ」
 その声に振り返った赤いシモーヌはfushianaさんに猛然と近寄り
「飲め!」
 と叫んだ。
「酒ならマイグラス、はい、乾杯! しかしお前、燃えとるぞ」
「燃える心なら誰にも負けない!」
シモーヌは叫んだ。たてがみの炎は一段と激しく燃えさかった。
「燃えとるのはお前や、鏡をみてみい」
 また振り返ったシモーヌが会場奥にある姿鏡を見ると、そこに映っているのはシモーヌがふたり!
 たてがみをふり乱して燃えているシモーヌと、そのたてがみの炎から形作られた真っ赤なシモーヌ。どうやって話すのか、炎のシモーヌは炎のカクテルグラスを片手に鏡の中のシモーヌに向かって
「乾杯!」
 と叫んだ。
 俺は非常に居心地の悪い思いをしている自分に気が付いていた。実はアルコール依存症で肝臓を壊し、もう4年近く断酒を続けているのだ。このくらいやめていると、宴会にいて同じ状況にあるヤツは、すぐに目に付く。それは「カッポレ」のマスターの母方の親戚にあたる、ご隠居だった。近寄ってみると、向こうもそれと気が付いたようで
「ウイルキンソンのジンジャエールやるかね」
 とコップに入れてくれる。
 俺はご隠居と乾杯して、そのまま腰をおろそうとしたのだが、突然バラバラと屋根を叩く物音がした。格子戸を開けると外は真紅の雲に覆われており、麻の実が激しく降っている。
 ブラッドピジョン!
 実を投下した鳩どもがカンパイカンパイッと騒ぐ。バラバラ、か、乾杯……
「おい、どうした?」
 揺さぶられて目を開いた。ワラオジの、その奇矯さに似ぬ優しい眼差しがあった。
「あ。宴の夢を見ていたようです」
 つまみ菜の葉陰。眼下では麻の実のように小さい港区が水に覆われている。
 俺はいつの間に眠り込んでしまったんだろう。さっきまで、コタツに入って藁叔父、ディカプリ夫、河童の宇宙人、シモーヌと紅白歌合戦を見ながら乾杯していたような気がするのだが。いやいや、シモーヌのミニクーパーのなかで眠ってしまったんだっけ…。
 相変わらず記憶がはっきりしない。俺は眠気覚ましに窓を開ける。外の空気が、熱い体を心地よく冷やしてくれる。後ろではご隠居の
「Тост」
 の声が響く。いつの間にか戻ったヒョードリとワリーヤが、空腹なのか
「пирожок、пирожок」
 と叫んでいる。
 気持ちのいい夜だ。空を見上げていると雪が降ってきた。
 手のひらに雪片を受け止めるとあっと言う間にとけたが、それが赤い。なめると鉄臭い血の味が口に広がった。はらりと舞い降りる雪を炎のシモーヌのカクテルグラスに受けてみる。いっぱいになったところで、手で覆って溶かすと美しい赤い液体になった。カクテルグラスをかかげて、
「A Votre sante」
 とつぶやきながら、赤い液体をゆっくりと飲みはじめた。
 この血の味は、アブゾーが流した血だろうか、などと考えながらゆっくりと美しく赤い液体を飲み干した。


 
☆第三章 第二節 「フェーヴ・ドゥ・メール (Feve de Mer 〜海豆〜)」

 光が踊っている。
 キラリキラリと跳ねる。
 (う、眩しい)
 風が幾千枚の緑の葉を揺さぶると、朝の木漏れる陽光が、俺の顔面でアントルシャを連続で決める。
 [y Blu]…ダーツバーの引き裂けた看板を立て掛けただけの俺の塒を寝惚け眼で見回せば、ガラス球に満たされた塩分濃度25.3psuの水に浮かぶ海豆が、気持ち良さそうに発芽を開始している。
 ずろりと音がするので見上げると、ワラオジがヲタモエの蔓梯子を降りてきて
「おはやう!アサノミの調子はどうだい?」
 とガラス球を覗き込む。アサノミとは、ワラオジが海豆につけた愛称なのだが、相変わらずエキセントリックな発想をする叔父貴だ。
「海豆は養殖できるのか?」
 ヒューン、久しぶりの登場に興奮気味の鳥の脚が、さっと誤変換する。
「海豆の洋食はできるのか?」
「はい、広島の蔓水緑さんがオーナーシェフの洋食屋台『じゃけん亭』が海豆料理を名物にしてます」。
「そーか、生きているうちに一度食べたいものだの〜」、ふぅとため息をついて遠くを見つめるワラオジ。
 その時、表通りから
「洋食屋台じゃけんの〜、じゃけん亭じゃけんの〜」
と蔓水緑らしき声がする。声のする方へワラオジが駆けだしてみると、屋台をひくシェフの姿が見えた。遠目から看板を見ると、
「・・けん亭」
 と見えた。あわてて近寄ってよく見ると、
「しゃけん亭」
 とあった。ワラオジはその場で崩れ落ちそうになった。気を取り直して、屋台を引く緑の髪のシェフに名前を聞くと、
「わしは、蔓水録じゃけん」
asb3-2 と答えた。続けて、
「うちの名物は海豆の和食じゃけん」
 という。ワラオジが、広島のじゃけん亭との関係をたずねると、
「あっちは、ぱぱの店じゃけん」
 という。
 緑の髪の彼は色白で、蔓が深い水色の眼鏡をしていた。さくらんぼをつなげた首飾りをしていて、ワラオジがそれをみつけると1つくれた。さくらんぼを1つくれたのではなく、さくらんぼの首飾りを1つくれたのだ。ワラオジに。それが蔓水録と過ごした最初で最後の一日だった。
 翌朝、ワラオジの姿は塒になかった。
「じゃけん亭に行くる」
 と録音を残して。
 録の姿もなかった。ヲタモエの蔓梯子を降りて、いや、登ってか、とにかくカケオチしやがったのだ。
 俺は緑の水に囲まれて一人きりだった。寂しいので蔓電話を考案し、設計し、作成した。
「もしもし?」
 俺は問いかけた。蔓は振動し、振動は蔓延する。周り中の蔓、周り中の緑の水に蔓延する。
 蔓電話は叫ぶ「もしもし?」緑の水も囁く「もしもし?」叫びと囁きを拾いあげた蔓電話はまた周り中に振動を蔓延させる。
 蔓の絶叫の中、緑の水は俺に問いかけを行なう「もしもし?」ざわめく緑の水の液面が私を誘う。
 私が水に顔を近付けると水中から緑色の何かが無数の蔓をゆらめかせながら、ぐんぐん伸び上がって来ているのが見える。
 しかし何とも塩臭い水だ。
 次の瞬間、それは水しぶきとともに急激に緑色の姿を水上に現した。そして尚も天をも突く勢いで空に向かって伸び続けている。
 それは異常に巨大化し、大木と化した海豆が獣じみた成長を続けるいかがわしい姿にほかならなかった。
 あまりの光景に出くわしたせいか、俺は逆に妙にマッタリした気分になり「海ならずとも塩漬くみどりの蔓茂り」などとつまらん惹句をつぶやいた。
 俺は惹句と豆の木のアンビバレントな取り合わせに酔い痴れているうちに、いつのまにか自分が、貧乏だが母親思いの元気な少年になっていることに気付いた。
 よし。
 俺は目の前の一本の蔓に飛び付くと、一心不乱に豆の木を登り始めた。絡まり合う緑の蔓から塩辛い水がボタボタ落ちてきて俺の服はびしょぬれだ。でも子供だから気にしない。
 やがて雲の上に着くと巨大な宮殿があり、一人の巨人が食事の支度をしていた。
「なんだお前は?」
 俺は胸を張り答えた。
「僕は惹句!」
「そうか惹句、ようこそ。つるむらさきのベッドでひと休みしていかんかね?」
 巨人の指さす方には、こんもり積まれた濃緑の葉が俺を誘うように、みずみずしい香りを放っている。でもよくよく見ると、その葉はすでにライム風味のドレッシングでキラキラ輝いているじゃないか。
「サラダの具になるのはごめんだね」
 俺はスタコラ逃げ出した。広間の片隅、泉のほとりで息を整えていると
「やあ」
 と声がする。
 水鏡を覗いてみるとそこに映っているのは藪蛇ヶ原虻造の頭部。惨たらしく引きちぎられた頸から激しく血が滴っている。一歩退くと、水鏡の回りには、緑青を吹く大鏡・今鏡・増鏡が蔓荼羅を形成していた。それぞれ、虻造の脚部・胴体・腕を映している。四肢から吹きだす血は、下界の雲まで赤く染めている。
 がちょ〜ん…、と驚く俺を
「あほ、金の卵を生むんは鵞鳥ちゃうわ、メンドリや」
 と冷笑する虻造。
 ジリリ、ジリリリ。
 その時突然、蔓電話が鳴った。


 
☆第三章 第三節 「緑色の夜」

 ジリリ、ジリリリ。
 蔓電話が鳴った。
 赤く染まった下界の雲や、勝ち気な虻造の頭部が映る水鏡を目の前にして、俺はどのくらいぼんやりしていたのだろうか。確かに俺は、自由な空の広がりを見たんだ。ゆすらうめのような白い花が咲いていた。
 ジリリ、ジリリリ。ジリリ・・・
「はい、ほー、はい、ほー。こちらは法蓮華鏡。感度良好。小人は何人?どーぞっ」
 オンフックにした蔓電話スピーカーから響くワラオジの声はどうやら上機嫌のようだ。法蓮華鏡と水鏡ナントカ鏡その他鏡どもの間に、ビビビッと蔓電話アンテナがバリヨン状態になったってことだろうか。
「7人、と言いたいとこだけど、小人なんかいやしないよ。巨人は見たけどね」
「その認識は間違っとるぞ」
 いきなり混線したのはfushianaさんである。
「いきなり間違っとるとはなによ!」
 今度はシモーヌが混線してきた。
「あんたはいつも天井の隅をつつくようなことしか言わないわね」
 俺はシモーヌに、彼女の父である虻造の変わり果てた姿を泉のほとりで見つけたことを言うべきか否か悩んでいると、悩んでやったのが馬鹿らしくなるような調子で、蔓電話の向こうでヒステリックに喚き続けている。俺はただオーマイベイビー状態でため息をつくしかなかった。
 すると混線の向こうから、俺に精神感応したのだろうか、fushianaさんの鼻歌が聞こえてきた。
「マイベイビー、ベイビー、バラバラ〜」
 それにつられて脱力したのであろう、シモーヌも歌い出した。
「…ベイビー、ベイビー、バラバラ〜、アブゾー、バラバラ〜」
 …ん?アブゾーの声が混線に加わってる。
asb3-3  さらに「藁夫〜、ワラワラ」、それに対抗して「ワリャ人形〜、ワリャワリャ」と、混線がウィルスのごとくに混線を広げ、バラバラのリズムに合わせ世界の電話回線は一つのバラバラを歌い、同時にパラパラを踊り始めた。
 受話器からひょっこりと顔を出したfushianaさんもパラパラを踊る。振り向くと満席のアテネ・オリンピック・スタジアム中は総立ちとなり、バラバラで一糸乱れぬパラパラを踊っていた。
「夜明けまで踊りつづけるんじゃー、わしになって楽しもう」
 fushiana さんはそう言ったかと思うと受話器から引っ込んだ。
 ガラスに写る自分を眺めるとそこにはfushianaさんの顔!
 振り向くとスタジアム全員の顔がfushianaさんになっていた。fushianaさんは電話回線で混線しfusihanaさんとなり、いや、蔓電話だから、蔓が絡んでfutusiruhanaさんになった。
 そのまま、みんな総立ちでパラパラを踊り続けていると、東の空が白みはじめやがて地平線から巨大な聖火ランナーが昇った。真っ白なランニングシャツを着て、
「一粒300メートル」
 の文字をバックに、空を埋めつくすチョモランマのようなその雄姿を、人々はただ茫然と見上げていた。茫然と見上げながら、それでも全員パラパラは踊りつづけた。
 見よギリシアの朝ぼらけ。今ここに人類文明の夜は明けた。futusiruhanaさんは絡んだ蔓を剥ぎ落としfusihanaさんになりかけたが
「オマエラー、誰に断ってオレの神聖なアクロポリスでパラパラやってんだー」
 と怒鳴られてfusiさんとhanaさんに2分された。
「えっ誰ですかあれは」
「オリンピック理事の方に問い合わせてみては」
「いやむしろ警察に」
「だまらっしゃい」
 再び怒鳴る声は神々しい。
「このオレはギリシア神話最大の女神。大神ゼウスの頭から生まれたといわれ、学問・技芸・知恵・戦争を司る。アッチカの守護神。アテネだー」。
「女神?」
 fushiさんが怪しむ。
「いまオレって言わなかった?」
「言った言った」
 騒然とする中、聖火ランナーの方から
「オレ、オレオレ」
 と糾弾の叫びが聞こえる。
 見ると今や更に大きく膨れあがった聖火ランナーの正体は白い鷺の群れで、鷺は口々にオレオレと鳴きわめいている。
 場内が興奮の坩堝と化したのを見てとったfushiさんとhanaさんは坩堝に身を投げ核融合を果たしてfushianaさんに戻り、遷移エネルギーの剰余hを宙空に放射した。hはアテネ上空のプラズマの作用でhokui40度線に変ずると1粒子300mの蔓を伸ばしパチモンの女神の真上で猛烈に勢いを増している。
 女神は左手をかざしながら、夜明け前の薄いかがやきに拡がる蔓の行方を目で追う。パチモンの女神は何故か、藁夫に会いたいと思った。それを察したfushianaさんは、
「しっかりくっついとけよ」
 と言うとへその速度調節つまみをカチカチッとまわした。
 緑色のきらめきを残して、二人は東の空へ飛び立っていった。


 
☆第三章 第四節 「藁色の世界」

 そこは藁色…恋も藁色…夢も涙もみんな藁色…。
 長い長い距離を落下しつづけたfushianaさんと女神アテネは、小山のように積み上げられた藁の真ん中に頭から落っこちた。
「ああびっくりした」
 藁まみれの頭を振ってあたりを見回した二人の目に映ったものは…。
「おいオッサン、なんだよこれは」
「お前さん女神ならもちっと女神らしい口をきいちゃどうだ。ここが藁夫発祥の地、藁夫ランドだよ」
 二人の目に映ったものというと、藁藁と現れる藁人形、藁葺き屋根のお城、藁人形のパレード。
 確かに藁ばかりだ。
 藁夫ランドとやらができるほど、ここでは藁夫は有名なのだろうか? そんな疑問を持ちながら、藁夫ランドとはどんなとこなのだろう、と二人は歩き始めてみた。すると、そこかしこから、笑いかける藁の兵隊、陽気に手をふっていた兵隊が突然、藁面蒼白となり藁藁と逃げ始めた。
 振り向くとアテネの聖火が藁に引火、あっという間に一面は火の海、藁夫ランドは阿鼻叫喚の燃える藁の地獄絵図となった。
 燃える藁の中に立ち尽くす女神は
「あしは土佐うまれやき」
 と叫ぶとねじり鉢巻きで地中海からカツオを一本釣り、藁の炎であぶると見事なタタキに仕上げた。
 fushianaさんはさっそく藁焼きタタキ専門店を開店。店名を「メゾン・ド・藁」と藁束の筆で墨痕鮮やかに大書した、そのしぶきが空中に四散し、無数のカラスアゲハとなって乱舞する。
 どんど焼きの灰神楽のように盛大に舞い上がる蝶の後について上昇気流をテクテクのぼっていくと、すてきな空中庭園に辿り着いた。
 藁葺き屋根の小じゃれたあずま屋で、fushianaさんが差し出したタタキを女神はあんぐりと頬張った。
 メリメリ。ぐむむむむ。
 女神は藁焼きタタキのパワーでみるみる巨大化し、あずま屋の藁囲いをはじきとばし、藁葺き屋根も藁屑となり果てた。
 足元の藁靴も耐えかねて藁草履と化し、衣服も藁半紙のように千切れ飛んだ。藁苞入りのタタキは藁鉄砲で撃ったかのごとく隣の藁塚に投げ出された。藁塚には飾り藁つきの藁座鳥居に藁縄が結ばれ、中心の藁蓋の上に藁細工。稲藁を担いだ藁人形、藁箒に跨った藁人形、藁筆を持った藁人形、藁布団に入った藁人形。
 藁寸莎をしばった藁紐の上に藁算の跡を見たfushianaさんがつぶやく。
asb3-4 「よーし。これでもう藁は充分に出た。観測史上最高の藁も、音楽史上最大の藁も出た。誰だか知らないけれど」
 fushianaさんは、ここで読者目線となり
「前の奴が意地になって藁づくしをしやがって、どう続ければいいの!?」
 そこに巨大な凹面鏡を持った女神アテネが現れた。
「こんなもん拾ったけどオレは藁より鳩を焼きたい。鳩たべたい。おーし、焼いちゃうぞ〜!ぽっぽっぽーは〜ァ、たのしいな〜」
 アテネはその場に正座し、あたりに散らばっている藁を掻き集め、小さな山をつくった。
「鳩さん、この上にどうぞ。」
「藁紙のお布団と藁沓がないなら、乗らねぇよ」
 と鳩がうそぶき鼻でわらった。
 藁で束ねてもアテネはアテネ。
 怒ったアテネは器用に藁を編み、藁ごもを作って藁納豆の如く鳩をくるみ、藁人形にして五寸釘で傍らの大木の燃えかすに打ち付けようとした。
 その時、たまたま藁の犬を連れて散歩していたアメリカ人の数学教師がこれを見咎めて立ち止まった。
「いま藁が鳩によってつかまれる心境ネ。動物愛護大事。アメリカ共和党この藁鳩事件許さない! 藁夫ランドに藁爆弾で報復攻撃するネ。この藁1本にe=mc^2のエネルギーがアルんだからネ」
 それを聞いたアテネは
「藁素坊みたいなヤンキーが生意気言って!」
 と言うが早いか、その藁しべを聖火にかざした。
 すると旅人がそれを藁蓑と換えて欲しいと言う。入手した藁蓑を(中略)藁葺きの屋敷を手に入れ、などあってアテネは長者となった。藁焼きタタキを食わせてやって以来子分になったfushianaさんは今や藁屋敷の執事だ。
 と悦に入っていると、聖火の火の不始末で藁夫ランドは再度炎上。炎から逃げ惑いながら見回すと、大地が歪みめくれ上がり、焼け焦げた地面には巨大な文字が浮かんでいる。
[…幻視紀…]
 ジリリ!
 蔓の枯れた藁電話が鳴った。
「あー今、じゃけん亭に到着したがや。録も一緒。録のぱぱに会うたよ」
 受話器の奥からワラオジの呑気な声が
「ワシの最新刊読んだか。藁夫ランド篇。藁夫ランドだけに中身も全部藁藁藁藁藁藁」
 藁電話の読み取りエラーらしい。
 受話器を置いた俺の足下で不意に大地がもう一枚めくれ巨大な「幻視紀行藁夫ランド篇」の1頁目が現れた。
 頁は藁だった。2頁目も藁。3頁目から最後の頁まで全部藁。
 そして全ての藁が燃えていた。
 熱いな。
 ところで誰か教えてくれ。俺は何故ここにいる?


 
☆第三章 第五節 「迷走航路PART2」

「何故そこにいるのか分からないのか?」
 藁電話はワラオジの顔に変形し、しゃべり始めた。
「そこがどこか分かっているのか」
 TMHC院長の顔になり、
「おまえ自身が何者か、本当に分かっているのか?」
 最後にあの男の顔となった。あの男の顔は俺の中の何かを覚醒した。
 三貿が響き、俺はタイタニック号デッキでのうたた寝から目を覚ました。隣ではシモーヌが舞踏会のワルツの練習に余念が無かった。
「あら起きたの?ちょっと相手してよ」
 くるくると踊り続けるシモーヌの声を聞き流し、食堂に向かった。頭の中がなんだか焦げ臭い感じで、妙にのどが渇くんだ。
「何を飲みまするるる?」
 怪しいハト顔のバーテンダー、そのくぐもる声がかすかに気にかかったが、まずは何か飲みたかった。
「とりあえず、水くれ」
 グラスにチロチロと涼しげに氷が踊る。あれ?水と頼んだ筈なのに、目の前にはなぜか真紅の液体を満々と湛えた鍋がある。ハト顔のバーテンダーが鍋を火にかけた。小声で何か呟いている。
「…もしかしてクルルカリ…」
 鍋の中の真紅の液体がかすかにざわめいた。
「え、何?」
「キロ…持ち味…」
「何て言ったんだよ?」
 真紅の水面が大きく波立ち、小さな人々が現れた。
 1、2、3…全部で7人。晴れやかな笑顔、片手を揃って斜め上に上げ、それから潜って足を出した。一糸乱れぬ水中ダンス。
 バーテンダーの呟きが聞こえる。
「…ピルルッ…」
asb3-5  とか言ってるようだ。
「何だあいつ、モモンガの妖精ちゃんでも携帯の待ち受けキャラに使ってんじゃないのか?ますます不気味な奴だな」
 俺がそう思ったとき、食堂の窓から上空をひばりの群れが一連になって飛んでいるのが見えた。
「なんだピルルッっていうのは、ひばりの鳴き声だったのか」
 ひばりたちはブルーインパルスのように空で乱舞を繰り広げていると思いきや、数珠つなぎになって空に
「あおば反対ひばりに戻せ」
 と見事に文字を描いて飛んだかと思うと、ブルーインパルスのように墜落した。
 何もそこまでまねしなくても、と思ったが、甲板に落ちたひばりたちを丁寧に拾った。そして、ローストチキンにするために火で炙った。おいしく焼けていくひばりたちに感謝を捧げながら、その火の周りで東京音頭を踊った。
 しばらくすると、ひばりたちは金色の翼をはばたかせ、また飛び立っていった。。そうひばりは不死鳥だ、ローストチキンが蘇って空へ飛んだ。東京音頭が大阪音頭になるくらいのびっくり。
 悔しがっている俺の足元に火がうつった。息に火がつきゃ役行者、尻に火がつきゃ屁の行者、爪に火がつきゃ時の長者、足に火がつきゃ猫じゃ猫じゃ。飛び跳ねて踊っている俺を見てひばりが笑う。
 ひばりの笑い声はいつしかシュプレヒコールに変わり
「金返せ 金返せ」
 の大合唱、しまいにゃお天道様に向かって踊り出す。
 俺はといえば、足下に燃え移った火がますます勢いを増してまいりましたサーァ熱い!…って中継してる場合かよ、バーの向こうにプールがあったのを咄嗟に思い出し、足をバタつかせながら飛び込む。
「ほほぉ、今の若者はなかなかのステップを踏んでましたな」
 カウンターの前で見ていた老人が、シューズのサイドでフラッシュを切りながら連れに語りかける。
「おや、蛭留君もまだまだ踏めるモノだね。それでこそ我ら旧制三中タップダンス部だ」
 と、こちらもバックフラップを音高く響かせながら笑顔でこたえる。
 俺は飛び込んだプールの底に整列している7人の小さな人々を見つけた。
 どうしてここにいるのだろうと考えていると、後ろから2番目の人がゆっくりと動き始めていることに気付いた。身体の右側に重心を移動させながら、右手が空をつかまえるようにすこしづつ伸びたかと思ったら、それはバスーンに変化した。その手前の3番目の小さな人(小3と略す)はカスタネットを鳴らしてフラメンコを踊り、小4は蛇笛を鳴らしてコブラに不思議なダンスを踊らせ、小5は下駄を鳴らしてやつがくる。小6は空手踊り、小7は留年して地団駄を踏んでいる。
 この行列の最後尾にいる小1は日系ブラジル人で名前は庄一だが、自分が率いる世界小餃子団が何ゆえタイタニック号のプールの底で興行しているかに立腹し、排水口の栓を抜く。
 排水口から漏れた水で、タイタニック号は自分自身のプールへと沈没していく。
 プールに沈む行く船を見つめ、自らの運命を受け入れた乗客は静かにワルツを踊り始めた。俺の横では、藁電話が変形したあの男、ディカプリ夫が
「ケケ、ジジイどものヌルい沈みじゃだめだ、俺が2億ドルの沈み芸を見せてやる」
 とプールに飛び込む。
 藁電話が絡まった俺は引きずられるようにプールの底へ沈み、仄暗い水底に河童の宇宙人を見た。


 
☆第三章 第六節 「夢の傍流」

「ねぇ、ケンジー。ケンジーったら、起きなさいよ。」
 シモーヌの甲高い声で俺は浅い眠りから目覚めた。が、意識はまだ半分夢のなかを泳いでいる。
「あれ、河童のう…、いや、なんでもない。それより、そのケンジーはやめてくれって前から言ってるじゃないか。」
「おなかがすいたのよ。おむすびたべたい。」
「あ〜、握り飯ね・・・」
 俺は夢の途中で、子どもの頃母さんが作ってくれた、まんまるい塩むすびを思い出していた。夢の中で俺はその塩むすびを食べそこなった。あれ以来塩むすびを見ると無闇に食べたくなる。
 シモーヌは
「握り飯じゃない、お・む・す・び」
 と低い声でささやく。
asb3-6  その夢見がちなハスキーボイスに俺は弱い。俺はとても眠い。
 蕩々と流れる夢の本流、その脇を歩く錚々たる武人たちは曹操の軍か。三国演技のテーマソングが俺を夢の傍流にさそう。
 中国のお百姓さんがでっかい塩むすびを持久力強化のため腰に7個ぶら下げて校庭を10周する横で、次の演技者が待ちくたびれて寝込んでいる。
 その夢の中では陳寿が羅貫中から演義を取り上げて世界小餃子団入りを強要する夢を抱いた話を枕に凡そ9億人のお百姓さんが9億のおむすびの夢を夜ひらかせた。
 すなわち百姓等は、皆揃っていわゆる偉大な同志が偉大な事業に賭けるひとつの夢を見たのである。同志はてきぱきと、直径15センチもある9億のおむすびを百姓から全て奪い取って数珠繋ぎに並べ
「お前ら軽過ぎ。俺の死後わずか10年で完璧に堕落しやがって。そもそも偉大なる中華文明発祥以来の悲願たる国家統一の偉業を達成したる御革命の精神…」
 云々かんぬんと、全長13万5千キロのむすび文字でクドクド愚痴を並べたてた。
 この万里の飯詔勅をスカイラブから読もうとしたデカプリ夫は、中国語が読めなかったので、なんのことだかわからず、9億のおむすびを見てただ満腹感に浸るだけだった。そのうち、満腹感でうつらうつらとし始めた。
 しばらくすると、夢の中で、9億の数珠繋ぎされたおむすび達がいっせいに、マツケンサンバを踊り始めた。9億のおむすび達はただひたすらに踊り狂い、歌い狂い、やがて9億一斉にトランス状態となり、恍惚朦朧の9億個の夢の中で9億人の暴れん坊将軍となって悪代官と回船問屋を懲らしめた。
 感謝してもしきれない老父と娘と娘婿(腕のいい飾り職人)。
「死んだおっかさんの分も幸せになるんだぞ。達者で暮らせ」
 と9億人の暴れん坊将軍はマツケンサンバを踊りながら去っていったところで目が覚めた。
 不思議なのは、夢みる前は9億のおむすびだったのに覚めてみると9億の蝶結びだった事だ。読者諸君、チミたちは9億の蝶結びを見たことがあるか? 私は見た。確かに見たのダ。その長さ4万Km。
 私はギネスブックに
「世界一の蝶結び」
 と電報した。うたた寝をして返事を待った。返事はなかった。
 寂しくなっちっちな俺っちは、センチメンタルなジャーニーに出発進行と蝶結びを引っ張ってみると、それは一本の藁しべとなった。
 その長さ8万Km、なんてこったベイベ。世界一の藁しべで俺っちは、世界一のわらしべ長者になり、世界一の蔵屋敷を建てた。チンケな村を睥睨する蔵屋敷の屋根はお日さまでぬくまってて、俺は三毛猫とひねもすまどろんダ。んだんだ。昼飯の後、唐突に暇乞いをする猫に俺はついつい猫の額ほどの地面をくれてやった。一獲千金を夢見た猫は、来る日も来る日も地べたを掘った。
 ブピャー!
 猛然と湧いて出たのは黒い石油かと思えばあにはからんや、どす黒い温泉ではないか。
「温泉は好きよ」
 とシモーヌがのこのこやってきた。
「三毛猫から温泉権を買い取って、ここで温泉旅館を始めましょうよ。この黒い湯はペコリーノ・ロマーノにとっても合いそうだわ」
「そう、空豆もこの黒い湯で茹でて温泉空豆。もちろん海豆も茹でなきゃだわ。温泉空豆と温泉海豆が名物の黒湯旅館。藁電話の水鏡にコマーシャル流すの。出演はもちろんディカプリ…。」
 シモーヌの夢は果てしなく膨らむ。
 俺はシモーヌの話に適当に相づちを打ちながら、蔵屋敷の屋根でまどろんだまま、藁夫と過した夢のような秋の日を回想していた。


 
☆第三章 第七節 「終わりの気配」

 藁夫と過ごしたのもこんな日だった。
 俺は書斎でごろ寝を決め込み、藁夫は縁側でこ難しそうな本を読んでいた。テレビではアナウンサーがニッポンを連呼し、外では蝉が最後の命を燃やして五月蝿く鳴いていた。オリンピックと共に夏が終り、秋がくるのだなあ。秋の静寂は早くきてほしいが、夏の喧騒がなくなると思うと少しさびしい。あのころの俺は藁夫がどこぞからくすねてきた氷菓子をぺろりと平らげては、いつまでも名残惜しく木の匙をしゃぶっていたものだ。
 よし、もひとつ食べよう。俺はすっくと立ち上がり、お勝手に行った。
 冷蔵庫の扉を開けると、そこには小さな雪ダルマが座っていた。
 雪ダルマの目は空豆、鼻はつまみ菜、口はナルトでできている。去年の大晦日にワラオジが作った「作品(ルビ:アート)」を、藁夫が大切に保管しているのである。しかし、春を過ぎ、夏を過ぎて秋になったいま、10ヶ月近くを冷凍庫のなかで過ごした「作品」は痩せ衰え、ナルトのぐるぐるがむしろ切なさを助長している。
「いろいろなことがあったような気がするが」
 誰にともなく俺はつぶやく。
「いろいろなことはほんとうにあったのか。実はいろいろなことなど何ひとつなくて、この雪ダルマの存在こそがすべてだったのではないか。目に空豆、鼻につまみ菜、クチナルト。この侘しい風景こそが俺の青春のすべてではなかったのか。そしてその青春も今ようやく終わろうとしている」
 その時ふいにナルトのぐるぐるが逆回転を始めた。つまみ菜は騒ぎ出し、空豆は今にも飛び跳ねそうにじじじっとうごいて、そのまま雪ダルマは仰向けになった。縁側に目をやると、読書を続ける藁夫の向こうに、台風の影響か雲がかっこいいスピードで飛んでいる。
 やっぱり何も変わっていない、俺は妙に静かな気持ちで開けた冷蔵庫の前に立ち、悲しい雪ダルマを見下ろした。冷蔵庫を開け、味噌カツと海老フリャーと煮込うどん、そしてデザートのういろうを取り出し、台所の卓に並べてしみじみとむさぼり食った。どれも昨晩の残り物だ。
「おいお前、意味が違ぇだろ」
asb3-7  雪ダルマが何やら叫んでいる。
「そのオワリちゃうわ…ってか俺が溶けるだろこのターケ。あのよ、ワラオジも広島の打ち上げから帰ってくるってじゃないか」
 そうだった。彼氏が戻ったらいよいよ俺たちは略夫捜索に出る。その為に借りた名古屋章の写真集「柔道一直線〜鶴田部長」探しに夢中になっていたら、雪ダルマが解けかかっていた。
 溶けたしずくが涙のように流れている。俺は雪ダルマを抱きしめた。雪ダルマともお別れだ。最後の一片が手の中で溶けてく。
 この物語も終わりの時が来た。テーマ曲は盛り上がり、観客は涙を押さえ、スクリーンには巨大な「完」の文字が浮かび上がった。
 と思ったら、それは完の体形をした完ちゃん、略夫の弟の完夫だった。完ちゃんは頭が小さく、常に欽ちゃん走りの格好だ。(読者諸君、完を拡大して見たまえ)
「やあどうも、元夫です」
 と、ウかんむりを脱いだ完夫が自己紹介した。
「びっくりしたでしょう。拡大して見たら完のウかんむりは帽子だったなんて、読者オカンムリですよねぇ、ははは。ま、そういうわけで完ちゃん、登場したと思ったら、3行も持たずに終わりました。なんと空しい生涯なのでしょう。しみじみ味わいましょうね。ところで」
 スクリーンから出てきた元夫は、雪ダルマが溶けた液体を、ウかんむりの中に集めて冷凍庫に入れながら言った。
「実は私もね、長くは生きられないんですよ。まあ、生まれながらの宿命というやつなんで…」
 語尾まで聞こえないうちに元夫の頭から「一」かんむりが落ちて彼の人生はあっけなく終わった。
「やあどうも、兀夫です」
 と言うが早いか、更に兀夫の頭がもげて儿夫になった。儿夫は二つ転がった「一」かんむりを拾い、凍りかけた雪ダルマシャーベットに線香のように刺そうとしたが足が滑ってしまい、「一」かんむりは地面に突き刺さった。
 雲の切れ間から陽が差してきた。すると、地面に刺さった二本の「1」から芽が出て、あっという間に蔓が天高く伸びていった。
 儿夫は、蔓をしっかりとつかんで登りはじめた。登りながら、今までの人生が脳裏に走馬燈のように浮かんで、最初の記憶は巨大な宀が空から降ってきて、と上を見あげるとその時より巨大な宀が全天を覆っていた。その巨大な宀がみるみる小さくなって儿夫に襲いかかり、儿夫は手に持った二本の蔓を頭上に差し上げて防ごうとした。だが蔓は一となり宀は二本の一を巻き込んで儿夫の頭にかぶさった。
 完夫の復活である。陽を背中に浴びた完夫の姿はまさしく時代の終焉を象徴するかのようであった。
 その姿を縁側から見ていた俺は、ああこれで本当に夏が終るのであるなあと嘆息した。


 
☆第三章 第八節 「其は彼の人か」

 空は成層圏まで抜けるように青い。はるか望見される湾には波光きらめき、御輿の歓声が遠く聞こえる。まごうかたなき秋の気配…。
 三度四度、かようなムードの演出を試みるも、藁夫との思い出に浸ろうとするたび、俺は其処彼処に魑魅魍魎の跋扈を許し、静かな記憶は掻き消されてしまう。
 俺には分かっている。
 こうなるのは俺と藁夫が共有する精………うあっ…、丸太につかまった俺は海水をしこたま飲んで思考が途切れた。失敬。えー、こうなるのは俺と藁夫が共有する精神の波動… うあっ…、俺はまた海水をしこたま飲んで思考が途切れた。失敬。えー、こうなるのは俺と藁夫が共有する精神の波動が何らかの原因によりズレ始め…うあっ…、俺はまた海水をしこたま飲んで腹がいっぱいになり考えるのを諦めた。丸太につかまったまま、泳ぐ気力もなく俺は漂っている。
「諦めてはいけない」…誰だ、今喋ったのは? 周りは見渡す限りの大海原、俺以外に人の姿はない。とうとう幻聴が聞こえてきたようだ。どうせ聞こえるならもっと色っぽい声がいいのに。
「諦めてはいけない」 同じ声が聞こえてきた。周りは見渡す限りの大海原、俺以外に人の姿はない。
「諦めてはいけない」、海中を見ると巨大な鮫が俺に迫ってくるるかりる? なんということだ、恐怖のあまり軽快な響きの耳鳴りが始まってくるるかりる? おーい、空ゆくカモメさんよ、俺を助けてくるるかりる? 
「やっと正しい用法にたどりついたな。お前、日本語ヘタすぎ」
 鮫のくせに、余計なお世話だ。むっとした拍子に我にかえって耳をすませば、かすかにつぶやくようなその音は、大海にぽつりと浮かぶ俺のしがみついた、その丸太のなかから響いてくるようではないか。それはえらく曇った声だ。
「早く起キロロ。もうおピルルだよ〜ん」
 く、くだらん。おい、もうちょっと内容のある波動を送ってよこしやがれ…、と言いかけて俺は気が付いた。そんなくだらん軽口を叩くのと言えば…、いつもなら「俺」じゃないか。
asb3-8 (ま、丸太の中に俺がいる?…)
 ギョッとして後ろにのけぞると
「起キロロ…」
 の声の音程が急に下がっていった。
 げ、すると丸太の中にいるのは俺のドップラーゲンガーなのか?、つまり、俺がのけぞるとと丸太の中のドップラーゲンガーとの距離が遠ざかるわけか。
 丸太につかまった俺は、助けを求めるために、ゆんゆんと電波を発した。そしてよんよんと電波を受け取った。強力な電波だが、それは丸太の中のドップラーゲンガーからの電波のようだ。その証拠に丸太に近づくと、周波数が高くなる。
 と、丸太が緊急避難な警告音を発した。後ろを見ると、鮫の群が猛スピードで追いかけてくる。俺は丸太を漕いだ。必死の逃走も虚しく、あっさりと追いつかれるとホウセッな香りが俺を取り囲んだ。
 鮫と思ったのは餃であった。俺が水上ワゴンから蝦餃の蒸篭を取り上げると、オバさんがハンコを押していく。水平線の彼方までワゴンの行列が続いている。いつのまにやら回りにはタイタニック号のみんなが集まり、打ち上げ宴会が水上で開催されようとしている。姿なき漂流楽団を指揮しているのは、いまはなき水上勉だろうか。彼も丸太に乗っている。おびただしい数の漂流者が、それぞれ丸太に乗りながら、無数の水上ワゴンから好みの点心を取りながら、水上の音楽を聴いている。
 これだけの量の丸太、いったいどこから来たのだろう、などと俺が怪しんでいると、背後から絹を裂くような女の悲鳴が聞こえた。
「ホウトン!ンホウラ、ガウメンアー」
 俺は振り返った。女の姿はない。水上では見えない漂流楽団と、丸太に乗った水上勉や点心、漂流者達の賑やかな風景が拡がっているだけだ。西からの風がオレンジいろの匂いをはこんでくると、女の呪文のようにも聞こえたさっきの明瞭な叫びが、直線で再び、俺の耳に立ち上がってきた。
「ホウトン!ンホウラ、ガ・・」
 するとぽとぽと、ぽとぽとあちこちで空からなにかが落ちてきている気配がして、その度に水面がそこらじゅうで凹み、ざわめき始めた。目を凝らして水面を見てみると、降ってきているのは小麦、大麦、燕麦、玉蜀黍、米、粟、稗などの穀物であった。(筆者注:私はのちにこれを「穀物の雨」と名付けた)
 女の呪文はなおも続く。
「チャーゴ・ンガゴグ・マンチャウ・ンガゴグ・ガガギギ・ンガゴグ・ググゲゴ・ンガゴグ…」
 ふん、耳障りな、最近は鼻濁音すらできない輩が増えてきたな、などと思っていると、いつの間にか女は海中に沈み、姿を消していた。穀物の雨足は激しさを増し、俺はただ驟雨の海原を漂流し続けていた。
 やがて周囲の海が穀物で埋まった。俺は穀物の孤島に独り立ちつくし
「食料は穀物だけか、蛋白質が足りないな」
 などと、どこか滑稽な行く末を案じて薄く笑った。


 
☆第三章 第九節 「深緑の視線」

 ポケットの中には方位磁石とくしゃくしゃのティッシュ。
 俺はひとり、穀物の島の北端にいる。
 西から吹いていたオレンジいろの風も、いまは東からのメタリックなビートに変わった。どうやら朝になったらしい。
 大量のシリアルに囲まれているというのに、ここにはどうも牛乳を売っていそうな店などありそうもないが、ひょっとして雌牛または牝山羊などいないだろうか。振り返れば、いつの間に繁茂したのか麦芽の森が広がっている。この森の果てまで行けば、ビール牛に会えるだろうか。ほのかな予感が俺のハートをあったかくする。かさこそ揺れるホップの花を摘みながら小道をスキップしていくと、突如として足元に出現した落とし穴にはまってしまった。
「…ケケッ」
 茂みの陰からあざ笑う声がする。
 俺を罠にハメたのは誰だ?
 伝説のシリアルキラーか?
 疑心暗鬼の俺には朝日に光る木の葉もナイフのひらめきに見える。
 なぜこの暗い穴でなぜ朝日が見えるのだ?
 自暴自棄の俺をあざ笑うように穴の中には発酵した麦芽の薫りが充満し、手にしたホップとえもいわれぬハーモニーを醸し出していた。このまま居残って飲んだくれるのもまたコケケッコー、だが俺を動かしたものは穴の外からくる突き刺すような視線だった。
 一体誰なんだ?
asb3-9  この奇妙な気配は何だ、何故俺を見る?
 俺は絡まりあう木の根っこに?まりながら、必死に落とし穴から出ようとした。しかし、進もうとする俺の行く手を何かがいちいち遮るのだ。謎の多い朝日を背に受けて、光って見えるそれはなかなか前へ進むことができず苛立つ俺に、冷たい視線を向けている。さっきから俺を見ていたのはこいつじゃない。直感したその時、上から
「おまいさん、おまいさん、危ないからそこを早くどきなはれ」
 とささやく声がする。
「誰だ!」
 思わず俺は叫んだ。
「うちは水晶米の米子どす」
 とキラキラ光る何かが答えた。
 何、水晶米?…と思う間もなく落とし穴の入り口から、夥しい量の米食い虫が塊となって降ってきて、俺は頭から目一杯虫まみれになった。すると落とし穴の壁が一斉に米語四文字言葉で口汚く喚き始めた。上からは
「やーい、やーい加州米」
 の声。
 何と俺は穀物島日米米戦争のまっただ中にやってきてしまったと思われ。俺は、とにかく頭にふりかかった米食い虫をなんとかしたかった。やっとの思いで、米食い虫を手で払いのけた。今度は、落とし穴から脱出しようと壁に手を掛けるが、なんせ米で出来ているので、すぐにパラパラと崩れてしまう。
 呆然と穴底から空を見上げると三日月がヘラヘラと揺れている。濁ったチョコレートのような腎臓色に染まった妙に邪悪な月だ。さてわ、加州ナッツの三日月か!
 逆上した俺はPoPoPoPoPoと大冒険をキメ、落とし穴の縁に手をかけた。いやナニ、右足の下で加州米が崩れる前に上げた左足の下で加州米が崩れる前に上げた右足の…、って術をやらかしただけだがネ。
 久しぶりの娑婆に挨拶しようと顔を出す俺の頬にヂヂィッと視線の矢がかすめる!
 次々と放たれる視線の矢を、俺はマトリックスのキアヌばりのマシンガンショット体勢でかわしたつもりが、矢は百発百中、俺の体に突き刺ささった。余りの痛さに耐えかねた俺は、ココは一つ眠って忘れちまおうと、羊の代わりにブスブスと突き刺さる矢を数えていった。ちょーど十万本となった所で視線の矢が止ると、森から踊り出た裸族が
「ウッホ、ウホウホ、ジュウマンボーン、ジュウマンボーン」
 と叫びながら、俺のまわりを踊り始めた。さて、軍師として最後の仕上げにかからねば。俺は裸族に声をかけた。
『諸君、森に向かって大きな声で叫ぼうではないか。丞相、矢をこんなにたくさん有難う!』
 自我なき裸族の面々はたちまち喜び、口々に叫び出した。
『丞相、矢をこんなにたくさん有難う!』
 憎々しげな視線の超特大の一本が森から飛んできて、船縁に突き刺さった。
『おっと、十万一本目を有難う。さあ帰ろう』
 俺の船は穀物の地面の上をずずず、ずずず、と無理矢理進み、丞相の潜む森を後にした。つもりだったのだが、どういうわけか景色は後ろに流れていく。船は確かに穀物の地面の上を前に進んでいるはずなのに、よく見たら、それ以上の早さで穀物の地面が森に向かって流れ始めているではないか。しかし、軍師という立場上、裸族の前で狼狽している姿をさらすわけにはいかぬ。俺は、船の上にすっくと立ち上がった。
 今までは穀物の森を正面に、舳先を背にして漕いでいたのだ。逆だ逆だ。これじゃ、まるで貸しボートだ。やや窮屈な姿勢になるが、こんどは舳先に向かって座り、知らん顔して堂々と漕ぎ始める。背後の森からの赤裸々な視線は、もう気にならない。景色も地面も、後ろに流れていく。
 さようなら、丞相。
 西からのオレンジいろの風を受けて、俺は次の戦場に向かう。


 
☆第三章 第十節 「再会の街」

 船着き場から上陸した港区は、まだかなり水浸しではあったが、復興の活気に満ちてざわめいていた。
「おーい、荷下ろしを頼む」
 と呼ばわると、赤銅色に日焼けした逞しい男たちがワラワラと寄ってきて加州米と水晶米の米俵をひょいひょいと両肩に担ぎあげ、こともなげに運んでいく。
 ヤミ市でぼろ儲けした俺は、腹が減ってきたので手近の屋台に腰を降ろしかけたが、食事をするのはやめにした。米食い虫トッピングの雑炊しかなかったからだ。俺の持ってきた米が悪かったのだろう。まあ飢えた被災者の皆さんは贅沢を言わず喰ってくれたまえとしか言えない。何しろ芝浦水処理センターの汚水が溢れ、今やこの辺りの衛生状態は最悪である。日本住血吸虫が異常増殖しているとか、金正男と見られる男が飲み水に毒を入れたとか、すでに流言が飛び交い始め蜚語の守が人の和を切り裂いている。
 俺は緩んだゲートルを巻き直そうと路傍に屈んだ。体勢を変えると腹巻の中でゴソリと身をくねらせる札束。
 ヘヘ、ヤミ米はいい思い付きだったな、と北叟笑んでいると、これも人波を逃れるように、湿ってドブ臭い電柱の陰に回り込んでくる男女がいる。俺には気付いていない。よく見ると金髪の女はショールで頭を覆い、男は泥の匂いのするモンティベレーを被る。
「情報攪乱は順調です。ロクとワラはとんでもない。ミロクとヤワラがやってくる、と市場で触れ回ってきました」、男が言う。
「よくやった。これで後は、ロクとワラが、この水害の跡にに甘い汁を吸いにやってくるのを待つだけどすえ」、と女が言う。
「そのときの二人の顔が楽しみだっちゃ」と男が言う。
 俺は、この女はえせ京都人、男はうる星やつらのマニアに違いない、と思った。彼の部屋には色あせてしまったラムちゃんのポスターが貼ってあって、しかも、軍事マニアで戦闘機のフィギュアがずらりと並んでいるんだ。間違いない。と長井秀和のような口調で俺は思わず呟いた。
 その時ふいにポスターの中のラムちゃんが口をきいた。
「そのとおり、この男はうる星やつらマニアで軍事マニアのどうしようもない奴だっぺ」
asb3-10  …だっぺ…?
 偽ラムはバレる前に壁ごと逃げ去った。そこには大穴が空き、文字通りの港となった港区港の全景が広がっていた。
 巨大客船が停泊している…タイタニックだ。
「ケッ、ここでもタイタニックかよ」。甲板の屋台では藁夫とシモーヌがうどん打ちの真っ最中だ。
「ケッ、またうどんかよ、お前らには飽き飽きだぜ」、俺は自慢のロケットランチャーM72A2を取り出すとブッ放した。
 なぜかHEAT弾は二羽の鳩となり、二重螺旋を描きながら藁夫たちへと向かって行った。鳩たちはシモーヌをひとまわりし、そこにあるうどんを掴むとまた二重螺旋を描きながら俺の元へと戻ってきた。
 俺と藁夫の間にはうどんの架け橋が完成した。すると何処から来たのか異常に興奮した裸族が、できたての架け橋めがけてすっ飛んで来た!
 だみ声のリーダーが大慌てで合図を送ると、二重螺旋の周りでいっせいに踊り始めた。嬉しそうに声を上げる彼等はそろって幸せそうだった。アルカイックスマイルが、揺れる揺れる・・みんな笑顔すぎて、目が線になってるよ。
 藁夫は口 をあけたまま眺めてるし・・そんな彼等を見ていた俺は修理屋へ行きたくなった。東京タワー跡の通称鉄くず横町に、そいつはバラックの店を出していて、なんでも修理してくれる。ありがたい親父だ。
「この蝙蝠傘も長靴も、あちこち破けちゃいるけど、まだ修理すれば使えると思うんだ」
 そう言うと、修理屋は目を細めて俺から品物を受け取り、ためつすがめつしてから
「傘10年ゴム長10年料金5百万円」
 と言う。
 その意味は20分で修理して五百円ということなんだが、知らない人は驚く。もうちょっと話していると、この親父が関西人ではないことがわかって、さらに驚くというわけだ。
 こいつの直した傘がすごい。どれくらいすごいかというと、くるくる回すだけで空にふわりと舞い上がれるのである。もちろんゴム長にも秘密があるのだが、その話はまた別の機会にとっておくとしよう。
 そんな訳で、俺はツギハギだらけの蝙蝠傘をクルリと回し、くるくるクルリンと回しに回して、空の高みから見下ろせば、ほら、もう港区も豆粒くらいになってしまった。




☆登場人物
俺:水浸し港区に上陸。ヤミ米で儲け。M72A2から鳩。直した傘で空へ。
俺の弾道:8番目の空豆が窓から脱走したので、その放物線に食らいついた。
汐留藁夫:港区港のタイタニックの甲板の屋台でうどん打ち
森山鳩実:東京都認定防災頭巾をかぶり、俺に大地震が来るのを警告。
森鳩:シモーヌ目から飛び光トカゲくわえ去る
山鳩:シモーヌ目から飛び闇トカゲくわえ去る
ハト顔のバーテンダー:くぐもった声がなんだか怪しい。「ピルルッ」とか呟く。
鳥の脚:森山鳩実の足。趣味は誤変換。鵯の足でも誤変換? 森鳩の脚でも誤変換。
シモーヌ:港区港のタイタニックの甲板の屋台でうどん打ち
炎のシモーヌ:シモーヌのたてがみの炎から形作られた。真っ赤。炎のカクテルグラスを
前埜略夫:論文に暗号(日の出桟橋の喫茶キリマンジャロ&タイタニック?)を残した
中ムラ略夫:通称チュウリャク。ごきげんなやつ。イタコの姪の隊子が下ろした霊。
興梠略夫:コウロギリャクオ。通称コウリャク。チュウリャクの弟
白衣覆面の小さい人:車の前に飛び出してきた。真っ赤な空を怖がる。
CMHC院長:シモーヌ9歳の時藪蛇ヶ原時計店を購入。
TMHC院長:内紛劇経て「藪蛇ヶ原時計店CMHCな支店」運営、シモーヌを診断し俺になる。
石像:苔むした石の像。夢の中(?)で俺を取り囲むが崩壊。夢でクリニック寺の禅僧。
胴体夫:山車行列では海豆の後方にいたが、力うどんのトッピングに。夢で禅僧?。
藁夫の叔父:実在しない
藁夫の叔父の弾道:森山鳩実の後ろの剛毛の生えた青臭い莢の影めがけて飛んで行方不明。
藁原叔父貴:「幻視紀行」シリーズの著者。通称ワラオジ。
ワラオジ:広島の打ち上げから帰ってくるらしい
夫軍団:「メンタル夫」「この夫」「(氷山)夫」「は夫」「(ポロロッカ)夫」 「の夫」「(かたまり)夫」「で夫」「す夫」、沈んでいく→海豆の中→神輿をかつぐ。夢禅僧?。
新・夫軍団 → すべて沈んだ、二番神輿をかつぐ。夢でクリニック寺の禅僧。
タイタニック号:三貿を鳴らす、プールの底へ沈没
ディカプリ夫:2億ドルの沈み芸を見せるために、プールへ飛び込む。スカイラブの中で夢を見る
ワリーヤ:「倒れたロスケノフを担架で運ぶ、帰って来てпирожокと叫ぶ
ヒョードリ:倒れたロスケノフを担架で運ぶ、帰って来てпирожокと叫ぶ
カムチャッカの海:環太平洋参謀総長。「カッポレ」のオープニングセレモニーに
バーテン:シモーヌにカミカゼ作る。愚痴られる。緑の塔に宙吊りに。
幌六力:ポロロッカのマスター(ほろろく りき)。俺が嫌っているおやじ。
ロスケノフ:カッポレの若い従業員。シモーヌに飲まされ担架で運ばれつつ、かっぽれ踊り
藪蛇ヶ原虻造:シモーヌの父(時計屋)。「ロシア大使館に雇われた」と言い残して失踪
アブゾー: 血だらけで登場、実は二重スパイ「麻の実じゃないんだ本当は」と言い残し死んだ
藪蛇ヶ原アユ:シモーヌの母。娘が九歳の時つまみ菜を喉に詰まらせ死亡。
森山鷹之進:九歳のシモーヌを養女とした叔父(割烹職人)。後につまみ菜料理ブームを
藪蛇ヶ原時計店:シモーヌの両親没後はCMHCの手に渡り、今はTMHC院長が運営。
ポロロッカ:伝通院近くシモーヌ行きつけの店→ダーツバー→つまみ菜で吹き飛ぶ
7人のインド人:オバQ鳥抱えミニクーパーに乗車しリアウィンドウに圧縮タタミイワシ化
7人の小さな人々:火にかけた鍋の中で水中ダンスを踊る世界水餃子団。プール底に整列。
小1:リーダーの日系ブラジル人で名前は庄一。プールの栓を抜いてタイタニック沈没。
小2:右手が空をつかまえるように延びてバスーン化。
小3:カスタネットを鳴らしてフラメンコを踊る。
小4:蛇笛を鳴らしてコブラに不思議なダンスを踊らせる。
小5:下駄を鳴らしてやつがくる。
小6:空手踊り。
小7:留年して地団駄を踏んでいる。
河童の宇宙人:七輪であぶられ、おつまみに食べられた
ご隠居:マスターの親戚。居心地が悪い。ウィルキンソンジンジャーエールで俺と乾杯
デオキシリボ角さん:ご隠居のお供。マンドコラの入ったイン・ロウを突きだす。夢禅僧?。
蔓水緑:つるみずみどり、広島海豆洋食屋台「じゃけん亭」主人、蔓水録のぱぱ。
蔓水録 : ワラオジとじゃけん亭に到着。
蔓電話:ワラオジの顔、
藁電話:蔓が枯れた蔓電話。ワラオジ→TMHC院長→あの男の顔に変形
巨人:雲の上で食事の支度をしてたら惹句が登ってきた。誘ったが逃げられる
巨大な聖火ランナー:アテネの地平線から昇る。一粒300メートルの男。
女神アテネ:聖火で藁夫ランドを火の海。地中海産藁焼きタタキ食し巨大化あずま屋を藁屑に。藁草履履き藁鳩事件で得た藁しべで長者。
雪ダルマ:昨年末ワラオジ作。目は空豆鼻はつまみ菜口はナルト。ワラオジ帰ると言う。溶けた。
完ちゃん: 略夫の弟の完夫。体形が「完」頭が小さく、欽ちゃん走りの格好。最後に元の姿に戻る。
元夫:ウかんむりを脱いだ完夫。スクリーンから出、雪ダルマ溶液をウかんむりに集め冷凍庫に入れようとして更にかんむりがもげた
兀夫:かんむりが二つもげた完ちゃんの哀れな姿
儿夫:かんむりが三つもげた完ちゃんのなれの果て。もう脱げない。蔓を登りはじめる。
水上ワゴンのオバさん:ハンコを押していく
水上勉:漂流楽団を指揮している?
女:呪文を叫ぶと穀物の雨が降る
漂流楽団:恐竜楽団になる
裸族:自我がない。異常に興奮して架け橋めがけ到来、二重螺旋の周りで踊る。
だみ声:裸族のリーダー。大慌てで踊りの合図を送った。
丞相:森に潜み、俺に十万一本の視線の矢を浴びせ、感謝される
ラムちゃん:男の部屋のポスターの中にいる。偽ラムで逃げた。
修理屋の親父:タワー跡に店。言うこと大げさだが非関西人。俺の傘と長靴を修理。
伝説のシリアルキラー:茂みの陰で俺をあざ笑っているかもしれない。
チータ:チーズから誤変換(?)、餅をつく。夢禅僧?。
鮫:俺に向かってきている。俺に諦めるなと諭すが、鮫ではなく丸太からの声かも。
ビール牛:麦芽の森の果てにいるかもしれない。
藁の兵隊:陽気に手をふっていたがアテネの聖火で燃えた
アメリカ人数学教師:藁の犬を連れて散歩中、藁鳩事件を目撃、咎めるがアテネに藁しべ奪われる
空豆:追われているから匿ってくれと乗車、七輪であぶられ、おつまみに食べられた
8番目の空豆:飛び上がった情景を、俺が回想
海豆:俺の塒の塩水で満ちたガラス球から発芽開始、巨大化し雲の上まで届く。
オオオニバス:鳩南蛮力うどんセット(カッパ巻付き)・うどん職人一行を丸呑み
マドレーヌ:紅茶の大海に溺れている。ボルシチの鍋の中で俺と再会。
大根おろし:天つゆの淵に沈んでいる。ボルシチの鍋の中で俺と再会。
タタキ:藁人形の上に落下。
藁苞入りのタタキ:藁鉄砲で撃ったかのごとく隣の藁塚に投げ出された。
失われた時:マドレーヌと大根おろしと手に手を取って逃避行。
麻の実:生物兵器?すごい種?つまみ菜発芽、人々搦めて千重螺旋の塔に宙吊りに。
アサノミ:ワラオジが名付けた俺の海豆の愛称
麻の実の母:京都弁、俺とカムチャッカの海に、麻の実のボルシチ茶漬けをご馳走
大麻麻美:37歳おおあさあさみ。頭部だけ。ボルシチ茶漬けのダシになった。
水晶米の米子:加州米と仲が悪い。米食い虫攻撃と得意とする
加州米:落とし穴付近の地層を形成する。米子の米食い虫攻撃を受け下品に喚く
加州ナッツの三日月:濁ったチョコレートのような腎臓色に染まる。
fushianaさん:藁焼きタタキ専門店を開店。藁塚の前、藁紐の上に藁算の跡を見、今はアテネの執事
fushiさん:futusiruhanaさんが蔓を剥ぎ取りfusihanaさんになりかけた半分、また復活
hanaさん:futusiruhanaさんが蔓を剥ぎ取りfusihanaさんになりかけた半分、復活
中国のお百姓さん:巨大塩むすびを腰にぶら下げて持久力強化に励むが、寝込んだ隙に夢の中で偉大な同志に全員おむすびを奪われる。
錚々たる武人たち:蕩々と流れる夢の本流、その脇を歩く。曹操の軍か。
9億のおむすび:マツケンサンバを踊り夢の中で9億人の暴れん坊将軍に、目覚めて
9億人の暴れん坊将軍:悪代官と回船問屋を懲らしめる。
老父と娘と娘婿(腕のいい飾り職人):9億人の暴れん坊将軍に助けられる。
三毛猫:世界一の蔵屋敷の屋根でうとうと。もらった土地で温泉ほりあてる。
オバQ鳥:7人のインド人に抱えられていた
力うどん:ボルシチの鍋の中で俺と再会。
うどんの架け橋:二重螺旋で俺と藁夫の間に架かる。M72A2から出た鳩が作った。
藁人形:KGBの番人、笑笑長者になったかも、でも松明となって燃えた
わりゃ人形:バラバラを歌う
港区:東京タワーがない。
鳩と鵯:港区方面に飛び去った。
ひばりの群れ:鉄ヲタらしい。俺が猫じゃ猫じゃを踊るのを見て笑う。「金返せ」とシュプレヒコール
青春の光トカゲ:二本のらせん階段でシモーヌ話し片方はアフリカへと言う。抱えられて降りたが森鳩にくわえられ
闇トカゲ:新たに二本わかれらせん階段シモーヌに話しかけ山鳩にくわえられ
蛭留教授:バーカウンターの前で連れとステップを踏む。旧制三中タップダンス部だった。
イタコの鯛子:恐山から卒業旅行中、略夫の口寄せを頼まれるが失敗し隊子を召喚
隊子:鯛子の姪でカルヴィーノ『霊長類』の登場人物。ブリキ頭を叩き中ムラ略夫の霊を下ろす
ブラッドピジョン : 「カッポレ」に大量の麻の実降らし乾杯、と思われたが、俺の夢か?
喫茶キリマンジャロ:日の出桟橋にあると前埜略夫が論文に暗号で残した場所
ダーツバーBaby Blue:引き裂かれた看板は、俺の塒に使われている
アテネ・オリンピック・スタジアム:総立ちバラバラでパラパラ、全員がfushiana さんの顔になる
藁夫ランド: アテネの聖火が藁に引火し一面火の海、阿鼻叫喚の地獄絵図に、さらに再度出火、地面は巨大な幻視紀行で中身は全部藁
藁塚:あずま屋の隣にある。中心の藁蓋上に藁細工、藁人形、手前に藁寸莎が
あずま屋の藁囲い:はじきとばされた
藁葺き屋根:藁屑となり果てた。
藁塚の飾り藁つきの藁座鳥居:藁縄が結ばれた
足元の藁靴:耐えかねて藁草履と化した
衣服:藁半紙のように千切れ飛んだ。
ヲタモエ:蔓梯子を作るのに適した頑丈な蔓を張る植物
丸太:大海原を俺がつかまり漂う。中からの声は俺のドップラーゲンガー?


★みんなの自己紹介 (名前をクリックすると各人のホームページに行けます)
浩某 谷山浩子です。泳げません。自転車に乗れません。ボウリングのタマが持てません。
kneo 吉川邦夫、別名「ふねを」。本業はリレー小説家、いやさ翻訳家です。
AQ  石井AQです。2004私的感銘リスト:「屏風」「煙か土か食い物」「馮」「フリッツ」「Ohara's」「J.Truchot」、
へべ  石井へべです。ガーデニングの野望を抱いて4年目にしてまだ雑草むしってますが、何か?
Zom  観てね(^^) 東京国際映画祭で観た「ビヨンド・サイレンス」最高に面白かった。グランプリが取れて嬉しい(^^)。今年のベストワンかも。
koda こだです。ぴよと名付けたと暮らしています。「コンピュータの名著・古典100冊」で1冊分の書評を書きました。良い本です。みなさん読みましょう。ヽ(^o^)ノ。「蘇るPC-9801伝説」にも少し関わりました。
kuro  謹厳実直なサラリーマンのくろせです。ミュージカルと介護で人生手一杯です。マイブームはボール投げ、人生はまだ投げてないようです。
おさる「k.ishi」のペンネームで作ったMacLHAこと「ぞうさん」はいまだに多くのMacユーザーに愛されている。
リカお芝居が大好きです。映画なら、パラジャーノフとタルコフスキーが好きです。


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